週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

教員養成と研究振興のはなし

僕は現在、教員養成に携わっている。
そのため、教員が将来の選択肢である学生さんや、その養成に携わっているさまざまな大学教員と話をする機会が多い。
そして、これら方々から、気になることを聞くことがある。
教員養成に理解がない、それどころか、自分の研究室の学生が教員免許状を取ることを好ましく思っていない大学教員がいるらしいのだ。
これは所属校に限った話ではなく、開放性と言われる方式(教員養成が主ではなく、学部学科の希望する一部学生のみに教員養成をして免許状を出す方式)で教員養成をしている大学・学部で共通して聞かれる話。
ひどい場合だと、教職必修科目の時間にゼミを開講したり、取るなと圧力をかけたりする事例を聞いたりもする(所属校の話ではない)。
そこで、今回はこれについて書いてみる。

特に、研究にとって教員養成は邪魔だ、こんなふうに思っている先生に届くといいな、と思っている。
確かに教員免許状をとる学生さんは、そこに時間が取られてしまうため、研究に使える時間が減ってしまう。
これは短期的にみると研究の進捗にとってマイナスである。
ただ、長期的に見ると研究分野全体について大きくプラスになると思っている。

まず。
なぜ研究室の学生さんが教員免許状を取ることを嫌がるのか。
理由はわりと単純で、学生さんが専門分野の勉強や研究に充てる時間が減るから。
教員免許状を取得するには、その学部学科の専門科目に加え、免許状取得に必要な科目を取らなくてはならない。
道徳や特別活動、特別支援教育など、どの校種・科目であっても教員をやるにあたって必須となる知識は結構ある。
よって、本来研究に専念できる上級生であってもこれらの科目の履修が必要になる場合が多い。
また、教育実習など、一定期間研究が全くできなくなる時期も出てくる。
これらが研究に影響する、のを嫌うという場合が多いのではないだろうか。
別に嫌っていないが、ゼミの時間を教職系科目に配慮しないで設定する、という場合もあろう。

特に、教員の研究プロジェクトの中から、学生にテーマを渡して研究室を運営している場合。
研究が進まないと研究室運営上困る。
研究プロジェクトがポシャると、次の研究費獲得が困難になり、結果次の代の学生教育に影響する、ということになりかねない。
そんなことに学生を巻き込むなよ、という意見が出てきそうだが、教育経費が足りず教員のプロジェクト研究費で教育を行わざるを得ない場合もある。
そのくらい我が国の大学環境は厳しい。

ただ。
それでもなお、学校教員志望者を受け入れた上で研究指導をすることは意義がある。
短期的には研究にマイナスかもしれないが、長期的にはその研究分野にプラスになると思っている。
どういうことか。

卒業研究では研究を通じてその分野のおもしろさに触れることができる。
研究そのものの楽しさを感じてくれるかもしれない。
1年か2年一つのテーマをじっくり追いかけるため、学生時代の研究分野はそれなりに思い入れの深いものとなる。
こういった人材が学校教員になって、その分野を含めた教科教育の任に当たるわけである。
大学教員がアウトリーチと称して小中高に出ていかなくとも、彼らがその研究分野のおもしろさを語ってくれる潜在的な人材になりうる。
こういう人材が毎年少しずつ現場に送り出され、子どもたちに自分の好きな研究分野の話をしてくれる。
中にはそんな話を聞いて進学先の分野を決める生徒が出てくるかもしれない。
進路指導で具体的な進学先として勧めてくれるかもしれない。
こういう人材が初等・中等教育の現場にいるというのは、長期的に見てその研究分野の発展に大きく貢献するとは思わないだろうか。

これは学校教員に限った話ではない。
財界人、官僚、政治家。
その多くは大学経由で社会人になる。
その人たちに、在学中しっかりと研究の基礎理解とそのおもしろさを学んでおいてもらう。
そうすると、その中のいくらかは卒業後、研究業界を応援してくれる人たちになってくれるはず。
権力者にならなくとも教え子たちはみな有権者にはなる。
4年間も時間があるのだから、地道に教育をして研究外の各領域から応援してもらう、というのは悪くない考え方だと思っている。

と、まあそんかことを日々考えつつ、研究指導をがんばっている。
ただ、理想通りにはいかないもので、研究のおもしろさを伝えるのがまた、難しい。

ではでは。
また。




f:id:htyanaka:20211018232054j:plain にゃん。にゃにゃにゃん。

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2021/10/18 21:17
書く暇がないね。
仕事後の自宅にて。


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Update 2021/10/18
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