週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

小手先でない試験のテクニック(大学生のための学び方入門14)

大学生になっても、社会人になっても、避けて通れないのが試験。
単位認定試験、資格試験、就職試験、昇進試験。
これまでもこれからもさまざまな試験がある。
僕は立場上、試験を実施したり解答を見たりする機会がいくらかある。
解答を見ると、ああ、これはもったいない、もっと得点が取れるだろうに、という解答ともちょくちょく出会う。
実力が試験に反映しきれない人、というのがいるなぁ、思うことがある。
今回は、そんな人にこそ読んでほしい、試験についての話。

なお、僕は試験テクで実力以上の数字を出す必要はないし、試験で高得点を取ることに最適化した勉強はすべきではないと思っている。
ここでは、そういった小手先試験テクではなく、実力を出し切る試験テク、というのを書いてみようと思う。
なお、試験関係については今までにいくつか記事を書いているので、それらも参考にしていただけたら幸い。
試験のための勉強をしない(大学生のための学び方入門3)
僕の授業のテスト対策
なぜ、テストをするのか
ちゃんと勉強したけど点数が取れなかった人へ

聞かれたことに忠実に答えよ

これは試験の基本中の基本。
答案を見ていると、これができていない人は結構いる。
「〇〇とは何か」と聞かれていれば、これに〇〇が何かを中心に解答を作成する。
しかし、〇〇とは何かに答えずに点数を下げる答案はわりと多い。

単純な問いであればできる人も、問いが複雑になるとできなくなることがある。
例えば。
「〇〇及び××について、両者の違いに注目しながら説明せよ。」
こういう問いについて、〇〇と××についてここに説明しておしまい、という答案を作成する人は多い。
しかし、この場合、両者の違いが述べられていないと減点になる。
問題作成者はわざわざ「違いに注目」しろと意図を明示している訳なので、「違い」への言及が採点基準に盛り込まれていると考えるのが妥当。

問題が複雑になればなるほど、解答に盛り込むべきポイントは増える。
問題文を読んで、明示的に問われているポイントに印をつけ、それを必ず解答に盛り込むようにしよう。
これだけで点数はグッと上がる。

なお、これは大学入試や就職試験の小論文や大学のレポートなども同様。
〇×との関連を考慮して、とか、本文の記述を踏まえて、とか、問題文の中で条件が付されている場合は、答案に必ずそれを盛り込むようにしたい。


暗に問われていることを押さえる

試験には問題文で明示されているもの以外に、暗に問われていることがある。
試験範囲(科目や内容)の文脈というか、そういうもの。
例えば、「糖尿病について説明せよ」という問題があったとする。
これが、医学部医学科の専門科目であれば、病気の概要に加えて予後や治療法まで詳しく答えなければならない。
遺伝生物学の授業であれば、病気の概要に加えて遺伝的な説明が必要。
障害児教育学でであれば、教育と絡めて説明する必要がある。
このように、同じ文言の設問であっても期待される解答は変わりうる。

では、この暗に問われているものをどうやって把握するか。
これは授業をよく聞く、教科書を読む、等で行う。
授業で扱われている、ということは、それが文脈であり、扱われた内容のうち重要なものは答案に盛り込みたい。
授業を聞いていなかった、ということであれば、指定されている教科書や参考書籍、配布資料等で文脈を把握しておく必要がある。

これは入試や就職試験、昇進試験等あらゆる試験についても同様のことが言える。
当該試験で試験実施者が問いたいことは何か。
実施者が測りたい知識能力等は何なのか。
これを意識して答案が作れるようになると、点数はグッと上がる。


多面的に解答する

わりと見られるのがシンプルすぎる答案。
確かに正解なのだが、それだけじゃない、足りないよ、と言うもの。
これは、暗に問われていることを押さえる、とも関連する。

例えば、僕の授業の例。
「〇〇という心臓病とは何か、書け」という問題があったとする。
この場合、採点基準としては、(1)病気のメカニズム、(2)病気の症状、の2点を必須とする場合が多い。
よくできている答案だと、これらに加えて、治療法や教育上の留意点などが書かれていて、ほほう、よくわかってるなぁ、となる。
しかし、片方しか言及しない不完全な答案は多い。
だらだら長い解答が書かれているが、よく読むと一つの視点からしか書かれていない、ということもしばしば。
答案返却の際、当該学生に聞いて見ると理解していることもあるので、これは完全に試験テクの問題での失点ということ。
もったいない。

暗に問われていることがわかっている場合は、それらの視点は余すことなく答案に盛り込む。
それらがわからない場合も、最低2つの視点から答案を作成するようにすると、点数は上がる。


わかりやすい答案

ここまでのポイントを押さえているのに、点数を落とすことがある。
せっかく答案を作成するのに、とてもわかりにくいものを作成している場合。
よく読むと、全てのポイントが答案に散りばめられてはいるのだけど、注意しないと見逃してしまう。
試験実施者なんだからそれくらいちゃんと採点しろよ、というご意見はごもっともではある。
ただね、試験実施者も人。
間違いはある。
答案返却等で間違いを指摘できればいいが、それができないものはある。
入試や就職試験等、試験によっては答案返却がないものも多い。
わかりやすい答案作成を日頃から心がけておく、というのは大事。

では、どういう風にわかりやすくするか。
一番は、書きたいポイントを項目として明示してしまうというもの。
再び以下の例題にご登場いただく。
「〇〇及び××について、両者の違いに注目しながら説明せよ。」
これであれば、

〇〇:

〇〇の説明を書く。

××:

××の説明を書く。

違い:

両者の違いを書く

といった感じ。
見出しと改行を使いながら見やすくまとめる。
このように書くと、うまく伝わらず点数が下がることはだいぶ減る。
また、試験を受ける側としても問題で問われていることをうっかりもらすことが減る。
見やすい答案は、他人だけではなく自分にとっても役に立つ。


バツをつけられない答案

ここまでのテクを駆使すれば、実力はほぼ出し切ることができると思う。
最後は心構え、に近いかもしれない。
今まで解説したポイントを踏まえ、バツをつけられない答案の作成を心がける。
もし点数を減らされたとき、「聞かれたことはちゃんと答えているでしょ」「授業で扱ったポイントは網羅しているでしょ」と試験実施者に反論できるような解答を作成する。
これができるようになれば、もう試験テクという意味で実力以下の点数になることはないと思う。

なお、少数だがこれらがしっかり押さえられた答案に出会うことがある。
シンプルなのに減点のポイントが見つからず、満点を取っていく。
出会うと、この学生はかしこいなぁ、と、とても感心すると同時に、ちょっとうれしくなる。
それが入学後に成長したものだと、うれしさはひとしお。



以上、小手先ではない試験テクのお話でした。
こういうのを学ぶのも、大学が最後だと思う。
返却してもらえる答案はぜひ返却してもらって、この辺りのテクを磨いておこう。
結構汎用性の高い能力だと思う。




f:id:htyanaka:20211101214610j:plain 都内かなぁ。


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2021/11/01 19:17
仕事帰りに。
鳥駅スタバにて。


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Update 2021/11/01
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