週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

太平洋戦争のお話

僕は時々戦争の本を読む。
これには理由がいろいろあるのだが、一番はなぜ戦争をするのかよくわからないから。
これを知りたくていろいろと本を読むのだが、なかなか答えには行きつかない。
戦争をする、犠牲の大きさに嫌になる、戦争はダメなものと認識する。
でも、なぜか再び繰り返される。
歴史をながめているとずーっとこうなので、歴史を深く読んでいけば何か見えてくるのではないか、と思っている。

が、今回は戦争の中でも、特に太平洋戦争の話。
この戦争については大変不思議に思っている。
この戦争、現代の多くの人が無謀だと考えている。
なのに、戦争に突入して行った。
なんでなんだろうか。
昔からものすごく不思議でたまらないんだ。
時の指導者はどうやって戦争を終わらす気だったのか。
目的はいったいなんだったのか。

ただ、これ。
読んでも読んでもよくわからない。
だいたい、時の指導者は米国の高い工業力を知っていたフシがある。
短期的にはおせるが、長くは難しい。
開戦前からそう考えている中枢の人はいたらしい。
英米留学組もたくさんいて、その人たちは当然そういう意識だったとか。
それでも戦争に突入する。
しかも、どうやったら勝ちとするのか、その戦略がよく見えないんだ。
かろうじて、ドイツが勝つことで日本も勝つ、という細い筋のストーリーがあったようなのだが、あまりにも希望的すぎる。

さらにわからないのは、なぜ戦争が続いたかということ。
特に最後の1年は勝ち目のない不必要な1年だったと思っている。
なぜかというと、終戦1年前の1944年6月マリアナ沖海戦というので日本海軍は空母全部を失い、南太平洋の制海権も制空権も失っていたから。
こうなると、この地域に侵攻されて基地が建設されることでB-29の航続距離内に入り本土が爆撃されてしまう。
この時点で反撃の糸口にどんなものがあったのか、多くの歴史書を開いても出てこないし、戦略のないかなり苦しい作戦ばかりが展開されていく。
頼みのドイツはどうかといえば、この時点で劣勢で翌1945年5月には負けてしまう。
この時点で勝つシナリオはないわけだ。
それでも戦争はダラダラ続いていく。
空襲で多くの街が焼け野原にされ、沖縄を攻められ、原爆を2つも落とされ、満州に攻め入られ、下手をすれば戦後我が国が北と南に別れてしまいかねない状況に陥る。
国内での戦争犠牲者の多くが最後の1年半に集中していたらしいので、続けても意味のない戦争のせいで犠牲者が増えたとも言える。
そんなわけだから、特に後半の戦争がなぜ続いたかの理由を知りたいと思っているが、今のところ合理的な理由にはたどり着けていない。
見通しが甘い中で戦争につながる様々な出来事が積み重ねられ、失敗に気づいても後戻りや修正をせず、最終的に大した覚悟も戦略もなく戦争を始めたら、やめられなくなってしまった。
今のところ、そんな風にあの戦争を捉えている。

あの戦争のことを考えるのは、純粋な興味からだけではない。
戦争が悪いという意識が共有される中で戦争が繰り返されるということは、戦争には何か原理のようなものがあって起こりやすいものなのではないか、と思っているから。
もしそうだとすれば、現代にだって起こりうる。
そういう意味では学ぶべきよい教材。

あの戦争は軍部が悪い的な論を聞くことがあるが、僕はそれだけではないと思っている。
あの時代、大正デモクラシーがあり、限定的ながら民主主義は導入されていた。
世論を全く無視ということはやはりできないはずで、そんな仕組みの中で少しずつ戦争に向かっていったということは意識しておかなければいけない思っている。
例えば、軍国主義に利用される治安維持法なんかは政党政治の下で誕生している。
もともとは共産主義を防ぐための法律だったが、これが別目的で使われていくわけだ。
のちの戦争の引き金のひとつになる満州事変にしても、新聞は軍部支持が多かったという。
新聞の先には国民がいる。
読者に支持されない論調の記事は書きにくいことを考えてみると、当時の世論がどんなものだったか想像できる。
ドイツのナチスだって、民主主義の仕組みの中から誕生しているわけだしね。

