週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

特別支援教育2023(鳥取大学)

授業内容


第1回  オリエンテーション(4/13)
     特別支援教育の概要(1)
      最初~合理的配慮の要素
第2回  特別支援教育の概要(2)(4/20)
      合理的配慮補足~制度と現状:特別支援教育の目的
第3回  特別支援教育の概要(3)(4/27)
      制度と現状:自立活動~制度と現状:対象となる障害種
第4回  特別支援教育の概要(4)(5/2)
      制度と現状:免許制度~制度と現状:個別の教育支援計画
第5回  特別支援教育の概要(5)(5/11)
      制度と現状:個別の計画具体例~現状の数
第6回  特別支援教育の概要(6)(5/18)
      制度と現状:現状の数続き~歴史:義務制棚上げ
第7回  特別支援教育の概要(7)(5/25)
      歴史:義務制棚上げ補足~歴史:ラスト
第8回  特別支援教育の概要(8)(6/8)
      理念:最初~差別解消法
第9回  特別支援教育の概要(9)(6/15)
      理念:特別支援教育の特徴~ラスト
第10回  子どものこころの発達(1)(6/22)
       最初~発達の理論:さまざまな発達の理論
第11回  子どものこころの発達(1)(6/29)
       発達の理論:ピアジェ~乳幼児期:認知
第12回  子どものこころの発達(2)(7/6)
       乳幼児期:愛着~心の理論
第13回  子どものこころの発達(3)(7/20,7/13は大雨休講)
       乳幼児期:抑制機能~ラスト
      障害の理解と支援(1)
        最初~聴覚障害
第14回  障害の理解と支援(2)(7/27,予定)
       肢体不自由~




授業で紹介した情報


第1回  オリエンテーション(4/13)
     特別支援教育の概要(1)
特になし.

第2回  特別支援教育の概要(2)(4/20)
◎QA関連
 ・2022年10月にでたインクルーシブ教育に関する国連の委員会の勧告
 ・海外のインクルーシブ教育を読む本(「アメリカの教室に入ってみた」(赤木和重))
 ・障害者権利条約(和文,英文)

第3回  特別支援教育の概要(3)(4/27)
特になし.

第4回  特別支援教育の概要(4)(5/2)
◎QA関係

・Q:特別支援教育の場における教員の数の基準は?
・A:以下の法律に定めがある.

→(1)義務教育(特別支援学校含む):
公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律

第3条(小中,特別支援学級,特別支援学校),第7条第5項(通級)

→(2)高校(特別支援学校含む):
公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律

第9条(高),第14条(特別支援学校),第22条第3項(通級,ただし,実数は施行令・省令で規定)


・Q:特別支援学校・学級・通級の基準は?
・A:特別支援学校は(1),学級・通級は(2)内の「3 小学校,中学校又は中等教育学校の前期課程への就学」による

(1)学校教育法施行令第22条の3
(2)障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)(25文科初第756号 平成25年10月4日)


・Q:自立活動の具体例を知りたい
・A:「自立活動 指導案」で検索かけると,各教育委員会の指導案が出てくる
 例えば,調布市のHPの指導案


第5回  特別支援教育の概要(5)(5/11)
◎前回の補足
知的障害の教科について,以下は文部科学省が著作を持つ「星本」と呼ばれる教科書である.
興味ある人は目を通してみるとどのようなものかがわかる.
鳥取大学図書館 星本の蔵書

第6回  特別支援教育の概要(6)(5/18)
◎QA関係

・QAの前の授業内容補足情報
特別支援教育のための各種仕組み「特別支援教育コーディネーター」「センター的機能」「巡回相談」「専門家チーム」等が分からない人は以下の資料が役に立つ.
発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン(平成29年3月)(本文)
第2部の設置者用で,各仕組みの概略をつかみ,第3部・4部でそれぞれについて詳しく学ぶといいか.

発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン(平成29年3月)(参考資料)
同資料の参考資料には,関連する重要な文書が収められている.
特に,「特別支援教育の推進について(通知) (平成19年4月1日 文部科学省初等中等教育局長)」にある理念等は勉強になる.

特別支援教育支援員制度については,以下が参考になる.
特別支援教育支援員を活用するために(平成19年6月 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課)

書籍では,以下の本に記載がある.
いずれも図書館に蔵書があります.




