週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

院で専門を変えることのあれこれ(大学院へ行きたい人へ9)

院で専門を変える。
時々聞く話なのだが、今回はこれについて書いてみる。

まず。
大学院で専門を変えることはアリなのか。
これは各教員・研究者でかなり意見がわかれると思う。
が、僕はアリだと思っている。
高校までの狭い勉強と経験ではなかなか全ての学問分野に触れることはできない。
大学入学後、教養科目や専門科目の隣接領域の勉強、自由な読書などを通じて出会える分野の方が圧倒的に多い。
たまたま入学した学部学科の先に、研究したい分野があるとは限らない。
なので、院、特に修士課程進学時に専門を変えるのはなしではないと思っている。

問題点もある。
一番は、大学院と学部で教育目的が大きく異なるところ。
大学院は研究をするところであり、研究指導的な教育が中心。
体系的・網羅的に専門分野を学ぶ機会は用意されていない。
一方で学部は、その専門分野の学問を広く浅く身につけることが主眼。
例えば、心理学であれば、心理学の学部を卒業すると基礎心理学から応用・臨床心理学まで、幅広く知識を身につけることができる。
大学院の場合は、ある心理学分野のごく狭い分野で研究ができれば問題がない。
つまり、心理学の学部を出て身につく専門性と、院を出て身につく専門性は別物と思っておいた方がいい。
大学院で専門を変えて、かつ、新しい専門分野を将来の仕事にすることを考えている場合は、学部レベルの知識を自分で勉強しておく必要がある。
例えば、大学教員になりたい場合。
学部の授業を担当する場合、自分の研究分野の狭い知識だけではほぼ授業はできないと考えておいた方がいい。
また、院で研究をする場合に学部レベルの知識が前提となっていることも多い。
これが身についていないということがディスアドバンテージになることはありうる、ということは覚えておきたい。
よって、院で専門がえを行う場合は、学部の早い段階でそれを意識して自分で勉強しておく必要がある。

では。
学部レベルの知識を自学でなんとかする場合にはどうしたらいいか。
オススメは、進学予定先の院にぶら下がっている学部のカリキュラムを調べて、その内容の本を網羅的に読むというもの。
その学部と同じような他大の学部カリキュラムも調べて、より一般性を持たせるのもありか。
各大学、シラバスは公開されているので、それを見て教科書を探すのもあり。
この辺りは、またいずれ改めて書く。

研究に直結してやっておきたいこともある。
すぐに研究が始められるように、必要のなりそうな書籍・論文はあらかじめ読んでおく。
これをやっておくことで、専門が変わってもすぐに研究を始めることができる。
読むべき書籍や論文は、進学先の指導教員候補者に紹介してもらうのがよい。
これを学部生のうち、できれば院の試験より前にやっておきたい。
院での研究を考える材料が増え、院試対策にもなって一石二鳥。

以下は、進学タイプ別の学部時代の備え。

学部専門の隣接領域への転向

例えば、心理学で脳科学転向とか、電気電子で情報工学転向とか、こういう場合が当たるか。
この場合、学部で軽くは勉強していること多い。
研究するだけで、将来の専門分野は学部時代のまま、ということであれば備えの勉強は軽くでいい。
自分の研究したい内容に関連した転向先の学部の内容を中心に勉強する。
将来の専門分野も院の分野に変えたいという場合は、学部のカリキュラムを調べて網羅的に勉強したい。
分野が近いので、学部高学年になってからでも対応が可能。

隣接領域に進む場合は、学部の専門性もしっかり身につけておきたい。
学部で身につけた専門性は新たな専門領域でも生きる。
視点が複合的になり確実に武器になる、ということは覚えておきたい。
無駄にはならない。

学部専門と全く異なる領域への転向

例えば、教養科目で心理学に興味を持って、専門は全く関係ないが院で心理学を極めたい、といった場合。
この場合は、かなり早い段階から、学部の知識を独習する必要がある。
やり方は本文に書いた通り。
卒業研究については、進学予定の教員や学内にいる専門分野の近い教員に助言を受けたいところ。
学部の指導教員に理解があれば、指導委託等の柔軟な対応が可能な場合もあるので、それができる研究室を選ぶのも手。

あまりにも学部の専門分野と院の分野が違いすぎて、勉強が追いつかない場合もあろう。
この場合は思い切って、学士編入や研究生兼科目履修生を選択してもいい。
中途半端に進学するよりも後々のことを考えるとプラスになるかもしれない。


まあ、こんなところか。
ではまた。




f:id:htyanaka:20211003174505j:plain ずっと昔に乗ったロマンスカーの展望席。

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2021/10/03 17:27
10月になりました。
日本のどこかで。


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Update 2021/10/03
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