週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

お気に入りのバーの話

大学出て少しした頃か。
酒を覚えた。
大学時代も飲むには飲んでいたのだが、わざわざ1人で飲むほどではなく、仲間とワイワイやるための飲み物。
そんなところがあった。

大学を卒業して、単身北海道に渡り、いろいろあって半年後には単身埼玉へ。
その後も基本的に単身で地方各地を渡り歩く生活を繰り返す。
そんな中で、さまざまな楽しいことを開発していくのだが、そのうちの一つが酒。
愛知にいる頃に覚えたのが日本酒で、これは今に続く楽しみなのだが、今回はこの話ではない。

埼玉時代だから、あれは24、5の頃か。
少し背伸びしたいお年頃。
おしゃれなバーというものに行ってみたくなった。
音楽好きとしては音楽×バーみたいなところがよかった。
当時東京にいた友人に相談してみると、ちょうど行ってみたいお店があるという。

そのバーは新宿にあった。
歌舞伎町に入る前の大通りに面した雑居ビル。
4階だったか5階だったか。
エレベータを降りると暗くてテーブルにキャンドルの灯った、別世界が待っていた。
窓際に大きなグランドピアノがデーンと構えていた。
このブランドピアノがバー用に作られていて、ピアノの周りをカウンタのようになっていた。
一目でこのお店が気に入ってしまった。

決まった時間になると、ピアノの演奏が始まる。
しっとりした空間に合わせて、あくまでバックミュージック的な演奏。
弾き手・歌い手は毎日違い、ピアノだけで聴かせる時もあれば歌をつけてくれることもあった。
ピアノ周りのカウンタでちょっと度数の高いお酒を舐めながら、
いい感じで酔った頭でスタンダードなナンバーを楽しむ。
至福。

慣れてくるとリクエストなんて技もできるようになる。
大好きなMy favorite thingsは何度も演奏してもらった。
アレンジが弾き手によって全く違うので、これがたまらない。
何回も行っていると、弾き手とも顔馴染みになってくる。
演奏の合間の休憩時間に話しかけられてお酒を飲んだりすることもしばしば。
これがまた楽しい。
話が盛り上がると、次の演奏では話したようなことを盛り込んでくれる。
こうなるともうたまらない。

そんなお気に入りバーも気づいたら閉店になり。
ピッタリくるお店というのは思いのほか見つけるのが難しく、代わりを見つけることなく今に至っている。
とある小説を読みながら、そんなことを思い出した。
しばらくぶりにこの系統の店を新規開拓しようかな。

ではまた。




f:id:htyanaka:20220117210225j:plain 高松港か。

-----
2022/01/10 15:17
休暇中。
鳥駅スタバにて。


雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2022/01/10
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2022 All Rights Reserved.

エビデンスと確からしさ

前回の続編。
前回は科学的なエビデンスについてと、経験知だって役に立つ、ということを書いた。
今回は、エビデンスについてもう少し。

ある事実について、研究論文によるエビデンスがあるとする。
この事実は正しい、と信じてよいのだろうか。

正解は、ダメ。
なぜか。
まず、研究論文自体に問題があり、事実が正しくない場合がある。
例えば、方法論に問題があり、結論が間違っている場合。
統計手法の誤用、データの集め方がおかしい、実験・調査に構造的な欠陥があるなどなど。
論理展開に問題があり、結果と結論が結びついていない場合なんかもある。
そもそも、嘘で塗り固められた研究成果、ということだってないわけではない。
まあこの辺りは、以下の記事あたりを読んでいただいて。
論文は正しいとは限らない
論文に嘘を書いたりしないの?(研究こぼれ話 No.1)

その研究論文自体に問題がなくても正しくない場合もある。
例えば、たまたまその結果が出てきた場合。
あらゆる現象は確率的に生じるため、これはありうる。
前提としていた知識があとから間違っているとわかって、全部ひっくり返ることだってある。

