週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

進学で研究室を変えることのあれこれ(大学院へ行きたい人へ8)

久々このシリーズ。
大学院に進学したい。
ではどこに進学しようか。
今いる研究室はわりと気に入っている。
でも、他大の院に進学してみたい。
こういう悩みは結構耳にする。
今回はこういう人に読んでほしい記事。

まず。
他大に行け、というのが僕の個人的な考え方。
基本的に研究室所属の学部生に相談を受けるとこうアドバイスすることが多い。
僕の大学は研究に特化した大学ではなく、博士課程もない。
進学者も多くないため、研究者を目指す先輩の背中はみることができない。
ただ、何よりも、外の世界を見て色々と知っておくのがいい、というのが大きな理由。
もちろん、どうしても僕でなくてはならない事情があったり、鳥取を離れられない事情があったりとした場合はこの限りではなく、まあケーズバイケースにはなる。
この方針はおそらく一般的ではない。
院生を抱える多くの教員は学部+院をセットで教育したほうが効率的と考えており、出て行かないでほしいと考えている先生もいると思う。
こちらもケースバイケース。
その上で、続きを読んでいただければ。

他大に進学するメリット

一番は新しい研究環境を経験することができること。
研究というのは研究室の教員の色が強く出る。
すると、当たり前だと思っていた考え方、環境、研究姿勢等が当たり前ではないということに気付かされる。
これは大きい。

研究大学以外の研究室から研究バリバリの研究室に進むと、その環境の違いに驚くかもしれない。
同世代の院生がたくさんいる環境は刺激的だし、モチベーションも上がる。
博士課程の院生や研究員、助教といった研究のスペシャリスト一緒に研究ができるのもいい。
ハイレベルなゼミや勉強会、共同研究なんかも経験できるかもしれない。
こういう環境から学べるものは計り知れない。

学部が研究大学であっても、小さな研究室から大きな研究室に移動すれば上記のようなものが手に入るかもしれない。
逆に、大きな研究室から小さな研究室に移ることで、教員との密な議論等、指導の質が変化するかもしれない。
院に入るにあたって分野替えをすることで、前の分野の常識とは異なる常識や考え方に触れることができるかもしれない。

移動に伴って、教員も変わることになる。
大学教員のキャラクターや指導スタイルというのは思っている以上に多様なので、1人しか知らないよりは複数人知っておいた方が視野が広がってよい。
研究環境は教員の手腕によって変わるので、この辺りを複数見れるのもおもしろい。

以上が、進学するメリットの主だったもの。
あとは、指導教官と合わない、研究環境に不満、など、現状を変えたい人にも大きなメリットがあるが、これは研究に限った話ではないので書かない。

研究室を変えることのデメリット

メリットがあればデメリットもある。
一番のデメリットは、学部でのやり方がガラッと変わる可能性があること。
特に、学部の研究室があっていた場合は、院の研究室の方が相性や環境が悪くなるということもあり得る。
これは、クジを引き直すようなものなので避けようがない。
現在学部生で、教員との相性がバツグンだったり、専門分野や研究テーマにかなりマッチしていると感じていたりする場合は、このリスクを考えておきたい。
研究がサクサク進んでおり、今後も研究が捗ることが予想される場合は、あえて院で他大に移動する必要はないかもしれない。
この場合は、他大に出る代わりに学会や研究会に積極的に出て外の世界を知る、という戦略でもいいか。

学部の時の研究を投稿論文にしたい、という場合も、所属が変わるとうまくいかないことがある。
特に教員の研究費を使って研究をした場合、データは元の研究室の誰かが論文化する可能性がある。
これは予算の出どころからして、まあ仕方ない。
自分のところの学生だから教育の一環でスピード感に目を瞑ってもらっている場合もある。
教員の研究費が競争資金の場合や研究のアイディアが教員から出ている場合は、教員側のモチベーションとしてさっさと論文にしたいもの。
まあ、卒論のデータやその後の論文化については、学部の教員によるので、どういう方針か聞いてみるといいと思う。

卒論を自分で投稿論文化してもいい場合でも注意が必要。
新しい研究室ではそれをするだけの時間が取れないこともありうる。
進学先の研究室は卒論の研究分野とは多かれ少なかれずれることが普通。
新しいことも学ばねばならず、手が回らない、ということは想定しておいた方がいい。
また、まとめる段になっても問題が生ずることもある。
そもそも学部卒業程度の研究能力なので、自力で投稿論文にまとめるには難がある。
しかし、元のネタについて進学先の先生が面倒を見てくれることはあまりない。
特に卒論のネタを元に論文化して学振を狙うようなことを考えている場合にはこのデメリットはあまり無視できない。

最後に、もう一つ。
学部の土地を離れる場合は、息抜きに付き合ってくれる友人がいなくなる、というデメリットもある。
これは経験するまでは気づかないのだが、人によっては地味に利く。
まあこれは院生に限らず、新社会人になる人にも当てはまるが。
進学先が定員の大きな大学院だったりすると、同級生がたくさんいるのでこれを補える場合もある。


他にも、院で専門を変えることについても書く気でいたのだが、長くなりすぎた。
これはまた次に。
ではまた。




f:id:htyanaka:20210905130315j:plain 大昔の横浜にて。


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2021/09/04 20:27
夏の終わりに。
鳥駅ドトールにて。


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Update 2021/09/04
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