今の日本は民主主義で動いているわけなので、最終的には僕ら一人一人に責任があるはず。
それに民主主義な現代でも気を抜くと戦争は起きかねない。
まあそんなわけで、たまには歴史に学んでおくのも悪くないんじゃないかな、というお話。




銀座かな。


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2018/08/21 12:17
休憩中。
鳥取市内にて。


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Update 2018/08/21
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研究をしよう No.1 はじめに

卒論生・修論生、ゼミ、研究系の実習の授業で、研究ってなぁに?論文ってなぁに?という話をよくする。
せっかくなのでその話を記事としてまとめてみようと思う。
なるべくどの分野にも通じるようなことを書くつもり。
ただ、ボクもせまい専門分野で生きている人間で、あらゆる専門分野に精通しているわけではないので、ある分野ではちょっと違うというようなことを書いてしまうかもしれない、というのはあらかじめお許しいただければうれしい。

内容としては、研究論文とは何か、検索の方法などのテクニカルなこと、論文の読み方、その他大切なことをトピックごとに書いて行く予定。
ボクの教えている学生さんをはじめ、研究がなんだかようわからんという学生さん、研究に興味あるそれ以外の方にも読んでいただき、なにかの役に立てたらいいな、と思っている。




工場地帯って、なんか好きなんだ。
川崎の工場地帯にて。


研究をしよう 2 へとつづく


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2018/07/19 23:39
そろそろ寝ようかという頃。
自宅にて。


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Update 2018/07/19
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英語(なぜ学ぶのか、何を学ぶのか 4 )

このシリーズもはじめに含めて4回目。
教養、読む力に続いて次は、英語。
意外に思われた方も多いかもしれないが、
これは教養にも読む力にも通ずる大事なスキルだと思っている。
さて、そのココロは。

英語が使えるとかなり世界が広がるのだ。
考えてもみよう。
世の書物もホームページも論文も、
情報という情報は日本語よりもそれ以外で書かれたものが多いのだ。
その中でも英語は使っている人が多い。
ここから情報を取れない、というのは大変もったいないと思わないだろうか。
これに加えて発信やコミュニケーションができたらさらに世界が広がる。
でしょ?
時々学生さんが英語だからこの論文は読まない、というのを見てこれはもったいないなぁ、とつくづく思うんだ。
そしてこの能力はかなりつぶしがきくので、社会に出てから研究以外のシーンで大変役に立つ。

ここでいう英語力というのは、TOEICの得点とか英検何級とかそういうのをさすわけではない。
英語から抵抗なく情報をとれる、を指す。
別に辞書を使っても少しくらい時間がかかってもいい。
最初から英語をシャットアウトするのではなく、苦手なら苦手なりに情報をとれるようになれればまずはよしだと思う。
もちろんその延長に、スラスラ読める、情報発信、コミュニケーションなどがある。
そこまで進めればよりよい。

いや、待ってくれ。
自分は英語は苦手すぎて出来るようになるとは思えない、という学生さん。
大丈夫、語学についての経験は裏切らない。
かけた時間数、読んだ文章の数だけ、使えるようになる。
もちろん伸びやすい人伸びにくい人というのはいるが、伸びにくい人も過去の自分と比べるとちゃんと伸びていく。
苦手だ!と言っている人で英語をコツコツやった人にはあまり会ったことがない。
まずは英語の簡単な本を数冊読んでみてから、英語できないと言ってみたらよいと思う。

じゃあどうやって勉強するか。
これは僕は専門じゃあないので、経験談でのアドバイスしかできない。
なので、専門的な方法論についてはその道の先生なり書物なりに譲る。
ただ、がんばっているのにうまくいかない人にはいくつか特徴があるように思う。

ひとつ目は発音を軽視している。
昔の僕がこれだった。
しかし言語は音声が先で、文字は後から発明されたもの。
発音の基礎がしっかりしている方がいろいろと楽だと思う。
綴りの覚え方も発音に基礎を置いたものがあるので、そいつを使えないというのは非効率。

2つ目は受験型勉強法に終始しているパタン。
これは少し出来る層に多いか。
この人たちはTOEICのスコアを伸ばすとか英検をパスするために過去問ばっか解いていて、これを英語の勉強と勘違いをしている。
これはテストの得点は高いのだけど、語学力という意味では得点ほどではない。
このタイプは、テストのテクニックを習得後テスト得点が伸び悩んでしまう人が多い印象。

で、もう一つがコツコツできないタイプ。
語学は毎日少しずつでも、コツコツやることが大事。
やろうと決めたものの、気づくと2ヶ月英語読んでない!ということがある。
そんな人も多いのでは?