このように、エデンンスは絶対的ではない。
ただ、絶対的ではないものの、エビデンス自体の「確からしさ」というものは存在する。
これは、一つの研究に限った話だけではなく、複数の研究成果を併せた知についても考える必要がある。
これを意識してエビデンスと付き合うと、正しくない情報に振り回されづらくなると思っている。
以下、「確からしさ」のレベルを解説していく。

レベル1:まだしっかりとしたエビデンスがない段階

研究論文は出版されているものの、問題点があるなどして実証されていない段階。
ひょっとすると将来実証されるかもしれないが、真実と信じると間違う可能性が高い。
特定の研究者やグループのみが主張している状況で、エビデンスというよりはまだ仮説と認識した方がいい。
簡単な問題点であれば、大学・大学院でしっかり研究リテラシーを身につけておくことで、見つけることができる。
わからなければ、他の研究者がどう言っているのかを聞くのがよいか。
エビデンスと誤解されることで悪影響のありそうな研究についてはいろいろな研究者の批判がある。

レベル2:1つもしくは少数のエビデンスがある段階

研究論文としては問題点のない論文が少しだけある段階。
特に出たての最新の研究成果などがこれに当たる。
マニアックで後に続く研究がないため、という場合もあるか。

この場合、その研究自体は正しいが、将来の研究において再現されない可能性、覆される可能性がある。
偶然その研究結果が出てきたけど、実は確率的なもの、という可能性があるのがこの段階。

速報的なエビデンスは大抵この段階であるため、無条件に信じるとえらい目に会うということを覚えておきたい。

レベル3:複数の研究で再現されているが、批判的な知見もある段階

レベル2のエビデンスも時間が経つと、研究を真似して確認(再現性を検証)する人が出てくる。
丸々真似をしなくても、その研究をベースに少し先に進む、ということはされる。
こういった、他のさまざまな研究が行われた上で、何度も結果が支持されている段階がここ。

研究成果が確率的に偶然出てきた可能性はかなり減り、ある手続きであれば何度でも再現可能。
こうなると、エビデンスは結構カタイということになる。
この段階であれば、ある程度信じても痛い目にあうことは少ない。

ただ、批判的な知見、否定的な研究結果はつきもの。
この場合、批判側のエビデンスがレベル1、2以下の段階にあって間違いであることもあるが、ある条件で普遍的に生じるある真実が隠されていることもある。
後者の場合は、将来的に否定的な部分も包含した新しい考え方が提案される可能性がある。

レベル4:ほぼ批判がない段階

多くの研究で再現されており、ほとんどの研究者が支持している段階。
もちろんレベル2以下の批判的エビデンスはあるかもしれないが、その数は極端に少ない。
さまざまな角度・条件での豊富な研究の蓄積があり、エビデンスとしての確からしさが高い。
理論的にも普遍性が高く、論理も一貫している。
こうなると、エビデンスとしてはかなりカタイ。

ごく稀に、斬新な視点やモデルなどによって、根本から覆されることもないではないが、そういうのはもう事故みたいなものと思っていいレベル。
例えば、コペルニクスによって天動説が地動説にくつがえされた話なんかがそう。



と、まあこんな感じか。
「科学的に証明された」「エビデンスがある」は悪用されうる。
例えば、これらの言葉を権威づけに使って、事実でないものを事実と信じさせようとだましにくるような場合もある。
科学やエビデンスという言葉の意味をよく知っておくと、そういうことはなくなるので、しっかりとおさえておきたい。

ではまた。




f:id:htyanaka:20220110163456j:plain 備後落合という風光明媚な辺境の駅。
よき。

-----
2022/01/10 16:31
休暇中。
鳥駅スタバにて。


雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2022/01/10
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2022 All Rights Reserved.

