週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

学振のこと(大学院へ行きたい人へ7)

学振。
このタイトルを見て、なんのことかわからなかった人。
今回はそんなアナタにこそ読んでほしい記事。
前回の記事で少しだけ触れた
博士課程に進んで研究者になりたい。
でも、経済的な問題から躊躇してしまう。
これは学生さんからよく聞かれる悩み。

実は、収入を得ながら博士課程に進む方法というのが存在する。
一つは社会人大学院生というもの。
研究職や研究ができる職に就いて研究しつつ大学院に通う。
この場合、所属先よりお給料をもらいながら大学院に通うことができる。
詳しくは、社会人経由研究者のススメで書いた。
他にもお給料をもらいながら大学院に通うシリーズとして、キャリア官僚や大手企業社員になって、社内研修の一環として選ばれるというコースもある。
博士号院生は難しいかも(研究職以外だと少ない)しれないが、修士号院生、海外MBA等はわりとある。
就職活動の際に、これらの可能性を調査してはいるというのも手。

社会人大学院生には、職場とは関係なく大学院に通うというタイプもある。
これでは、昼間は仕事に通い、夜間と休日に大学院に通うということになる。
大学院はこういった人たちに対応できるように、夜間休日に特例で授業ができるように仕組みが整えられているところが結構ある。
昼間の仕事に研究的な要素がないと仕事と学業ということになり、かなりハードになるがいないわけではない。
このコースを考える人は「あるキャリア官僚の転職記~大学教授公募の裏側~ 」あたりを読むといいかもしれない。

で、本題。
本タイトルの学振について。
ストレートの博士課程に進んだあとで、毎月の生活費を得るという方法が存在する。
これのメインの方法が、日本学術振興会・特別研究員DCに採用される、というもの。
研究業界では、略して学振という。
日本学術振興会とは文科省系の独立行政法人で、競争型の科学研究費等を出しているところ。
博士課程の院生の中から優秀な人を特別研究員DCとして採用し、毎月の生活費と自由に使える研究費を交付する。
毎月の生活費はやっと暮らせる程度のものだが、親の扶養から離れて独立するため学費が免除になる可能性が高い。
貧乏ながら研究を自力で続けることができる。
加えて、生活費とは別に院生としては少なくない額の研究費が出るため、学会参加等の経費負担がなくなる。
さらに、優秀であることが履歴書上に残るため、将来の職が得られやすくなるというメリットもある。

この学振。
DC1とDC2という2種類がある。
DC1は修士2年の春ごろに申請し、博士課程の正規年限期間が採用期間。
DC2は博士課程在学中の各春ごろに申請し、2年間が採用期間。
なお、PDという博士課程修了者向けの特別研究員もあり、これは毎月の生活費と研究費の額が上がる。

では。
この学振、どうやって取るかというと、研究計画書や研究実績などを書類申請して、審査によって競争的に勝ち取る。
審査は分野の複数の研究者が行う。
よって、研究計画書をうまく書けるとともに、学会発表や論文発表等の実績をあげておく必要がある。
勝負の相手は自分の分野の大学院生達。
腕に自信がある人は、家庭の事情で研究をあきらめなくて済むコースでもある。

さて。
この学振を取るにはどうしたらいいか。
研究能力を上げることが大事なのだが、実績の部分を意識する必要もある。
特にDC1を目指すのであれば、学部の卒論を学会発表できるか、論文発表できるか、がかなり大きい。
修士の2年生になりたての段階での業績、ということになると、修士の院生になってからの仕事ではなかなか難しい。
よって、博士課程の院に進むことを強く意識している人は、学部卒論から勝負が始まっている、と思っておいた方がいい。
もちろん、DC1に関してはそういう状況なので、研究計画でおもしろいものが書けるか、というのもポイントになる。
DC2ということになると、修士課程の仕事も大事になってくる。

取りやすい研究室、というのもある。
審査の時には、所属研究室はあまり関係ないはずなので、おそらく内部で書類の書き方や業績の書き方等のノウハウの蓄積があるのだと思う。
研究能力や業績に加えて、書類の作り方や見せ方など、通るためのテクニックというのはやはり存在する。
狙っている人やこれがないと困る人は、これを意識して研究室選びや進学先選びをするといいかもしれない。
研究室のHPのメンバの欄を見ると、その辺りが載っていることが多い。
研究室選びの訪問をする際に、学振とった人はいるかというのを聞いてみるのも手。

ただ、あまりこれにこだわりすぎて、好きな研究テーマから遠ざかる、というのは本末転倒な気はしている。
それなら企業研究員コースの方がいい。

では今回はこの辺で。
また。




f:id:htyanaka:20210516163316j:plain 羽田空港にて。

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2021/05/15 20:33
今日から梅雨入りらしい。
鳥駅スタバにて。


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Update 2021/05/15
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