週刊雑記帳(ブログ)

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教員の卒論へのスタンス(卒論指導教員(研究室)の選び方 No.5)

久々、このシリーズ
前回記事で一応完結していたはずだったが、4年も経つと取りこぼしに気づく。
今回はその取りこぼしより、教員の卒論へのスタンス、について書いてみる。
大学教員の卒論へのスタンスは多種多様。
指導教員選びの視点として参考にしていただくと、間違いが減るかもしれない。
なお、ここでは便宜上、タイプ分けして書いているが、くっきりとタイプに分かれるわけではない。
ゆるやかに分布しているものと考えていただいて。

教員のテーマ分配型

教員の研究テーマを卒論生に与える、プロジェクトに学生を組み込む、そういうタイプ。
理系の研究室で多い印象。
研究分野によっては、一から自分でテーマを選ぶことが難しい場合がある。
自分で選んだとて、設備やコストの問題で取り組めない、ということも多くある。
こういう研究分野では、教員が学生に自身のテーマをふる。
この枠組みで研究を進めることで、各種教育を行おうというもの。
特に理系では、お金のかかる設備や実験を必要とする研究が多い。
学術界は基盤的研究費が著しく少ない状態で、研究室主催者は自身でアイディアを出し、コンペ方式の研究費を内外の組織から取ってきていることが多い。
これを卒論等の学生教育と絡ませるという運営をしていることがある。

このタイプの場合、一線の研究に一員として取り組めるというのが最大の醍醐味。
卒論に関連して学会発表となることもあるし、卒業後データが論文になることもしばしば。
この場合は、ルールとしては自分の名前を入れてもらえることが多い。
自分の名前の入った研究が、広く世界に向けて論文になる、という経験は研究の世界に進まない限りなかなか経験できない。
将来研究者を考えている、という場合には研究業績が手に入りやすい、というメリットがあるのもこのタイプの研究室のメリットか。

一方で、自由に自分の興味で研究を行う、というのは難しい。
自由にテーマを探す、という過程で身につく各種能力は磨けない。
また、教員の研究費をたくさん使うことになるので、テキトーにやるというのは歓迎されない。
大事な大事なテーマを卒論生を信頼して渡す、ということになるので、教員としてもそのつもりで取り組んでくれないと困る、となることが多い。
このあたりの理解が不十分で卒論生になると、後々トラブルになるので注意が必要。
サブタイプとして、後述する学生労働力型、が存在する。

学生の興味重視型

自身の研究と卒論を完全に分けているタイプ。
卒論は教育活動と考えていて、テーマ選びから学生の自主性を重んじる。
教員のテーマ分配型の正反対のタイプ。
僕はこのタイプ。
どちらがいいかは学生さんの好みと分野の特性による。

一般的にこのタイプはよさそう、と思われがちだが、そういうわけでもない。
テーマ設定が研究において一番難しい。
よって、この部分で大変苦しむことになる。
難易度としては最高ランクだと思っていただいて間違いない。
そのくらい難しい。
興味の赴くままにテーマを追い求め行った結果、指導教員の知識範囲外のテーマになってしまうこともあり、この場合は自分がしっかりと知識面を磨いておく必要も出てくる。

悪いことばかり、書いたが、いい面もたくさんある。
まず、自分の興味で自由にできるので、テーマ自体に興味がないということは起こりにくい。
難易度最高ランクな分、その過程で磨かれる各種能力は結構なもの。
研究者にならなくとも役にたつ技能を手に入れることができる。
ちゃんとうやると自分の研究分野についてそれなりの知識を得ることができるのも特徴か。
もちろん、ちゃんとやらないとこれらは得られない。

サブタイプとして、後述する完全放置型というのが存在する。

中間型

「教員のテーマ分配型」「学生の興味重視型」はそれぞれ極端なタイプ。
もちろん、これの中間型も存在する。
例えば、ある程度テーマ設定が自由だけど、方法論や大きな枠組みに限定がある場合。
予算をとってきている研究プロジェクトの範囲内でテーマを設定してね、というような場合が考えられる。
中間型は多様で、2つのタイプの間にグラデーションを作りながらさまざまなものがある、と考えたらいいか。

学生労働力型

教員のテーマ配分型のサブタイプで、この型から教育色を取り去った極端なタイプ。
その名の通り、学生を研究をする労働力として考えている教員。
研究成果を追い求めすぎて、教育者になれなかったタイプでごく稀にこういうのがいる。

卒論から学びたいと思っている人にはオススメしない反面、言われたことを淡々とこなしたい、というタイプにはハマるかもしれない。
教員のテーマ配分型とこのサブタイプの間にもグラデーション的に中間型が存在する。
自分が卒論に求めることをしっかり意識した上で、指導教員の候補者のタイプを見極めたい。

完全放置型

学生の興味重視型のサブタイプ。
この型から、教育色を完全に抜くとこのタイプになる。
興味重視に見えるが、ただただ教育する気がないだけの極端な型。

楽に卒論を書きたい卒論生とは相性がいいが、卒論で各種能力を身につけるのはハードルが高い。
卒論発表会や審査は、他の教員も関わるのでここで苦労することがありえる。

この型も、学生の興味重視型との間に中間型が存在し、グラデーションをなしている。

まとめ

ざっくりまとめた図が以下。
いや、もちろん、放置にも教育的意図があるんだ、という場合もあると思う。
あくまでざっくりと理解していただければ。
教員が卒論に対して教育的か、どんな教育的意図を持っているかは、そのつもりで面談に行って聞き出すしかない。
これらの視点を持って、逆に面接してやる、くらいの勢いで選んでもいいのかもしれない。

ではでは。
また。




川崎、かな。

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2023/03/11 13:29
のんびりモード。
鳥駅スタバにて。


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Update 2023/03/11
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