研究ノートを書こう(研究をしよう28)

まだまだ続くこのシリーズ。
卒論生・修士の院生だとこれをおろそかにしている人、いるんじゃないだろうか。
今回は、この、研究ノートについて。
実験ノートやフィールドノートは、研究ノートの一形態だと思っていただければ。

まず。
研究ノートを用意していない人に向けて。
研究ノートは大学ノートのような普通のノートで構わない。
ルーズリーフやメモ帳のように、切り離したり入れ替えたりできるものはダメ。
電子的にPCやタブレットなどでデジタル的にノートを取る人もいるがこれもダメ。
「実験ノート」などのように、研究に特化した製品も売られてはいるが、初めての人はオーソドックスな大学ノートでいいと思う。
まずは1冊用意したい。

研究ノート、特に実験ノートやフィールドノートには重要な役割がある。
それは、研究不正を疑われたときのアリバイとしての役割。
世の中悪い人はいるもので、やってもいない研究を論文としてまとめて発表してしまうことがある。
これは、未熟な大学生・院生だけにとどまらない。
新進気鋭の若手研究者から学会の重鎮まで、幅広くいらっしゃる。
人間というのは、ずる賢い生き物なのか弱い生き物なのか、どっちかわからないが、時々こういうのが出てくる。
業界ではこういう行為を捏造、と言い、研究不正として厳しく処されることになる。
これは当たり前のことなのだが、こういう輩のせいで、本当に研究をやっているまじめな人が疑われてしまうことも間間ある。
この時に、調査チームにちゃんとした研究ノートをそのまま提出すると疑いが晴れる。
不正が疑われたときに、真っ先に提出を求められるのが記録としての研究ノートになる。
切り離したり入れ替えたりできるルーズリーフやメモ帳のようなものがダメなのはこのせい。
電子的な記録の場合、アリバイとしての役割を果たせないためNGとなる。

もう一つは、純粋に記録として。
実験や調査中であれば、今目の前で起きている現象を自分の目を通して漏れることなく書き留める。
こういうことをしている最中は、普段とは違って色々な考えが浮かんでくるので、それらについても余すことなく捕まえておく。
それこそ本当に、何でもかんでもメモを取る。
これらは、あとから研究を進めるときの糧になる。
机上で一生懸命考えても全然出ないアイディアが、ポンと出てくることがある。
体裁とかはどうでもいいので、将来の自分への情報を渡す、ということを主眼に書きまくる。
実験や調査中はもちろんなのだが、論文を読んでいる最中や分析している最中、教員と議論している最中などなど。
あらゆる時に研究ノートに記録をしたい。

それでは。
具体的にどんな具合に書けばいいのか。
まず一番大事なのが、日付。
これがないと、不正が疑われたときのアリバイにならない。
実験をやるのであれば、実験を行ったときの日付、実験に関する基本情報。
開始時間や実験条件、個人情報以外の実験を特定できる情報などがそれ。
電子的なデータが残る作業であれば、後からそれらと照合できるような情報もあるといい。

実験や調査が始まったら、その時に気づいたこと、様子などを書き込む。
電子的に残るものであっても、手書きで書き込んでおくといい。
こいつらは、電子データと付き合わせた時に、思わぬエラーに気づいたりするきっかけになることもある。
よくあるのが、キレイにまとめたいからと、あとでまとめて書こうと先延ばしすること。
これは絶対避けること。
結構な頻度で忘れる。
実施時の記録的な意味合いが大きいことを強く意識しておきたい。
研究不正のアリバイでなくとも、その時思いついた考えはすぐにこぼれ落ちて忘れていく。
それらをしっかりと記録することはとても大事。

実験・調査以外についても、日付とともに書き留めておく。
論文を読んだ、文献検索をした、こんな分析をした、分析の具体的な手順などなど、やったこと思いついたことは何でも記録しておく癖をつけておこう。
後からノートを見返すと、自分の研究でやった行動歴と思考に関する記録が出来上がる。
読んだ論文については、いつの研究ノートにメモがあるよ、と論文の余白やデータベースに書き込んでおくと、後から見つけることができて役に立つ。