Q:なぜ,特別支援学校高等部は人数が多いのか.で紹介した本.
本の紹介,1リットルの涙(木藤亜也(著)、幻冬舎文庫)

第7回  特別支援教育の概要(7)(5/25)
◎QA関係


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Update 2023/07/26
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障害児等神経生理学研究2023(鳥取大学)

授業内容


第1回  オリエンテーション(4/11)
     脳と神経の基礎(1)
       最初~ニューロンの特性
第2回  脳と神経の基礎(2)(4/18)
       神経細胞の情報処理:静止膜電位~神経間の情報伝達:主な受容体の種類
第3回  脳と神経の基礎(2)(4/25)
       神経間の情報伝達:シナプスの位置とシナプス後電位~ラスト
     脳科学の方法(1)その1
       最初~解剖学的研究:肉眼解剖学
第4回  脳科学の方法(1)その2(5/9)
       解剖学的研究:細胞構築学:~機能研究:単一ニューロン記録法
第5回  脳科学の方法(1)その3(5/16)
       機能研究:単一ニューロンの課題解説
     脳科学の方法(2)その1
       最初~プロトンの性質
第6回  脳科学の方法(2)その2(5/23)
       プロトンの性質~脳機能イメージング法:概要
第7回  脳科学の方法(2)その3(6/6)
       機能研究:電気信号~機能研究:PET
第8回  脳科学の方法(2)その4(6/13)
       機能研究:fMRI
     視覚系と解剖(1)その1
       最初~眼球と光受容:光の物理特性
第9回  視覚系と解剖(1)その2(6/27)
       眼球と光受容:眼球の構造~外側膝状体の構造
第10回  視覚系と解剖(1)その3(7/4)
       外側膝状体の機能~一次視覚野
第11回  視覚系と解剖(1)その3(7/11)
       一次視覚野のニューロンの特性~ラスト
      視覚系と解剖(2)
       最初~V2
第12回  視覚系と解剖(2)その2(7/18)
       背側経路~ラスト
第13回  聴覚系と解剖(1)(7/25,予定)
       最初~
第14回  体性感覚系と解剖(1)(8/1,予定)
       最初~

        




授業で紹介した情報


第1回  オリエンテーション
     脳と神経の基礎(1)
特になし.

第2回  脳と神経の基礎(2)(4/18)
特になし.

第3回  脳と神経の基礎(2)(4/25)
     脳科学の方法(1)その1
◎QA関連
 ・一家に一枚ヒトゲノムマップ



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Update 2023/07/24
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肢体不自由児等の教育課程と指導法2023(鳥取大学)

授業内容


第1回 オリエンテーション(4/12)
    肢体不自由の概要(1)
     最初~病因・疾患を知る利点
第2回 肢体不自由の概要(2)(4/19)
     肢体不自由の病理:一次障害~ラスト
    肢体不自由教育の歴史(1)
     最初~戦前の教育:柏学園
第3回 肢体不自由の概要(2)(4/26)
     戦前の教育:光明学校~戦後初期:養護学校数の推移
第4回 肢体不自由の概要(3)(5/10)
     戦後初期:重度・重複障害児への教育~義務制反対運動
第5回 肢体不自由の概要(4)(5/17)
     義務制以降:自立活動の成立~
    特別支援教育の現状と仕組み(1)
     最初~現状の数字
第6回 特別支援教育の現状と仕組み(2)(5/24)
     現状の数字(残り)~疾患の変遷
第7回 特別支援教育の現状と仕組み(2)(5/31)
     今日的課題~ラスト
    教育課程と指導上の特徴(1)
     最初~教育課程の類型
第8回 教育課程と指導上の特徴(2)(6/7)
     教育課程の類型~ラスト
第9回 指導計画の基本(1)(6/14)
     最初~授業づくりの基本:VOCA
第10回 指導計画の基本(2)(6/21)
      授業づくりの基本:BMI~ラスト
第11回 アクセシビリティ・支援技術(6/28)
      
第12回 自立活動の指導(1)(7/5)
      最初~心理的な安定:全項目
第13回 自立活動の指導(2)(7/12)
      人間関係の形成:項目詳細~自立活動の実践:ゆらぎのある評価
第14回 自立活動の指導(3)(7/19)
      自立活動の実践:身体の動きの指導の基本~ラスト
     脳性まひと動作法(1)
       最初~脳性まひ:強剛型
第15回 脳性まひと動作法(2)(7/26,予定)
      脳性まひ:失調型~




