週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

卒論生はどこで詰まるのか(研究をしよう29 卒論特別編)

今回は卒業研究、その成果としての卒業論文の話。
これから取り組む人に読んでほしい記事。
学部3年生以下や修士1年生なんかを想定した。
なお、理想的なスケジュールについては別に書いてあるのでコチラも参考にしていただきたく。

さて。
卒論も論文大詰めともなると、うちの学生が口をそろえて、言うことがある。
それは、もっと早くからやればよかった、というもの。
そして、後輩に会うとそのように強くアドバイスするのも毎年行事。
でも、まあ伝わらない。
実は彼らも1年前に先輩たちから同じアドバイスをもらっているはずなのだが。
つまり、まあ共通して毎年繰り返されているのが、「時間が足りない」ということ。
いや、先輩や教員からずっと言われていたじゃないか、と言うと、こんなに大変だとは思わなかった、というのも繰り返される弁。
そこで、今回は卒論生がいったいどこに時間をとられて最終的に時間が足りなくなるのかを書く。
なお、学生さんを見ていると、時間が取られる箇所はその人の技能や性質によっても大きく変わる。

時間見積もりが最初からアマイ

理想的なスケジュールの記事でだいたいのかかる時間を書いているのにも関わらず、話半分でしか信じていないタイプ。
書いてある時間よりもはるかに少ない時間でできるという根拠のない自信をお持ちだったりする。
ただ、それが間違いであることは、多くの卒論生が終盤に気づく。
分析にこんなに時間がかかるとは思わなかった、調査はもっと時間を短縮できると考えていた、あたりは頻出反省の弁。
自分の予想していた時間の2〜3倍時間が必要、というのがだいたい共通して出てくる意見。

じゃあなぜ、期限に間に合うのかと言えば、それは火事場の馬鹿力的なパワーと、締切間際作家ごっこみたいな生活の賜物。
なお、それでもほとんどの場合は埋めきれないので、クオリティが犠牲になる。
時間が足りない、というのに気づいてからの作業は不安との戦いでもあるため、精神衛生上大変良くない。
なんで知っているのかと言えば、僕もですね。。。

また、真面目にやっていると自分の研究のクオリティについても把握できるようになっているので、それを発表しなければならないことからくる苦しさも追加される。
まあこれは、真面目にやっていない人にはやってこない苦しさ。
目利きとしての研究能力が身についているからこそ感じることができるので、成長したということなのだが、苦しいことには変わりない。

長期イベントの影響を軽視

就活や院試、教育実習など、最終学年には長期間研究ができない重要イベントが存在する。
この影響は絶大で、多くの学生さんがこれでやられる。
抜けている時間分の研究が止まるだけならリカバリー可能な人もいる。
ただ、実際はそうはならない。
ヒトは忘れる生き物である。
1ヶ月研究生活から抜けると、抜ける前にやっていたことも結構忘れてしまう。
だいたい戻ってきて、それを思い出すところからスタート。
抜けていた期間+思い出す期間がロスになる。
これらの長期イベントが断続的にやってくる学生さんだと、結局数ヶ月分の時間にロスが発生し、最後に大パニックとなりがち。

これを避けるためには、これらのロスを見込んで前倒しで卒論を進めるか、長期イベントの最中も細々と研究をやる(1日1−2時間でもいい)かのどちらかが必要となる。
ただ、後者を選択した学生さんでも、長期イベントの大変さの前に、まあいっか、となって結局大幅時間ロスに繋がるパタンはよく見る。
気をつけたい。

技能不足による思わぬ時間ロス

研究を進める上で必要な基礎的な技能がある。
研究に直接必要な論文の読み方、方法論の知識等は、まあわかると思う。
それ以外にもある。
読む力、書く力といった一般的な能力は結構効く。
PCの技能なんかもそう。
あるところまで順調だったのが、そういうので時間を取られるというのはある。
研究のテーマによって必要となる各種技能は多種多様なので、どこでそういったことが起こるかはわからないが、起きることがあるという前提で余裕を持って進めた方がいい。
なお、これに関しては、逆もあり、その人の技能が一般より高いために思ったよりも時間がかからないこともある。
前もって備えるとしたら、ゼミの初期段階で論文の読み方や方法論の知識などをおさえておくことなんかが考えられる。
なお、これらの技能については、卒論を通じて磨くこともできるので、時間は使うけど成長もするので、時間に余裕がある場合は問題にならない。
うちの研究室だとPCの技能については実感を持って身についたと感じるらしい。

失敗による時間ロス

研究という営みに失敗はつきもの。
どんなに完璧な計画だと思っていても、蓋を開けて見ると予想外の失敗があったり、意外な結果が出てきたりする。
その調査だけでは結論を導けない、調査や分析をやり直す必要がある、文献調査をやり直す必要がある等々。
研究には想定外の追加プロセスが必要になることは多々ある。
時間に余裕がなかったがために、これらのための時間をどうやっても捻出できず、というのはまあある。

これは前述の理想的なスケジュールくらいの余裕があれば、リカバリーが可能。
ただ、多くの場合は理想通りは進まないので、時間が逼迫した後半にこれらのロスがやってきて苦しむ。
予想外のことや失敗は起こりうる、という前提で研究に取り組みたい。

卒論〆切近くの混雑

これだけ説明しても、なお、後半追い上げで行くから大丈夫、と考える人がいる。
このタイプ、ある視点が欠落している。
自分のがんばりではどうにもならないことがあるという視点。
特に、自分以外の誰かの時間を使う場合。

例えば、研究で行う調査や実験。
12月、1月は慌てた卒論生がこれらを依頼しまくる。
依頼された側からすると、またか、となる。
夏や秋口であれば簡単に協力してもらえるものが、協力してもらえない。
結果、調査や実験の期間が予想以外に長引く、ということになる。
それに、誰かに協力を依頼するのに研究が練られていない、というのは非常に失礼。
研究倫理的に問題がある。

〆切前の混雑で最も影響が大きいのが、指導教員の混雑。
〆切間際の教員、指導している人数やスタイルにもよるが、大変混むと思っておいた方がいい。
論文を見てほしい、と依頼しても、後ろで他の卒論生の論文も見ていることがほとんど。
ここで待ち時間が発生する。
教員は卒論の指導だけやっているわけではない。
卒論の提出時期は、他の授業の試験関連の業務、入試業務、各種年度末処理等々、大変忙しい。
簡単には捕まらないし、ある程度待ち時間が発生するというのは頭に入れておきたい。
これもスケジュールに余裕があるほど回避できる。
忙しくない時期を狙って効率的に教員を利用する、というのは結構大事。

なお、日々の我々の激しい働き方を見ているせいか、土日祝日夜にも作業してもらえると考えている人がいるが、そんなことはないと考えておくのが無難。
無理させると、その教員からプライベートな時間を奪うことになる。
他人の時間を大事にする、というのは、社会に出てからも大事な姿勢だと思う。
僕に関してはできる範囲で見るというスタンスなので、あまり気にせずに依頼したらいいが、土日の作業はあまり期待できないのは多分みなさんわかっている。


長くなった。
今回はこの辺にしておこう。
ではまた。




都内にて。

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2022/02/12 13:43
朝からスタバでコーヒー。
鳥駅スタバにて。



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Update 2022/02/12
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