こうやって作ったノートは財産になる。
後から見返すと、忘れていた作業や考察のヒントなんかが得られる。
院生以上だと、次の研究のアイディアの元になったりもするか。

最後に。
僕の研究ノート運用術。
ノートは持ち運びやすいようにA5ノートを使用。
研究プロジェクトごとにわけていない、いつも持ち歩くノートがあり、それに何でも書き込む。
研究以外に授業についてのメモも書くため、A5ノート3−40枚1冊が1−2ヶ月でいっぱいになる。
日付+大見出し+小見出しを冒頭に書き込み(例:12/20 抑制発達プロジェクト;調査メモ)、その後に続けて記録やメモを。
日付+大見出し+小見出しについてはノートの最終ページに並べて書き込み索引にしておく。
これは便利で、おぼろげに日付の記憶があると情報にアクセスできる。
日常の作業ではノートへのリンクを意識して、「ノートX月XX日にメモあり」のようなものを残しておく。
これも必要な時にノートの情報にアクセスできて役に立っている。
あとは使い終わったノートは電子化して常にiPadに入れて持ち歩く。
と、まあこんな感じ。
この辺りの運用術は、研究に限らず様々なお仕事で役に立つかも。
あ、仕事以外でも。

ではでは。
また。




f:id:htyanaka:20211220172757j:plain 東京駅にて。

-----
2021/12/20 17:26
休暇中。
鳥駅スタバにて。


雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2021/12/20
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2021 All Rights Reserved.

いつも〆切に追われている話(大学教員・研究者という生き物9)

大変久しぶりなこのシリーズ。
我々、わりと〆切仕事を抱えている。
しかも複数。
我々が忙しそうにしている理由の一つがこれ。

まず、大学は学校であるため、それに付随した〆切がある。
例えば、授業準備。
毎週毎週、〆切仕事をしているようなもの。
1年を通じて時期時期に定められた仕事もある。
学生募集のパンフレット、カリキュラムの改訂などなど。
細々したのは結構多い。
まあでも、これはどんな仕事にもある程度ある類のもの。

役職・担当特有のものもある。
大変なのは入試問題系。
チェックや印刷も含めると結構〆切がタイトになる。
ミスはできないので、おかしなところが見つかり次第、さらにタイトな〆切で対応を迫られる。
こういう系統の〆切仕事はわりとある。

研究系だと、公募研究費の申請なんかがそう。
〆切はあらかじめわかっているはずなのだが、なぜか追い詰められる。
投稿論文の〆切もあるか。
これはある程度自分のタイミングでできるのだが、投稿論文の修正だと〆切までに修正しないと載せてもらえない。
他には、研究費の報告書、学会発表申し込みまでに研究結果をまとめる、学会や研究会の発表などなど。
学外の仕事だと、依頼原稿や本の〆切、講演会や非常勤授業の〆切。
まあ、わりと〆切が多い。

急な〆切は突然に的なシリーズもある。
例えば、共同研究者が論文を投稿するのでコメントをくれと言ってくる場合。
論文の査読(詳しくはこちらを読んでいただいて)の依頼なんかもあるか。
同僚や共同研究者が忘れてたり〆切に追われてたりで、ものすごくタイトな〆切で依頼をしてくることもある。
これらはそれぞれがやりがちなためお互い様。
言われた通り対応することが多い。
学生さん絡みでこれがやってくることもある。
だいたい切羽詰まっている人からの依頼の〆切はタイト。
でも状況がわかっているだけに受け入れがち。
そして、そういう人が結構多い。
もちろん僕は急先鋒。

問題は、これらがいくつも重なること。
日常業務の〆切をこなしつつ、前からわかっていた重い仕事の〆切を見据えつつ、査読依頼を1つ引き受けたところに、どこからか至急の〆切仕事が。
かくして目の前の〆切を片付けることにいっぱいいっぱいになり、これが終わったら次、みたいな自転車操業状態に。
〆切前売れっ子作家ごっこが仕上がる。

まあしかし。
よく考えたら計画的に難なくこなす優秀な方もいらっしゃる。
ここまで書いて気づいたことには、これ、僕の特性によるのじゃ。
いやいや、まさかまさか、はははー。

ではまた。




f:id:htyanaka:20211212213126j:plain 木次線のどこかの駅にて。

-----
2021/12/12 21:27
休日出勤後。
鳥駅スタバにて。


雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2021/12/12
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2021 All Rights Reserved.