じゃあどうやったらいいの、という方。
特別なことは何もいらなくて、本当にコツコツと毎日やるだけ。
僕の場合は最初はNHKのラジオ英会話と大学の授業に基礎をおいた。
NHKの講座は安くてクオリティ高いのですごくおススメ。
最初はやさしめの講座にして、あとは例外なく毎日聞く。
これだけで1年後はかなり聞けるようになる。
もし可能なら電子版のデータを買って、音楽プレーヤーに入れて繰り返し聞いてみるとまたよい。
大学1,2年生なら授業も使える。
英語の授業は週1であるので、教材を予習がてら全部和訳していく、それだけでコツコツ読んだことになる。
テスト勉強なしで単位が取れるおまけ付き。

次にやったのが読みまくること。
語学は多読と精読だと聞いたので、数をこなした。
これで役に立ったのが、 Oxford Bookworms Libraryシリーズ
こいつは自分の語彙力に合わせて文を作ってくれているので、レベルにあった本であればあまり辞書で調べることなく読み進められる。
数冊読むとね、ちょっと読めるようになるのだよ。
ある程度読めるようになれば、むこうの児童書を原書で読んでみるのもよい。
僕はハリーポッタードリトル先生をいくつか読んだ。
最近は電子版なんかもあるから、iPadあたりで読んで辞書もiPad英辞郎(アプリ)あたりを入れておけばどこでもサクサク読める。
いい時代だね。
3,4年生であれば専門の英語論文でもよい。
ゼミで発表とかを考えると精読になるし、専門の勉強にもなる。
大学だとかなりの国際学術誌がタダでダウンロードできちゃうし。
英語の教科書も悪くない。
あっちの教科書はカラフルで本当におもしろい。
専門分野の教員に相談するとその分野の名著と呼ばれる教科書を紹介してくれる。

さあ、ここまで読んでも自分には出来ない、と思っている諸君。
実は僕もそうだった。
僕の中高までの英語レベルは本当にひどかった。
中学の時は下から数えた方が早い得点だったし、高校の時には先生から出来なすぎて呆れられたくらい。
高校の時には偶然追試を免れたら同級生達からカンニングを疑われた程、本当にできなかった。
英語を使う仕事には就かない!と勝手に決めていた。
今の英語力は大学に入ってから得たもの。
今でも得意ではないけれども、抵抗感がないくらいまでには持っていくことができた。
この記事を誰に1番読ませたいかといえば、勝手に英語を諦めきっていた若き日の自分。
そんなわけだから、まあ、君らもがんばれ。




羽田空港にて。


なぜ学ぶのか、何を学ぶのか 5 へとと続く


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2018/08/04 17:40
読書時々書き物。
丸の内スタバにて。


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Update 2018/08/04
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読む力(なぜ学ぶのか、何を学ぶのか 3 )

さて、次に身につけておきたいのは「読む力」。
これは大変大事。
なのにもかかわらず、これが身についていない学生さんは意外と多い。
本自体をあまり読まない学生さんがわりといるので、大学でこれを磨かず出て行く人も多いんじゃないかな。
これは量をこなさねば身につかない。
そして、社会に出てからはその量をこなす時間がそんなに取れなくなる。
大学生のうちになんとかしたい。

さて、この能力。
汎用性がきわめて高い。
教養を身につけるためにも必要だし、専門的知識を入れるのにも必要。
教養は将来どれが役に立つかはわからないものだったが、読む力は確実に将来武器になる。
どの分野に進もうが、専門知識を文字から仕入れるという方法の占める割合は大きい。
教養を深めるのにも本の果たす役割は重要である。
時事ネタを入手するのにも文字の情報は無視できない。
また、いずれ本シリーズでも触れる予定の「書く力」の基礎にもなる。
なので、読む力が高いと色々と役に立ってくれそうなのは想像に難くない。
それどころか、読む力が弱いとかなりの不利にすらなりうる。
読む力がいかに大事か、わかるだろう。

