週刊雑記帳(ブログ)

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試験のための勉強をしない(大学生のための学び方入門3)

大学で教えていると時々出会うのが、試験のために勉強をしている学生さん。
よい成績がとりたくて試験対策をきっちりやる。
大学の単位もそうだけど、TOEICなんかの資格試験もそう。
試験なんてのはテクニックも大事なので、対策をしないと実力が点数に現れないことがある。
それどころか、試験対策で実力以上のスコアを叩き出すこともできる。
そのせいなのか、時々試験対策を過剰にがんばる学生さんに出くわすことがある。
受験勉強エリートの真面目な人に多い印象。
ただ、これ、なるべく早いうちにやめたい。
なぜか。

このタイプの学生さん、伸び悩むことが多い。
試験は実力以上の得点を得ることが可能。
これ、裏を返せば、実力を磨かずに試験テクを磨くことで得点をとってるということになる。
つまり、試験対策が過ぎると、それは試験テクをせっせと磨いてるということに他ならない。
自分の中のコンテンツ(実力)は増えずに、見せかけのテクニックだけがすごくなっていくわけ。
つまり、本来勉強で身につけるべき知識であったり各種の能力であったりが身についていない、ということになりかねない。

そもそも試験はなんのためにあるのか。
それは、試験得点をものさしとして、知識・能力を評価するため。
あくまで知識・能力が先にあって、それを測るというのが本来の姿。
一方で、過剰な試験対策は、試験得点に知識・能力を上回らせるための行為、ということになる。
単位を取る、試験をパスする、手っ取り早くスコアを上げる、というのには有効に作用するかもしれないが、それによって知識・能力が上がっているわけではないことに注意が必要。
試験対策に使った時間は、知識・能力を磨くことにはあまり有効に働かない。

いやまて。
試験対策も立派な勉強だ。
知識・能力もちゃんと身につく、と考える人もいるかもしれない。
まあたしかに、全く無効、とはならないだろう。
ただね、試験対策で身につく知識・能力は薄っぺらい。
深い理解をしていなくても、暗記でかわせてしまう。
知識間の関係などわからなくても得点を取ることができる。
点数を取る、ということに特化した勉強をすると、点数を取るための表層的な応用の効かない知識が手に入ることになる。
これはつまらない。

百歩譲って、試験対策でいくらかの知識がついたとしよう。
それでも、試験対策で得る知識には問題がある。
試験を含めた評価全般に言えることなのだが、評価をよくすることだけ考えると、身につくのは評価に特化したものになってしまう。
評価される、問題の出やすい分野に知識が偏ってしまう。
大事な事柄が必ずしも評価されるとは限らない。
大事な事柄であっても評価が難しい場合はあり得る。
手間がかかるために評価を避ける場合もある。
評価をよくすることのみに特化すると、そういう大事なものがこぼれ落ちてしまう。
知識・能力に偏りが生じるわけだ。
これは評価というものが持つ、負の側面。

まあ、そんなわけだから、試験のための勉強はほどほどに、勉強に取り組まれてはいかがだろうか。
全くするな、とは言わない。
ただ、自分が大事だと思うことを徹底的に調べてみたりや本を読みまくって広く分野のことを勉強してみたり、というのを大事にしてほしい。
点数はすぐには上がらないけど、長い目で見ると力がつく。
そういう経験は、裏切らない。

ではまた。




羽田空港にて。


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2019/08/31 20:38
仕事帰り。
鳥駅ドトールにて。


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Update 2019/08/31
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