ココロ・エネルギー

「旅に出ます。探さないでください。」
そう実験室に置き手紙をして、僕は旅に出た。
全てのしがらみから逃れての、あてのない旅である。
お金はいくらかある。
時間はありあまるほどある。
僕の手には、果てしない自由が握られている。
もうノルマも締切も関係ない。
ただ、気分の赴くままに、行きたいところに行けるんだ。

、、、なーんてことは、全くなく、単にリフレッシュのために休暇で遠出。
横浜に参りました。
横浜は僕が生まれてから10年くらい暮らした土地で、今も時々訪れる場所。
鳥取も大好きなのだが、やはり故郷は特別で、時々帰りたくなる。
コロナでなかなか帰れていなかったので、ちょっと収まっている今がチャンスだとやってきたわけです。
最近ちょい疲れ気味で、頭の働きも鈍っていたので、ちょっとしたメンテも兼ねて。

金曜日に移動して、初日は福井時代の先輩と会食。
この先輩とは年1、2回くらい会って話す間柄なのだが、コロナのせいで実に2年ぶりの再会。
3時間程度、ひたすらゲラゲラ笑いつつ上機嫌な時間を過ごした。
ココロ・エネルギー回復1。

次の日はお気に入りのご飯処からのカフェ巡り。
本ざんまい、コーヒーざんまい、時々うまい飯。
夜はヤクルト戦で大いに盛り上がり。
ココロ・エネルギー回復2。

で、本日は大学時代の友人と会い、横浜散策。
この友人とも数ヶ月に一回会っていたのだけど、コロナのせいで2年ぶり。
うまいラーメンを食し、ブラブラ横浜を散策し、動くガンダムを見るなどし。
ココロ・エネルギー回復3。

そんなわけで、リフレッシュな休暇を送るなどしたよ、という日記的なお話。
なお、僕のココロ・エネルギー容量は極めて大きいので、あと97くらいは回復が可能。
実は明日もお休みなので、丸善に本を買いあさりに行く予定。

まあ、自分のメンテも仕事のうち、ですよ。




f:id:htyanaka:20211129115350j:plain 今旅の一杯。
お気に入り吉村家の1杯。

-----
2021/11/28 21:17
休暇中。
タマプラ・スタバにて。


雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2021/11/28
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2021 All Rights Reserved.

やってみたい成績評価法

僕の授業、学生さんの達成度については基本的に試験で測る。
理由は単純で、授業の目標達成度を測るものとして、これが一番客観的で優れていると考えるから。
これは、 なぜ、テストをするのか に書いた通り。
学生さんもまあだいたいはわかっていて、ちゃんと勉強してくれる。

さて。
そんな僕ではあるが、試してみたい成績評価法がある。
本気のレポート評価。
文字通り、レポートを本気で評価するというもの。
もちろんできなければ落とす。

どういうものか。
まず、レポート・卒論を書くにあたって必須になるテキストライティングの本を3冊程度指定して必ず読んでもらう。
その上で、お題を与えて、小論文を作成する、というもの。
評価の観点は、当該授業に関する知識に加えて、お題に対する解答がしっかりしているか、論理構造は正しいか、テキストライティングはしっかりしているか、等を見る。
レポート評価後は一人一人返却し、レポート評価のポイントと問題点を解説する。
レポートを課す授業は多いが、個別に解説までする授業はほとんどないのではないか。

意図は単純で、授業の知識的な到達目標に照らした評価に加えて、レポート作成を通じたテキストライティングの技術を教育する。
本来はゼミや演習を通じて行うものなのだが、授業のレポートを通じてそういうことをやってもいいなぁ、と思った次第。
ターゲットの科目は、2年生くらいの専門科目で、人数があまり多くないやつ。
その他のレポートを書くにも、卒論を書くにも、社会に出てから仕事上の書き物をするときにも、きっと役に立つ。
この辺りは、 書く力(なぜ学ぶのか、何を学ぶのか 8 ) にも書いた。