そんな読む力には様々なものがある。
難解な専門書から一般の教養書まで、理解して情報を仕入れる力。
読む速さもひとつかな。
上記2つは当該分野の既有知識や本を読んだ経験数と比例する。
文字に対する苦手意識の克服や自信なんかもそう。
高度な読む力としては、ロジカル性を意識した読み、批判的な読みなどがあるが、これについてはまた別立てで書く。

さあ、ではコイツをどうやって磨のか。
授業の課題で読んでいるから大丈夫、というのは甘い。
全然足りない。
これはもう、意識的に本を読むようにするしかない。
本はなるべく自分のレベルにあったものがよい。
難しすぎるとしんどいし、簡単すぎると読む力を伸ばす意味ではあまり役に立たない。
最初は自分の興味ある分野、少し詳しい分野あたりからはじめるのもよいか。
こういう分野はやはり読みやすい。

いざ、読みはじめると陥るのが、難しくてよくわからない、というもの。
調べながら読むのも悪くないが、こういう場合、とりあえず全部読んでみる、というのがオススメ。
最後まで読むとわからなかった箇所がなんとなくわかる場合もある。
一度最後まで流した上で、もう一度読み返してみるとわかることもある。
どうしてもよくわからなくて、でも内容を理解したいという場合は類書を読んでみるというのもよい。
数をこなしているうちに本の難しさは少なくなっていくと思う。
時々、読む速度が遅いんです、というようなことを聞くこともあるが、これも数をこなすと確実に早くなる。
新書を読むのに数日かかってた学生さんが、4年後には1冊半日で読み切ってしまうなんてことも。
経験は裏切らない。

さて。
ではどの程度まで読めるようになっていればよいのか。
ごく個人的な基準だが、専門分野は専門書クラスが、専門外の分野は新書クラスが抵抗なく読めるようになれるとよいと思っている。
このくらい読めれば、社会に出てから本経由でさまざまな情報を入れることができるようになる。
人生のどんな局面でも使えるので、ぜひ身につけてほしい。




松江にて。


なぜ学ぶのか、何を学ぶのか 4 へとと続く


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2018/07/25 07:40
出勤中。
鳥取ドトールにて。


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Update 2018/07/25
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本の紹介,「カレーライスを一から作る(前田 亜紀(著),ポプラ社)」

カレーライスを一から作る
前田 亜紀(著)
難易度:☆


カレーライスを一から作る
どんなことをイメージするだろうか。
市販のルーを使わず香辛料の配合からゼロベースで作る、というのを思い浮かべる人も多いことと思う。
僕も最初はそう思った。
が、違う。

この本の一からとは、材料も含めて一から、を指す。
じゃがいも、にんじんはもちろん、お米、お肉、食器にいたるまで、すべてを一から作る。
とある大学でそんなゼミがあり、1年かけてカレーを作るだという。
その1年をノンフィクションとしてまとめたのがこの本。
これがすごくおもしろかった。

ただただカレーを作るという、それだけの内容な気がするが、そうではない。
例えば、じゃがいもを作るにしても、複数種類を植える。
なぜか。
化学肥料を使わずに育てるため、成長が思わしくない。
どうするか。
育てていた鶏を食べたくなくなる。
どう考えればよいのか。
取り組みの中から生じるさまざまな問いを通じて、いろいろな事柄の深い理解と思考を促す。
これがおもしろい。
自然を相手にした取り組みが多いので、壁にぶち当たることもしばしば。
その度に学生さん各々が苦悩し工夫し乗り越えていくのがまたおもしろい。
そんな内容。

どんな先生がこんな取り組みをやっているのかと思ったところ、主催している関野吉晴さんは探検家という肩書きだそう。
なるほどな、と思った。
この授業は僕にはできない。
基本的には前にでず、道筋は学生さんに考えさせ、学生さんと一緒に汗をかく。
そんなスタンスで取り組んでいるようで、それが心地よかった。
この本でも本人はほとんどと言っていいほど前に出てこない。
ああ、こういう授業よいな、と思う一方、このタイプの大学教員はどんどん少なくなるんだろうな、とも思った。

