週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

授業の内容は教員によって違う(大学生のための学び方入門6)

前回、授業の内容を疑え、と書いた。
今回はこれに関連する内容をば。

大学における授業の内容は、実施する教員によって異なる。
ちょっとだけ違う場合もあれば、それこそ全く別物になってしまうこともある。
なぜそんなことが起こってしまうのか。

大学の教育内容は高校までのようにシステマティックに統一する仕組みがないというのは前回書いた。
それどころか、そもそも大学においてはその分野で「教えるべき内容」を定めることができない、と思っている。
どういうことか。
大学においては同じ名前の授業を担当する場合であっても、教員によって考えている学問観や大事だと思うポイントがずれている。
場合によっては各学問分野の定義すら異なることがある。
そして、最先端ゆえにそれらは日々変化している。
そんなわけだから、少なくとも各教員が教えたいその分野の内容についてはある程度のばらつきあると思ったほうがよい。
そして教員は専門家。
専門家の知識は狭くて深い。
よって、深く教えたいのだけどそれは難しい場合も出てくる。

例えば。
僕が教養の心理学を教えるとする。
僕の専門は脳と心理学で実験的手法がメイン。
これに、発達心理学や障害の基礎研究のために質問紙法を用いた研究をやることがある。
すると、どうやっても脳をベースに置いた心理学の基礎理論とその発達をからめた話がメインになってしまう。
心理学には臨床心理学という、心の不具合とそのケアをメインとする分野があるのだが、教養の心理学の中にその知見を含めるかと言えば、おそらくあまり含めない。
社会心理学や現場よりの教育心理学なんかについても、それは応用だと思う部分については薄くしか扱わないと思う。
これは僕の専門性ゆえの心理学観から来る。
これが絶対的に正しいとは思わないし、出来るだけバランス良く他分野のことも教えようとは思うものの、やはり僕の色がかなり色濃くでてしまう。
これが、臨床心理学者だったら全然違う心理学観の下の教養心理学の内容になる。
こればかりは、大学の教育の特性だと思った方がよい。

それに。
臨床心理学や社会心理学の内容を大事だと思って教えようとしても、どうやっても浅い授業になってしまう。
これは仕方ない。
本人がその分野の研究をやったことがないので、どんなにがんばっても論文だけの知識ということになる。
深く教えたくとも、やったことがない人とやったことがある人では、教えることの深さが全然違う。

それでは大学生はどうしたらよいか。
まずは大学の授業とはそういうものだと意識する。
その上で、授業名と同じテキストを複数読み込むとよい。
できれば、専門が違う編者のものを選んでみよう。
4冊くらい読むと、どこが共通していてどの辺がばらつくのかわかる。
同じ内容についても複数の視点から迫ることができるので無駄にはならない。
最近は各大学のシラバスが公開されているので、それを比べてみるのもおもしろい。
同名の授業でもこんなに違うのか、でもこの辺りら共通しているね、というのがわかる。
シラバスは力を入れて書くところが増えてきているので、テキストや参考図書、勉強の仕方など役に立つ情報も載っていることがあるので、参考になる。

自分が力を入れて勉強したい分野についてはこの姿勢がかなり大事。
特に、小規模校で専門の教員が少ない場合にはかなり有効。

ではまた。




鳥取にて。


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2020/01/04 20:38
休暇も終盤。
たまプラーザにて。


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Update 2020/01/04
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