週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

研究ノートを書こう(研究をしよう28)

まだまだ続くこのシリーズ。
卒論生・修士の院生だとこれをおろそかにしている人、いるんじゃないだろうか。
今回は、この、研究ノートについて。
実験ノートやフィールドノートは、研究ノートの一形態だと思っていただければ。

まず。
研究ノートを用意していない人に向けて。
研究ノートは大学ノートのような普通のノートで構わない。
ルーズリーフやメモ帳のように、切り離したり入れ替えたりできるものはダメ。
電子的にPCやタブレットなどでデジタル的にノートを取る人もいるがこれもダメ。
「実験ノート」などのように、研究に特化した製品も売られてはいるが、初めての人はオーソドックスな大学ノートでいいと思う。
まずは1冊用意したい。

研究ノート、特に実験ノートやフィールドノートには重要な役割がある。
それは、研究不正を疑われたときのアリバイとしての役割。
世の中悪い人はいるもので、やってもいない研究を論文としてまとめて発表してしまうことがある。
これは、未熟な大学生・院生だけにとどまらない。
新進気鋭の若手研究者から学会の重鎮まで、幅広くいらっしゃる。
人間というのは、ずる賢い生き物なのか弱い生き物なのか、どっちかわからないが、時々こういうのが出てくる。
業界ではこういう行為を捏造、と言い、研究不正として厳しく処されることになる。
これは当たり前のことなのだが、こういう輩のせいで、本当に研究をやっているまじめな人が疑われてしまうことも間間ある。
この時に、調査チームにちゃんとした研究ノートをそのまま提出すると疑いが晴れる。
不正が疑われたときに、真っ先に提出を求められるのが記録としての研究ノートになる。
切り離したり入れ替えたりできるルーズリーフやメモ帳のようなものがダメなのはこのせい。
電子的な記録の場合、アリバイとしての役割を果たせないためNGとなる。

もう一つは、純粋に記録として。
実験や調査中であれば、今目の前で起きている現象を自分の目を通して漏れることなく書き留める。
こういうことをしている最中は、普段とは違って色々な考えが浮かんでくるので、それらについても余すことなく捕まえておく。
それこそ本当に、何でもかんでもメモを取る。
これらは、あとから研究を進めるときの糧になる。
机上で一生懸命考えても全然出ないアイディアが、ポンと出てくることがある。
体裁とかはどうでもいいので、将来の自分への情報を渡す、ということを主眼に書きまくる。
実験や調査中はもちろんなのだが、論文を読んでいる最中や分析している最中、教員と議論している最中などなど。
あらゆる時に研究ノートに記録をしたい。

それでは。
具体的にどんな具合に書けばいいのか。
まず一番大事なのが、日付。
これがないと、不正が疑われたときのアリバイにならない。
実験をやるのであれば、実験を行ったときの日付、実験に関する基本情報。
開始時間や実験条件、個人情報以外の実験を特定できる情報などがそれ。
電子的なデータが残る作業であれば、後からそれらと照合できるような情報もあるといい。

実験や調査が始まったら、その時に気づいたこと、様子などを書き込む。
電子的に残るものであっても、手書きで書き込んでおくといい。
こいつらは、電子データと付き合わせた時に、思わぬエラーに気づいたりするきっかけになることもある。
よくあるのが、キレイにまとめたいからと、あとでまとめて書こうと先延ばしすること。
これは絶対避けること。
結構な頻度で忘れる。
実施時の記録的な意味合いが大きいことを強く意識しておきたい。
研究不正のアリバイでなくとも、その時思いついた考えはすぐにこぼれ落ちて忘れていく。
それらをしっかりと記録することはとても大事。

実験・調査以外についても、日付とともに書き留めておく。
論文を読んだ、文献検索をした、こんな分析をした、分析の具体的な手順などなど、やったこと思いついたことは何でも記録しておく癖をつけておこう。
後からノートを見返すと、自分の研究でやった行動歴と思考に関する記録が出来上がる。
読んだ論文については、いつの研究ノートにメモがあるよ、と論文の余白やデータベースに書き込んでおくと、後から見つけることができて役に立つ。

こうやって作ったノートは財産になる。
後から見返すと、忘れていた作業や考察のヒントなんかが得られる。
院生以上だと、次の研究のアイディアの元になったりもするか。

最後に。
僕の研究ノート運用術。
ノートは持ち運びやすいようにA5ノートを使用。
研究プロジェクトごとにわけていない、いつも持ち歩くノートがあり、それに何でも書き込む。
研究以外に授業についてのメモも書くため、A5ノート3−40枚1冊が1−2ヶ月でいっぱいになる。
日付+大見出し+小見出しを冒頭に書き込み(例:12/20 抑制発達プロジェクト;調査メモ)、その後に続けて記録やメモを。
日付+大見出し+小見出しについてはノートの最終ページに並べて書き込み索引にしておく。
これは便利で、おぼろげに日付の記憶があると情報にアクセスできる。
日常の作業ではノートへのリンクを意識して、「ノートX月XX日にメモあり」のようなものを残しておく。
これも必要な時にノートの情報にアクセスできて役に立っている。
あとは使い終わったノートは電子化して常にiPadに入れて持ち歩く。
と、まあこんな感じ。
この辺りの運用術は、研究に限らず様々なお仕事で役に立つかも。
あ、仕事以外でも。

ではでは。
また。




f:id:htyanaka:20211220172757j:plain 東京駅にて。

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2021/12/20 17:26
休暇中。
鳥駅スタバにて。


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Update 2021/12/20
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