授業で紹介した情報


第1回 オリエンテーション(4/12)
    肢体不自由の概要(1)
特になし

第2回 肢体不自由の概要(2)(4/19)
     肢体不自由の病理:一次障害~ラスト
特になし
    肢体不自由教育の歴史(1)
     最初~戦前の教育:柏学園
特になし

第3回 肢体不自由の概要(2)
特になし


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Update 2023/07/25
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肢体不自由児等の生理・病理・心理2023(鳥取大学)

授業内容


第1回  オリエンテーション(4/12)
     肢体不自由の概要(1)
      最初~肢体不自由の病理:疾患と解剖・生理

第2回  肢体不自由の概要(2)(4/19)
      肢体不自由の病理:病因・疾患から症状を考える~肢体不自由の病理:全部
第3回  肢体不自由の概要(3)(4/26)
      肢体不自由の教育:目的~
     身体の構造と機能(概要)(1)
      最初~呼吸器:内呼吸・外呼吸
第4回  身体の構造と機能(概要)(2)(5/10)
      呼吸器:呼吸のコントロール
第5回  身体の構造と機能(概要)(3)(5/17)
      DNA~ラスト
     神経系の構造と機能(1)
      最初~血液脳関門とアストロサイト
第6回  神経系の構造と機能(2)(5/24)
      血液脳関門とアストロサイト~ニューロン:活動電位の生成
第7回  神経系の構造と機能(3)(5/31)
      ニューロン:活動電位の伝達~神経系のなりたち:脊髄と運動・知覚
第8回  神経系の構造と機能(4)(6/7)
      神経系のなりたち:脊髄と運動・知覚補足~脳幹
第9回  神経系の構造と機能(4)(6/14)
      神経系のなりたち:間脳~ラスト
第10回  感覚器の機能と構造(1)(6/21)
       最初~視覚器
第11回  感覚器の機能と構造(2)(6/28)
       聴覚器~ラスト
第12回  大脳の機能(1)(7/5)
       最初~第一次体性感覚野の特徴
第13回  大脳の機能(2)(7/12)
       第一次体性感覚野の特徴(2)~運動野
第14回  大脳の機能(3)(7/19)
       言語
      骨と筋肉の構造と機能(1)
       最初~骨:骨の機能
第15回  骨と筋肉の構造と機能(2)(7/26,予定)
       骨:造血~
      大脳の機能(4)
       高次機能?
第16回  期末試験,持ち込み不可(8/2,予定)

    


授業で紹介した情報


第1回  オリエンテーション
     肢体不自由の概要(1)
特になし.

第2回  肢体不自由の概要(2)
◎IQ関連
IQの補足情報

第3回  肢体不自由の概要(3)(4/26)
     身体の構造と機能(概要)(1)
特になし.


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Update 2023/07/25
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趣味的に一緒に研究したい人(緩募)

【緩募】心理学の実験研究を趣味的にやりたい人、とSNSで発信したところ、わりと食いつきがいい。
実際にコンタクトを取ってきた学生さんがいたりもする。
興味ある人、結構いるのかなーと思ったりしたので、今回はこれについて書いてみようと思う。

僕はもともと、心理学の実験をやって、その最中の脳活動測ったり、行動がどう変わったか、なんかを研究する人。
今はなんでも屋化していて、質問紙データを分析したり、子どもの観察をしたり、支援をしたりの研究もする。
基本的に研究は楽しい営みだと思っていて、興味のままに新しいことを明らかにしていくことにおもしろさを感じる人間。
これは、別に研究者に閉じられた話ではなく、一定数こういうのが楽しい・おもしろいと感じる人がいると思っている。
こういうタイプの人たちと、細々と共同研究できたらいいなぁ、というのが、「【緩募】趣味的にやりたい人」の意図。
多くの研究者は、共同研究者という一緒に研究する研究者がいるのだけど、それを研究者に限らずに考えている、と捉えていただけたらそう大きくははずれないと思う。

どういう人を想定しているか。
例えば、うちの卒論生や修論生が卒業後、細々と研究活動を継続したい、なんてのはど真ん中。
心理学系の学部や院を出て、その後仕事をしながら趣味的に研究したい、なんていうパタンもそう。
レベルに応じて、指導的なこともしながら、一緒に研究をしていきたい。
その先に、大学院進学なんてのもおもしろいと思う。
大学院の使い方としては理想的なパタン。

