雑記帳(ブログ)

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社会人経由研究者のススメ(大学院へ行きたい人へ5)

大学生と話していて時々出会うのが研究者になりたい(博士号が欲しい)というタイプ。
ただ、僕はあまり職業としての研究者は勧めていない。
これは業界の状況があまりに厳しいため。
博士がたいへん余っていて、優秀でも就職に失敗することがある。
せっかく大学のポストを手に入れても、研究が思うようにできない。
この辺りのことは、以下の記事にあたりを読んでいただいて。
大学教員就職物語
大学教員公募戦線物語
日本の研究力低下についての雑感

確かに研究自体は楽しいのだけれでも、現在のアカデミックな研究業界は競争も含めてとても厳しい状況。
仕事なんて一生懸命やればどんな仕事でも楽しいもの。
なのでちゃんと稼げる別の仕事を探してみてもいいんじゃないかと思っている。
ただ。
それでもなお、研究がいいという人もいると思う。
そんな人に向けてオススメしているのが、社会人経由で研究者(博士号取得)を目指すというコース。

1番オススメなコースが修士修了後、民間企業の研究職を目指すというもの。
大きな企業は研究部門を持っていることがある。
開発部門の中に研究関係の部署があることもあれば、独立した研究所のようなものを持っていることもある。
ここを狙う。
採用も研究職について独立して行っているところを狙えば確実度が上がる。
研究職で就職したのち、社会人大学院生という形で博士号を取得することも可能。
民間研究部門と大学が共同研究をしていることもよくあり、共同研究先の大学で博士号取得なんてパタンもありうる。
僕が博士号をとった研究室には、大手自動車メーカの研究所から博士号をとりにきていた人がいた。
共同研究で大手電機メーカの研究所にいたときは、修士了で入社した社員さん達が社会人院生として博士課程に在籍し30代くらいで博士号を取得していた。
食品、化粧品、化学と様々な企業があるため、理系であれば自分の専門分野の研究で就職できそうな企業はきっと見つかると思う。

このコースのメリットはやはり、経済的安定とリッチな研究環境。
サラリーマンなので安定した給料がもらえる。
これは大きく、ストレートな博士課程の大学院生に比べ結婚や子どもを持つといった選択もしやすい。
大学の研究環境は貧弱なこともあるが、企業の場合は研究開発費がある程度あることが多く、お金をかけて研究をすることができる。
将来の心配もあまりする必要がない。

ただ、デメリットもある。
営利企業のため、テーマはどうしても会社の方針に縛られる。
また、会社の方針によって研究部門そのものが廃止になって、非研究部門に異動になってしまうこともある。
サラリーマンはつらいよ、の世界である。
まあ、現在は転職もよくあることなので、気に入らなければ転職してしまうというのも手ではあるが。

民間の研究職以外にも研究するコースはある。
例えば、小中高の教員になり、現場目線から細々と研究をする。
この場合は教科教育・教育実践が主なテーマになるか。
修士の時に研究能力を身につけて、大学教員・研究者と細々と共同研究をするというような場合もなくはない。
そのテーマについて社会人院生として博士号を取得する、ということもできる。
これは公務員や民間総合職でも可能な場合がある。
このコースの場合、通常の業務に加え研究活動が追加になるため、民間研究職コースよりは大変か。
ただ、一定数いらっしゃる。

さて。
これらのコース。
一定の研究経験を積んだ後、大学への転職も可能。
例えば、僕が共同研究でお世話になった大手電機メーカの研究所の社員さんは、そのうちの何人かが現在大学教員になっている。
小学校の教員や中学校の教員でも、大学教員への転職組を何人も知っている。
公務員やりながら、仕事とは無関係に社会人院生として博士課程に通い、研究者に転職を果たした強者も知っている。
社会人経由で大学の研究者になるコースのメリットはなんといっても、就活のプレッシャーとリスクが格段に低いこと。
大学の研究者になれなくとも、安定した職と収入がある、というのは、任期つきで失職に怯える日々を過ごすのに比べると精神衛生上大きなアドバンテージだと思う。
なお、このコースが視野に入っている場合は、日々論文を書いておく必要がある。

以上、社会人経由の研究者(博士号取得)の目指し方でした。
どうしても研究者になりたい、という人はこういうコースを考えてみるのもいいかも。




f:id:htyanaka:20201011233743j:plain 旅の車内で。
山陰線かな。

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2020/10/11 23:30
いい時間になってしまった。
自宅にて。


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Update 2020/10/11
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