そんなことを考えて、遊びに来た学生諸君にこの評価法をやってみたい旨を伝えたところ、反応がかんばしくない。
試験に代えてレポート評価、と言うと表情は明るくなるのだが、本気のレポートという用語が出てきたあたりから表情が曇り。
本気のレポートの内実を知るにつけ、頼むから試験で評価してくれ、と懇願される始末。
1人や2人ではない。
まあ、そんなわけで、本気のレポート評価、お蔵入りになったわけでございます。
いやぁ、いつかやりたいなぁ。

以上、教育のあれこれ話。
今回はこの辺で。




f:id:htyanaka:20211108182727j:plain 秋、ですなぁ。


-----
2021/11/08 18:24
休暇中。
鳥駅スタバにて。


雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2021/11/08
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2021 All Rights Reserved.

小手先でない試験のテクニック(大学生のための学び方入門14)

大学生になっても、社会人になっても、避けて通れないのが試験。
単位認定試験、資格試験、就職試験、昇進試験。
これまでもこれからもさまざまな試験がある。
僕は立場上、試験を実施したり解答を見たりする機会がいくらかある。
解答を見ると、ああ、これはもったいない、もっと得点が取れるだろうに、という解答ともちょくちょく出会う。
実力が試験に反映しきれない人、というのがいるなぁ、思うことがある。
今回は、そんな人にこそ読んでほしい、試験についての話。

なお、僕は試験テクで実力以上の数字を出す必要はないし、試験で高得点を取ることに最適化した勉強はすべきではないと思っている。
ここでは、そういった小手先試験テクではなく、実力を出し切る試験テク、というのを書いてみようと思う。
なお、試験関係については今までにいくつか記事を書いているので、それらも参考にしていただけたら幸い。
試験のための勉強をしない(大学生のための学び方入門3)
僕の授業のテスト対策
なぜ、テストをするのか
ちゃんと勉強したけど点数が取れなかった人へ

聞かれたことに忠実に答えよ

これは試験の基本中の基本。
答案を見ていると、これができていない人は結構いる。
「〇〇とは何か」と聞かれていれば、これに〇〇が何かを中心に解答を作成する。
しかし、〇〇とは何かに答えずに点数を下げる答案はわりと多い。

単純な問いであればできる人も、問いが複雑になるとできなくなることがある。
例えば。
「〇〇及び××について、両者の違いに注目しながら説明せよ。」
こういう問いについて、〇〇と××についてここに説明しておしまい、という答案を作成する人は多い。
しかし、この場合、両者の違いが述べられていないと減点になる。
問題作成者はわざわざ「違いに注目」しろと意図を明示している訳なので、「違い」への言及が採点基準に盛り込まれていると考えるのが妥当。

問題が複雑になればなるほど、解答に盛り込むべきポイントは増える。
問題文を読んで、明示的に問われているポイントに印をつけ、それを必ず解答に盛り込むようにしよう。
これだけで点数はグッと上がる。

なお、これは大学入試や就職試験の小論文や大学のレポートなども同様。
〇×との関連を考慮して、とか、本文の記述を踏まえて、とか、問題文の中で条件が付されている場合は、答案に必ずそれを盛り込むようにしたい。


暗に問われていることを押さえる

試験には問題文で明示されているもの以外に、暗に問われていることがある。
試験範囲(科目や内容)の文脈というか、そういうもの。
例えば、「糖尿病について説明せよ」という問題があったとする。
これが、医学部医学科の専門科目であれば、病気の概要に加えて予後や治療法まで詳しく答えなければならない。
遺伝生物学の授業であれば、病気の概要に加えて遺伝的な説明が必要。
障害児教育学でであれば、教育と絡めて説明する必要がある。
このように、同じ文言の設問であっても期待される解答は変わりうる。

では、この暗に問われているものをどうやって把握するか。
これは授業をよく聞く、教科書を読む、等で行う。
授業で扱われている、ということは、それが文脈であり、扱われた内容のうち重要なものは答案に盛り込みたい。
授業を聞いていなかった、ということであれば、指定されている教科書や参考書籍、配布資料等で文脈を把握しておく必要がある。

