週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

本の紹介,「病気の子どもの教育入門 改訂増補版(全国病弱養育研究会(編),クリエイツかもがわ)」

病気の子どもの教育入門 改訂増補版
全国病弱養育研究会(編)
難易度:☆☆


病気の子ども、というのは世の中に結構たくさんいる。
考えればわかるのだが、病気になっていると、通常の教育制度では満足に教育を受けられない。
そこで、病気の子どものために用意されたいくつかの制度がある。
我が国では、そういう子たちへの教育を「病弱教育」と呼び、特別支援学校から特別支援学級を中心に、いくつか制度を整えている。
例えば、院内学級は有名だが、これは病弱教育の制度の一つ。
学校の先生が、学校を離れて子どもの元へ行って教育を行う「訪問教育」の一形態。
特別支援学校か小中学校の特別支援学級の教室を病院内に開設する、という方法。
この本は、そんな病弱教育について解説した、超入門書。

内容は、理論的・学術的な内容ではなく、実際の実践を現場の先生の目線で記述したもの。
堅苦しい教科書的な内容とは一線を画し、分野外の人にも読みやすい。
病気の子どもに対する心構えや心理的な特性から始まり、教科ごとの教育、就学前の保育・教育、医療や課題まで、かなり広範囲をカバー。
病弱教育の現場経験のある教員が、トピックごとに解説と実践例を紹介していく。
病弱教育とはどんなものなのか、まず具体的なイメージをつかむのに最適な内容。
病気の子どもは教育上どんなことに困っているのか、重い病の中で勉強はどんな意味を持つのか、などなど、病弱教育の実際を現場の先生の目を通じて知ることができる。
現場の先生の「これでいいのか」という自問自答のような姿勢も垣間見え、それもよかった。
ページ数は多いが、文は平易で、半日もかからず読み切ることができた。

この本。
2013年に初版が出て、2021年に改訂増補版として出た。
病弱教育系の本は教科書も含めて数が少なく、新しいものはあまり多くない。
改訂版であっても古い箇所が残っている、というのはよくあるが、この本はしっかり最新の内容に書き変わっている印象を持った。
特に、高校の病弱教育については問題点・課題が多いが、その部分についてもしっかり書かれている。
最新の病弱教育の事情を知る、という意味でも役にたつ。

病気の子どもの教育について、具体的なイメージを掴みたい人におすすめ。
現場で教員をやっていて、病気の子どもと関わることになった、なんて教員がまず最初に読んでみるのにおすすめな本。
特別支援教育や病弱教育について学んだ大学生が、次にこの本を読んで実際の現場を知る、というような使い方もできる。
特別支援教とは、障害のある子がいる場は全部特別支援教育の場となる、という考え方。
当然通常学級で学ぶ病気の子どももいる。
教員になるのであれば、特別支援学校の教員でなくとも関わる可能性がある。
そんなわけだから、小中高の教員を目指す大学生や現役の小中高の教員にも広く読んでほしい。

なお、病弱教育の現場を知る本としては、以下もおすすめ。
「15メートルの通学路」(山本 純士 ,角川文庫)
「15メートルの通学路」は、1人の教員の視点からリアルな現場を描いたもので、「病気の子どもの教育入門」は複数の教員の視点を分野網羅的に整理して紹介した内容。
どちらも、よいですヨ。




にこたま、ダヨ。

-----
2023/11/12 16:48
休みはよき。
鳥駅スタバにて。



本の紹介へ戻る
雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2023/11/12
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2023 All Rights Reserved.