週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

多様な学生を教育すること(教育奮闘記 8)

教育って難しい。
本当に難しい。
僕が特に難しいと感じているのは、学生が多様である部分。
今回はここに焦点を絞って書いてみる。

当然だが、大学生は実に多様である。
能力が多様なだけではない。
授業や研究に対するモチベーションが大きく異なる。
言い換えれば、大学や大学教育に求めていることが人によってずいぶん違う。
しかし、授業は全員に対して1回。
この中で、「みんな」にとって教育を行うことを考える。
これが大変難しい。

まず僕の教育のスタンス。
当該授業の知識技能を身につけてもらう、というのが最低ライン。
その上で、その内容におもしろさを感じてもらえたらよし。
知的好奇心を刺激して、自分でさらに学んでくれるようになったらなおよし。
これは研究も同じ。
多様な学生の一部の層に働きかけるのではなく、できればどのタイプにもそれぞれにあった教育的働きかけをしたい。
そんな感じでやっている。

その上で、学生のタイプ別に。
まず。
能力も高く、モチベーションも高いタイプ。
この層は平均的な層に向けた授業に対しては退屈してしまう。
さりとて、この層に合わせて授業を組むと、他の学生がついてこれない。
よって、基本的な解説の後にこの層向けの内容を入れたり、質問コーナなどで対応する。
難しめな参考図書を紹介したり、少し発展的な小話を入れたりするのもこのタイプ向け。
自力も含め知識技能をさらに深めてもらうのが目標になる。

次は、試験対策バッチリ優等生タイプ。
これはひとつ前のと似ているがちょっと違う。
試験の点数は高いのだが、効率よくこなしすぎるため深い学びまで至らない。
この層には、問いかけや暗記では解けない課題等を課して知識技能の深めてもらうのがねらいの一つに。
知的好奇心を刺激したり、おもしろさを感じてもらったりして、授業を離れても学びたくなるように持っていく、というのが2つ目の目標。
結構難しいが、たまにそうなることがあって、これはうれしい。

続いて、平均的な層。
この層を想定受講生として授業を作り上げる。
資料や言葉の選定は、この層の知識レベルに合わせる。
モチベーションの高低や、知識に重きを置くのか試験の点数に重きを置くのかは多様なので、その部分については別の段落に譲る。
この層は、授業によって知識・能力が上げることを主眼に、理解度を確かめながら進める。
授業外の勉強時間が増えるように、おもしろさと試験対策の両面から働きかける。

できない層にはいくつかパタンある。
1つはモチベーションもそこそこあり、ちゃんと授業外の勉強時間をとっているはずなのに成績が振るわないというタイプ。
この層の学生さんは勉強の過程か、試験テクかのどちらかに問題があることが多い。
1対1だと解決することが多いので、授業中にそういう働きかけをしたり、質問に来るように促したり、とちょっと気をつける。
このタイプはコツを掴むと大きく伸びることがある。
試験で単位を落とさないように、気づく範囲でフォローするのもこの層。
思い当たる人は ちゃんと勉強したけど点数が取れなかった人へ あたりも読んでいただいて。

授業はしっかり聞いているけど、授業外の勉強時間をほとんど取らない層。
もはや授業もほとんど聞いていない層。
この2つの層については、単位が出ないような試験を作る。
大学の授業は、授業聞くだけで勉強が完結するようにはできていない。
前者はモチベーションはあるので、授業外勉強の大切さを授業中に時々強調する。
後者は内容の大切さやおもしろさを訴えることで、まずはモチベーションを上げるように働きかける。
単位が簡単に取れない、というのも教育的な取り組みの一つ。
この層の学生さん、一度単位を落とすと、次回はかなりがんばって高得点で単位を取っていく場合がある。
学年が上がって知識や経験が増えたり、将来を見据えてモチベーションが上がることもある。
なお、単位を落とす、というのは教員側にも手間がかかるので、やらない方が楽ではある。
じゃあなんでそんなことをやるのかといえば、意地悪ではなくて、しっかり教育したいから。


と、まあ、大雑把にわけるとこんな感じにわかれる。
もちろん、完全にグループにわかれているわけではなく、連続的に中間型だったり2つ以上のグループにまたがっていたり、実に多様。
あるタイプに時間をかけすぎると、別のタイプに時間が使えず、みたいなことが起こるため、結構大変。
教育って難しいなー、と思うわけです。
どっかを切り捨てるなんてことはせず、日々がんばってございます。

長くなったので、今回はここまで。
ではまた。




丸善カフェかな。

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2022/05/16 18:05
最近忙しい。
鳥駅スタバにて。


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Update 2022/05/16
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