15メートルの通学路
山本 純士(著)
難易度:☆
久々のこのシリーズ。
紹介したい本は結構あるんだ。
ただ、書くにあたっては本を読み直しているので、ちと時間がかかる。
忙しいと、なかなかね。
言い訳はすんだので本題。
みなさんは病弱教育という言葉をご存知だろうか。
特別支援学校には視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、に加えて病弱、という区分がある。
世の中には病気が原因で一般の学校で教育を受けられない子どもたちがいる。
病院に入院しており学校に通えない、頻繁に病院に通わなければならず地域の学校に通えない、等々。
このような子どもたちの教育を受ける権利を保障するための仕組みとして、病弱教育というものが行われてきた。
病院の敷地内や隣接地に病弱の特別支援学校を作り、そこに通う。
病弱の特別支援学校の学級(地域の学校の特別支援学級の場合もある)を病院内に設置し、院内学級として教育を行う。
これらの学校に所属する教員がベッドサイドに出張して教育を行う、という方法もある。
この本は、そんな病弱の特別支援学校の先生が書いた物語調のノンフィクション。
病弱の学校に異動になるところから始まり、病弱教育の現場での奮戦を短編小説のような要領で描く。
これがとてもおもしろい。
病気を抱える子どもやそれを心配する親族、一癖も二癖もある教員たち。
それらの個性がぶつかりながら、リアルで少しほろ苦く少しほっこりするストーリが展開される。
死と隣り合わせの子どもたちと周りの大人たち。
これらに教育の本質というか、生きるということの本質というか、そういったものを感じることができる。
表題になっている15メートルの通学路は、その中の一つの物語のタイトル。
小学1年生の女の子が入院している病室から教室まで通う廊下の距離。
これが15メートルだった。
もう手の施しようのないくらい重い病だった彼女。
やがて死に行く運命の彼女。
そんな彼女にとって教育とはなんなのだろうか。
教員としての苦悩と葛藤が描かれており、非常に考えさせられた。
途中で登場する、病気でなければ入学する予定だった地元の学校の校長先生もまた素敵でよかった。
他にも教育とは何かを深く考えさせられるお話がたくさん。
教員だから子どもの味方になれる。
そんなのは教員側のエゴなのかもなぁ、なんてことを読みながらぼんやりと考えた。
僕はこの本を何度か読み返しているが、読むたびに違う何かを得ているような気がする。
そんな不思議な本でもある。
特別支援学校の教員を目指す人には必読の書。
それ以外の学校の教員を目指す学生さんや現職の先生にもぜひ読んでほしい1冊。
もちろん教育とは全然関係ない人たちにもオススメ。
いろいろと得るものが多いと思う。
ではでは。
今回はこのへんで。
たまっている本の紹介記事、ぼちぼち書いていく予定。
長い目で見守っていただいて。
たまプラーザかな。
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2020/11/30 23:27
ギリギリセーフ。
自宅にて。
Update 2020/12/13
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