うちの学部生で、卒論で心理系の研究を考えているのだけど、もう早くからやりたい、というのはあり。
心理系の大学院進学を考えていて、学部の卒論とは別に心理系の研究がしたい、というのはなしではない。
心理学に興味があるので、なんとなくやってみたい、も同様。
ただ、心理学のバックグラウンドがない場合には、まずは書籍紹介からスタートということになると思う。
ある程度興味が定まったら、一緒に論文読んだり、やること考えたりのステージに進む。

少しだけ注意がある。
まず、研究にはかなりの時間を使う。
忙しすぎてあまり時間を使えないという場合は、研究が完成しない可能性があるので一緒に研究は難しいかもしれない。
特に学生さんで、学部の卒論とは全く別にやる、という場合は取れる時間との相談ということになる。
上級生でこれから卒論もある、みたいな場合は趣味的に研究は卒業後の方がいいと思う。
希望する人が、どういうバックグラウンドで、どういうモチベーションで、どういう状況にいるか、で変わるので、まあご相談いただいて。
共同でやる研究が論文発表までひとサイクル回せるかどうか、が判断のポイント。
一番困るのが、こちらの資源をたくさん使うものの研究が中途半端になり完成しないパタン。
僕の時間、研究費、場所の制約から、これはできるだけ避けたいと思っている。
ある程度のところまで回らないと、僕の側が楽しくない。
僕のモチベーションでない実験を組み立てて、結果を見て、データについてあれやこれや議論して、発表するからおもしろい。

もう一つ。
本務に影響が出ない範囲で一緒にやる、ということになる。
よって、時期によって僕の方があまり時間が取れない、ということもありうる。
仕事の忙しさ、結構波がございまして。
この辺りの事情をくんでいただければ幸い。

主に趣味的に心理学の実験研究、ということを書いたが、働いていて仕事上の問題意識から実験以外の共同研究をしたい、などがあればこれは別途ご相談いただければ。
心理系の方法論は網羅していると思うので、双方にとっていい形の共同研究ができそうなら、大歓迎。

以上、一緒に研究しよう、のお誘い記事でございました。
研究は楽しいですよ。
ではまた。




神奈川県のどこか。

-----
2023/02/26 16:20
そろそろ移動しようかと思う。
鳥駅スタバにて。


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Update 2023/02/26
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研究者の評価は難しい

今回は「大学教員の評価は難しい」の続き。

教員としての評価は確かに難しいが、研究者としての評価はできるのではないか。
研究論文の数を数えればいいだけだから。
研究業界では一般的に研究業績を使って研究者の評価は可能なものとして考えられている。
ただし、僕はこの考え方を支持していない。
今回はこのことについて書いていく。

一般的な研究業績の評価

一般的にはどのように研究業績の評価を行っているのだろうか。
まずは、論文や書籍の数を数えることが行われている。
今まで何本書いたか、ここ5年で何本書いたか。
そういった類。

質もみる。
論文は査読(審査)付きの学術雑誌に載ったのか、査読なしの学術雑誌に載ったのか。
英語で書かれたか否か。
査読付きの場合どの雑誌(雑誌ごとに難易度が異なるため)に載ったのか。
発表した論文はその後、別の研究にどの程度引用されたのか。
質もみるのだが、結局評価をして比較する必要上、数値に落とし込まれる。

それらの数値を「総合的に」評価している場合はまだいい。
「総合的に」という時点で、評価が難しいということをわかっている。
ただ、極端な研究者は、査読付き論文以外は評価しない、英語論文以外は評価しない、特定の雑誌に載った論文以外は評価しない、なんてことを言い出す。
特に、そういうタイプが役職者に就くと悲惨なことになる。

研究分野ごとに基準が異なる

まずはここから。
研究業績の評価基準は、研究分野ごとに大きく異なる。
年に数本、ポンポン論文を出していくような分野もあれば、じっくりと時間をかけて、数年に1本が普通という分野もある。
査読付きが、英語か否か、論文か書籍かについても、分野による。