学生諸君はじめ、いろいろな人に読んで欲しいと思った一冊。
小学生でも読めるように漢字にはある程度ルビが振ってあるため、幅広い年齢層の人が楽しめる。
ちなみに、書いたのは関野さん本人ではなく、ドキュメンタリー映像の作り手・前田亜紀さん。





夏、ですなぁ。
島根のよさげな和カフェにて。



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Update 2018/07/28
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教養〜自分の幅を広げよう(なぜ学ぶのか、何を学ぶのか 2 )

大学で学んでほしいことを書くこのシリーズ。
最初に何を持ってこよう、と悩んだのだが、やはりこれかな。

僕は高校生や新入生と話す時、時々こういう質問をする。
君は大学で何を学びたいと考えてるのか。
そして質問の答えはたいていこう。
専門的な知識を身に付けたい。
××になりたいのでそのための勉強をしたい。
そして、本当にそういう大学生活を送る学生さんがたくさんいる。

これ。
一見当たり前の答えのような気がするが、僕はちょっともったいないと思っている。
大学とはどういうところなのか。
専門学校とは何が違うのか。
立ち止まってよく考えてみたい。

僕が考える大学と専門学校との大きな違いは2つ。
ひとつ目は新しい知識を作っている場所であること。
研究活動がこれに当たる。
で、もうひとつが、教養を深めることができる点。
大学には多種多様な専門家がいるので、色々な分野について見聞を広げることができる。
高校までに学ぶことができないおもしろい分野がたくさんあって、コイツに触れることができるのが大学の醍醐味。
もちろん高校までに習った分野について、自分の専門とは関係なく深めていくなんてこともできる。
せっかく大学に入ったのならば、この2つにしっかりと触れないのはとてももったいないと思うのだ。

で、今回は研究じゃなくて教養の話。
こういう話をするとよく言われるのが、専門分野とか目指す職業に関係ある分野にしか興味ない、というもの。
これは本当にもったいない。
なんで、知りもしない未知の分野のことを興味ないと言い切れるのか。
知ってみたら意外とおもしろくて、将来の自分を大きく変えるかもしれない。
文系だから苦手、理系だから苦手、という先入観を持った分野も、やってみると実はできるかもしれない。
大学受験のための勉強と知的好奇心を満たすための自由な学問は違うので、わりと楽しめてしまうかもしれない。
最初から視野を狭めず、いろいろとやってみたらいいと思っている。

それからもうひとつよく聞く言い分が、将来役に立たない、というもの。
これもおかしい。
だいたい何が将来役に立つかなんて、誰にもわからない。
確かに数学の教員になるのに、栄養学や法律の知識はいらないかもしれない。
でもね。
数学の教員やってみたら、ちょっと違ったってなるかもしれない。
仕事は好きなんだけど重労働すぎてやめたくなるかもしれない。
そんなときに思いがけず役に立つのが、専門とは全く関係ない知識だったりするのだ。
つまり、教養ね。
もし、ある専門分野のことしか知識がなかったら、その分野で行き詰った時はもう悲惨なのは想像に難くない。
こういう時に真価を発揮して、選択肢を増やしてくれるのが、昔はなんの役に立つかわからなかったいろいろな知識だったりするのだ。

例えば僕の場合だと、大学時代にきっと将来役に立つことはないんだろうなー、と思っていたプログラミングは働きはじめてから仕事の効率化にかなり役に立っている。
数学は思いがけず研究の分析を理解するのに使うことになった。
学部時代、全くの興味で手に取った脳科学の本は、僕の今の進路を決定づけた。
司馬遼太郎から学んだ幕末史は、旅をおもしろくしてくれるし、近代史をきちんと学ぼうという動機づけをくれた。
もちろん、将来これは役に立つかも、と学んだもので役に立ったものも多いが、
将来役に立つという視点が全くなかった少なくないものたちが、ひょんなことから役に立ったり楽しさを生んでくれたりしている。