これは入試や就職試験、昇進試験等あらゆる試験についても同様のことが言える。
当該試験で試験実施者が問いたいことは何か。
実施者が測りたい知識能力等は何なのか。
これを意識して答案が作れるようになると、点数はグッと上がる。


多面的に解答する

わりと見られるのがシンプルすぎる答案。
確かに正解なのだが、それだけじゃない、足りないよ、と言うもの。
これは、暗に問われていることを押さえる、とも関連する。

例えば、僕の授業の例。
「〇〇という心臓病とは何か、書け」という問題があったとする。
この場合、採点基準としては、(1)病気のメカニズム、(2)病気の症状、の2点を必須とする場合が多い。
よくできている答案だと、これらに加えて、治療法や教育上の留意点などが書かれていて、ほほう、よくわかってるなぁ、となる。
しかし、片方しか言及しない不完全な答案は多い。
だらだら長い解答が書かれているが、よく読むと一つの視点からしか書かれていない、ということもしばしば。
答案返却の際、当該学生に聞いて見ると理解していることもあるので、これは完全に試験テクの問題での失点ということ。
もったいない。

暗に問われていることがわかっている場合は、それらの視点は余すことなく答案に盛り込む。
それらがわからない場合も、最低2つの視点から答案を作成するようにすると、点数は上がる。


わかりやすい答案

ここまでのポイントを押さえているのに、点数を落とすことがある。
せっかく答案を作成するのに、とてもわかりにくいものを作成している場合。
よく読むと、全てのポイントが答案に散りばめられてはいるのだけど、注意しないと見逃してしまう。
試験実施者なんだからそれくらいちゃんと採点しろよ、というご意見はごもっともではある。
ただね、試験実施者も人。
間違いはある。
答案返却等で間違いを指摘できればいいが、それができないものはある。
入試や就職試験等、試験によっては答案返却がないものも多い。
わかりやすい答案作成を日頃から心がけておく、というのは大事。

では、どういう風にわかりやすくするか。
一番は、書きたいポイントを項目として明示してしまうというもの。
再び以下の例題にご登場いただく。
「〇〇及び××について、両者の違いに注目しながら説明せよ。」
これであれば、

〇〇:

〇〇の説明を書く。

××:

××の説明を書く。

違い:

両者の違いを書く

といった感じ。
見出しと改行を使いながら見やすくまとめる。
このように書くと、うまく伝わらず点数が下がることはだいぶ減る。
また、試験を受ける側としても問題で問われていることをうっかりもらすことが減る。
見やすい答案は、他人だけではなく自分にとっても役に立つ。


バツをつけられない答案

ここまでのテクを駆使すれば、実力はほぼ出し切ることができると思う。
最後は心構え、に近いかもしれない。
今まで解説したポイントを踏まえ、バツをつけられない答案の作成を心がける。
もし点数を減らされたとき、「聞かれたことはちゃんと答えているでしょ」「授業で扱ったポイントは網羅しているでしょ」と試験実施者に反論できるような解答を作成する。
これができるようになれば、もう試験テクという意味で実力以下の点数になることはないと思う。

なお、少数だがこれらがしっかり押さえられた答案に出会うことがある。
シンプルなのに減点のポイントが見つからず、満点を取っていく。
出会うと、この学生はかしこいなぁ、と、とても感心すると同時に、ちょっとうれしくなる。
それが入学後に成長したものだと、うれしさはひとしお。



以上、小手先ではない試験テクのお話でした。
こういうのを学ぶのも、大学が最後だと思う。
返却してもらえる答案はぜひ返却してもらって、この辺りのテクを磨いておこう。
結構汎用性の高い能力だと思う。




f:id:htyanaka:20211101214610j:plain 都内かなぁ。


-----
2021/11/01 19:17
仕事帰りに。
鳥駅スタバにて。


雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2021/11/01
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2021 All Rights Reserved.