これは、研究分野の特性による。
研究活動は、分野によってかかる時間が大きく異なる。
数ヶ月でデータ取りからまとめまで1サイクルが終わる分野もあれば、データ取得自体に数年単位の相当時間を要することもある。
英語で書くか否かもそう。
想定読者がそもそも日本人の場合や非研究者なんかが含まれる場合、日本語で書くのが適当。
例えば、日本文学の古典なんかの研究であれば、英語で書く意味はない。
日本の制度を念頭においた教育問題を扱っている場合なんかは、想定読者は研究者以外に現場の教員も含まれる。
この場合は英語で書くと、必要な読者に届かない。
雑誌の論文という形では紙数を取りすぎるため、書籍でまとめることが適当な場合もある。
査読なしの雑誌に自由に紙数を使って書いて、評価は読んでくれた他の研究者に任せるという考え方もあろう。
そんなわけだから、分野をまたいでの統一的な基準での数値評価は難しい。

それだったら、分野ごとになら可能かというと、やはり絶対的に基準を定めて評価するのは難しい。
その分野の中でも、時間や手間がかかる研究とそうでない研究が存在する。
例えば、僕の研究分野だと、発達を調べるために横断的(ある時点で各年齢のデータをとってくる)な方法は時間がかからないが、縦断的(1つの集団を何年も継続してデータをとってくる)な方法だと膨大な時間がかかる。
論文数は圧倒的に後者の方が少なくなるが、重要かつ必要な研究。
単純に数の大小で比較をすることができない。
おそらく各研究分野でも選択する方法論によって、こういう違いはあるはず。
よって、同じ分野であっても統一的な基準での数値評価は難しい。
ある程度内容を加味する必要がある。

量と質のトレードオフ

これはどんなものでもそうなのだが、量と質はトレードオフの関係にある。
質を気にしなければ量を稼ぐことができる。
一方で、質を高めまくれば量が犠牲になる。
この場合、論文数のみで評価を行うと、質を重視する研究者は損をするので、生産される論文は徐々に質の低いものばかりになる。
悪貨は良貨を駆逐する、ということ。

もちろん、そのあたりの問題をかわすための指標もある。
どんな雑誌に載せたか、その後どの程度引用されたか、の指標がそれ。
ただし、これにも問題点がある。
研究業績や分野ごとに、研究者人口や他の研究に与える影響の大きさが異なる。
盛り上がっている分野は引用数も、雑誌の格も高くなり、マニアックな分野ほどその数値は低くなる。
メジャーかマニアックかは質とは無関係なので、質の指標となり得ないことになる。
あくまで、同一分野・テーマ内での比較において質を反映することになり、これらが必ずしもすべての研究の質を絶対的に反映する指標とはなり得ない。

もっと難しいのは、質が高くて本数が少ない研究者と、質が低くて本数が多い研究者、どちらの方を高く評価すればいいのか。
これはもう個々の研究者の仕事哲学的な問題で、研究者間で一致した評価基準を設定できない。

研究業績は環境に依存する

研究者が所属している環境は多様である。
同じ研究分野でも、全ての時間を研究に使える人もいれば、他の業務の隙間時間でやっと研究を回している人もいる。
大学院生やスタッフがたくさんいて、人的なリソースが豊富な環境の人もいれば、1人で細々と研究する環境の人もいる。
研究費や設備が豊富な環境の人もいれば、どちらも劣悪で私費で研究を回している人もいる。
いずれの場合も、前者よりも後者の方が研究業績の期待値は低い。
恵まれた環境で年2本論文出している人と、劣悪な環境で年1本論文を出している人、全く同じ分野で同じクオリティの論文だと仮定しても、前者が研究者として優れていることにはならない。
しかし、評価を数値基準ベースで行うと、前者の人の方が評価される。
基本的に、このような環境の違いは数値化された時には出てこない。
こういう場合の評価もまた大変難しい。

1つの分野を深く型vs複数分野研究型

研究者は1つの分野で1つのことについて深く真理を追求しているタイプと、複数の分野で研究を行っているタイプがいる。
複数の分野で独立して研究を行っている者もいれば、複数の分野を融合させるような形で学際的に研究を行っている者もいる。
1つのことに集中しているタイプに比べて、複数分野研究型は情報収集に時間を取られるため研究業績は出づらくなる。
しかし、複合分野での研究や研究分野を跨いだ分野融合的な研究は重要。
そして、この場合、評価がまた難しい。
1つの分野・テーマで2本と、各分野・テーマごとに1本ずつの2本、同じ評価でよいのだろうか。
分野で評価した場合前者は2本、後者は1本となるが、本当にその評価は妥当なのだろうか。
分野ごとに評価基準が異なる場合はより複雑になる。
こうなってくると相対的な評価は不可能としか思えない。



