雑記帳(ブログ)

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論文に嘘を書いたりしないの?(研究こぼれ話 No.1)

数年前のゼミでの話。
確か、統計を使った数字バリバリの研究論文だったと思う。
その論文を読んでいる最中に、学生さんが素朴な疑問を持った。
「論文に嘘を書いたりしないのか?数字が嘘ってことはないのか?」
実に、いい質問。
今日はこのネタについて。

論文に嘘を書く。
嘘の数字を書いてしまう。
結論から言うと、可能である。
ただ、真っ当なほとんどの研究者は絶対にやらない。
なぜか。

技術的には嘘を書くだけなので、簡単にできてしまう。
そして研究論文はそういうことをしないこと前提として性善説で書かれているため、巧妙な場合、論文そのものを読んで嘘を見破ることは難しい。
ただ。
嘘の研究論文が1本あるということは、先行研究の蓄積した知の中に間違いが混ざるということになる。
これはものすごい損失となる。
なぜならば、新しい研究を考える際、先行研究の知を前提として目的や仮説を考えなければならないため、間違った知識にひっぱられることになるから。
間違った知識が混ざっているということは、次の世代の研究の多大な労力が無駄になるかもしれないということを意味する。
それが真面目にやって間違ったとかではなくて、意図的な嘘だとすればこれはちょっとたまらない。
だからこそ、この行為、研究業界では蛇蝎のごとく嫌われる。

では、その嘘はバレないのか、といえば、バレる。
バレ方はいろいろある。
まずは、嘘の数字を書いた場合、いろいろと不自然になる。
統計の各種数値が合わなくなったり、不自然な数字になったりする。
ここで、バレる、というのはよく聞く話。
よほど統計や分析のことを熟知していないとなかなか嘘をつきとおせない。

もし、完璧な嘘をつけたとしたら。
この場合は、すぐにはバレないがのちのちおかしなことになる。
なんせ、事実が嘘なので、他の研究者が同じ手順で研究を進めたときに追試できない。
もちろん、嘘ではなくたまたま間違っていて追試できないこともあるが、嘘をつく研究者は他の研究でも嘘をつくことが多いので、その人のあらゆる研究で追試ができない、ということになる。
業界で、オカシイ、とニラまれ、どこかのタイミングで尻尾を出してバレるということになる。
ちなみに、嘘をついたことがバレた場合、もう2度と研究業界で仕事をできないと思った方がいい。
性善説で動いている業界なので、こういう不正についてはかなり厳しい。

このように、論文に嘘は書かれにくいし、書かれてもいずれバレるようになっている。
では、もし自分が不正を疑われたらどうするか。
こうなった場合、分析に使ったデータを出したり、分析のプログラムや手順を公にして不正はなかったことを証明しなくてはならない。
実験ノートもそのためにあり、細かく実験の記録や分析の手順等を書き込むことにより、疑義が生じた際、これらを公にすることで、ちゃんとデータが存在したことや分析したことの証明に使う。
教員が口を酸っぱくして実験ノートや研究ノートをつけろ、というのは、こういう意味合いもあったりする。

だいぶ前にSTAP細胞で揺れたことがあったが、この記事を読み返していただければ、あれがどういう事件だったのかおわかりいただけることと思う。


ではでは。
また。




f:id:htyanaka:20210425233832j:plain たぶん鳥取
城跡。

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2021/04/25 23:29
ひきこもり。
自宅にて。


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Update 2021/04/25
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