こんな感じで、教養というやつは人生において選択肢を増やしてくれるのは間違いない。
それは人生において重要なものかもしれないし、ただただ楽しい、というようなものかもしれない。
苦難の時に助けになってくれるかもしれないし、意識はしてないが考え方の土台になっているかもしれない。
ただ、どんなものであってもその分だけ人生は豊かになると思うんだ。
まあ、将来の自分に向けて、多種多様なタネを蒔いておくようなもんか。
何が生きるかは、将来のお楽しみ。
生きなくても育ったそいつ自身が素敵かもしれぬ。

じゃあどうやって教養を養うのか。
これは一概には難しい。
そもそも教養って何か、が、難しい。
でもあえてあげるなら、基本はやはり本か。
授業を聞いて少しおもしろいと思ったらその分野の本を1冊読んでみる。
最初は新書あたりがオススメ。
それでそいつがおもしろかったら、その分野の少し難し目の本に挑戦してみよう。
せっかく大学にいるのだから、教員あたりにおもしろい本を紹介してもらうというのもよい。
大学教員は本を読む人が多いので、専門以外でもおもしろい本を教えてくれるかもしれない。
友だちから紹介してもらうというのもよい。

本を読むようになると興味に偏りが出てくる。
なので、数冊に1冊は自分が読んだことない分野の本を選ぶようにすると幅が広がる。
僕がよくやるのは、本屋の新書・文庫本コーナーに行って、はじめての分野やはじめての作家を買ってくるというもの。
何冊かまとめて買っておいて、専門や興味ある分野の本が続いたら、そういう本を挟むようにしている。
ハズレなこともあるが、アタリをひくとすごく嬉しい。

教養を養うのは本のみではなくて、映画や講演、人に話を聞くなど様々な方法がある。
映画などで情報を仕入れて、それにまつわる本を読む、なんてのもよいかもしれない。
その逆もまたしかり。
学生時代より教養を磨く時間が取れるのは、おそらく定年になるまで来ないので、やはり大学生のうちにしっかり磨いておきたいもの。




川崎市内のどっかで撮ったやつ。


なぜ学ぶのか、何を学ぶのか 3 へと続く


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2018/07/14 18:17
今日は暑かばい。
鳥駅ドトールにて。


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Update 2018/07/14
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質問などで研究室に来る学生さんへ

研究室に行ったけどいなかった。
一体いついるのか。
こういう質問をよくされるので、会う方法・会えるコツを書いてみました。
会いたい学生諸君は参考にしてください。
しかし、そんなにいないかなー、。
他の教員に比べるといる方だと思うだけどなぁ。

(1)まずは予定を確認
以下のページで時間割などの予定を公開しているので確認してみてください。
仕事の予定のページ(ホームページのトップからも行けます)。
時間割表に授業や会議、と書いてあれば、どうしようもありません。
あきらめましょう。
授業予定の下にある、「出張、不在時の最新情報」を見ると、最新の出張や休暇の情報が出ており、いつ帰ってくるがわかります。

(2)予定はないのにいない場合
電気が全部消えており、明らかにいなそうな場合は、出勤前か帰宅後か長い間会議等で抜けているか、になります。
半分電気ついているが鍵がかかっている場合は、ちょっとした用事で抜けています。
通常1-2時間以内に戻ります。
全部電気がついている場合はその辺にいます。
すぐ戻る心づもりで何かしてます。

(3)ツイッターで呼びかけてみる
せっかく来たので会えるなら会いたい、という場合は手っ取り早くツイッターで呼びかけてみましょう。
この際、名前と要件は忘れずに。
「誰の誰べえで、ペケペケ論の授業の質問に来たのだけど、いつ来るのか。」みたいな感じで。
すぐ戻れる場合は戻りますし、いつくらいなら大丈夫かという返事をする場合もあります。
返事がない場合は取り込んでるか、携帯ほったらかしかのいずれかです。

(4)アポを取る
僕の場合は学生さんであればアポなし訪問で構いません。
別に質問でなくてふらっと遊びに来る類のものでも歓迎します。
が、確実に会いたいのであればアポを取っておくのがおススメです。
特に、試験前は混みます。
予定がなければ研究室にいないこともあります。
アポがあるとそれに合わせて動くので、確実に会えます。
また、アポがある場合はそっちが優先されます。

以上、参考にしてください。



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Update 2018/07/17
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