と、まあ思いつく点についてつらつら書いてみた。
そんなわけで、研究者の評価は大変難しい、というのが僕の意見。
競争原理主義の人たちは評価したがるんだけど、無理な評価はやめておいた方が研究は発展すると思っている。
研究者は元々が研究好きなので、環境さえ整えれば放っておいても研究はする。

ではまた。




たぶん、鳥取市内。


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2023/02/05 17:30
コーヒー2杯目。
鳥駅スタバにて。


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Update 2023/02/05
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僕の研究変遷記〜学部編

先生の専門はなんですか?
時々聞かれて、わりと答えに困る質問。
今しか知らない人には一体なんの人なのか、よくわからないと思う。
授業は特別支援教育の制度の話から、ヒトの身体のことなどを担当しているし、研究は心理学とか脳科学とか言っている。
卒論生は、保育や福祉系の質問紙なんかもやっている。
いやー、我ながらよくわからない。
そこで、自己紹介的な、研究遍歴のシリーズを書いてみようと思った。
今回はその学部編。

まず。
学部は教育学部の情報系。
中高数学の免許が取れて、数学と情報が学べる場所。
情報系は当時はたくさんの学部学科があったのだけど、その中でも幅広く科目設定があるところ、というのが選んだ理由だった。
当時は仮面浪人をしていて、国立大工学系学部に在籍、電気電子工学を専攻していた。
そんなわけで、大学を中で見て新たに大学選びをした、ちょっと特殊例だと思う。
教養も含めて自由に学びたかったので、強制的に学ばせるようなスタイルの学部学科も除外した。
入る前からリベラルアーツを意識していて、学部は幅広く、専門は大学院で、という考え方を持っていた。
各大学からカリキュラム表を取り寄せ、目的に合致するところを選ぶと、全国に2つ3つしか選択肢がなく、そのうちの1つに入学した。

学部では、大変幅広く学んだ。
授業以外でも本をたくさん読んだ。
数学、情報、を学ぶ中で、ヒトの情報処理という観点から心理学や情報科学脳科学に興味を持った。
色々と学んでいくうちに、専門性としては「ヒトの情報処理」を中心としたものになっていった。
ただ、あくまで学部では教養を、というのが頭にあったので、それ以外もだいぶ読んだ。

学部も高学年になってくると、読む本は心理学や神経科学系の本が増えてきた。
それでも3年生くらいまでは大学院で選ぶ分野が絞りきれておらず、情報科学系の専門書も読んでいた。
プログラミングも多言語勉強していて、これが大学院以降、隠れた技術として役にたつことになる。
が、それを目的に勉強していたわけではなく、あくまで学ぶこと自体を目的とした勉強だった。

卒論の研究室は、情報科学について幅広く、好きにできるところだった。
同期は、OS作ったり、ネットワークのことやったり、情報教育のことやったり、本当に幅広かった。
僕のテーマは、ヒトの視覚情報処理に関するもので、ある視覚刺激(ある立体の影)を見せて立体視の起こり方を調べる心理学的な研究だった。
内容はたいしたことない。
が、ゼロからほぼ自力で組み立ててやり切ったものでもあった。
おかげで、視覚情報処理については、わりと詳しくなった。
後年、この内容を授業で教えることになろうとは、当時の僕は考えもしていない。

大学院での専門分野は数学、情報科学神経科学、認知科学認知心理学あたりを考えていた。
早い段階で数学が落ち、3年生の中盤くらいで情報科学が落ちた。
結局、認知科学神経科学が生き残り、4年生の頃には神経科学に落ち着いた。
ただ、この時点では神経科学のどの分野、というのはあまりなく、行った先でやってみて考えればいいや、と考えていた。
周りに院進学組がいなかったせいもあり、このあたりは今考えると冒険的だったと思う。
結局合格した大学院をいくつか見学して、サルを中心とした認知神経科学の研究室を選ぶことに。
おそらく、この選択をしていなかったら今頃この仕事にはついていなかったと思うから本当に不思議。
が、この話は今回は詳しく書かない。

そんなわけで、大学院修士課程へと進学する。
続きは、また次回。
ではまた。




飛行機。
どこで撮ったかはしらん。

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2023/03/11 13:29
のんびりモード。
鳥駅スタバにて。


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Update 2023/03/11
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