おさなごころを科学する: 進化する幼児観
森口 佑介(著)
難易度:☆☆☆☆
乳幼児期の心理発達について、さまざまな角度から解説した本。
無能とされていた古い乳幼児観から、意外と有能だと考え直された新しい乳幼児観、大人との質的な違い、脳研究の知見など、幅広く扱う。
特に乳児に関する知見が厚い。
章立てはおおむね歴史順になっており、どのように乳幼児観が語られ、変わってきたか、整理しながら理解することができる。
きっちりと根拠となる研究を厳選して紹介しながら展開しており、非常に面白い。
研究研究した専門書は難解で読みづらいことが多いが、この本は平易で読みやすいのもポイント。
発達心理学を学んだばかりの学部学生さんの次の読み物としてもオススメ。
紹介されている研究が厳選されているため、隣接分野の研究者の読み物としても楽しめる。
引用もしっかりしており、研究の調査用・基礎勉強用としても使える。
ピアジェの乳幼児観の説明がとてもわかりやすいのもよかった。
教科書も含めピアジェの記述はわかりにくいものが多いが、この本の記述は例も含めてとても平易でわかりやすい。
教科書や入門の講義でピアジェがうまく飲み込めなかった人にもおススメ。
この部分だけでもこの本を読む価値は十分ある。
まずピアジェの乳幼児観をしっかりと理解する。
その上で、ピアジェの個々の知見を否定する。
そんなスタイルをとる。
否定するのであればピアジェの理解なんていらないじゃないかと思うかもしれないが、それは違う。
この分野の研究自体がピアジェからなんらかの影響を受けており、ピアジェを含めた古い乳幼児感を知っておかなければ新しい乳幼児感も理解できない。
そういう意味ではピアジェはやはり偉大。
そんなことを感じさせてくれた本でもあった。
発達を学んでいる学生さんはもちろんのこと、現職教員や福祉系の職員等、子どもと関わる全ての人にオススメな一冊。
おもしろいよ、コレ。
高松の港にて。
Update 2019/01/16
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