週刊雑記帳(ブログ)

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教養〜自分の幅を広げよう(なぜ学ぶのか、何を学ぶのか 2 )

大学で学んでほしいことを書くこのシリーズ。
最初に何を持ってこよう、と悩んだのだが、やはりこれかな。

僕は高校生や新入生と話す時、時々こういう質問をする。
君は大学で何を学びたいと考えてるのか。
そして質問の答えはたいていこう。
専門的な知識を身に付けたい。
××になりたいのでそのための勉強をしたい。
そして、本当にそういう大学生活を送る学生さんがたくさんいる。

これ。
一見当たり前の答えのような気がするが、僕はちょっともったいないと思っている。
大学とはどういうところなのか。
専門学校とは何が違うのか。
立ち止まってよく考えてみたい。

僕が考える大学と専門学校との大きな違いは2つ。
ひとつ目は新しい知識を作っている場所であること。
研究活動がこれに当たる。
で、もうひとつが、教養を深めることができる点。
大学には多種多様な専門家がいるので、色々な分野について見聞を広げることができる。
高校までに学ぶことができないおもしろい分野がたくさんあって、コイツに触れることができるのが大学の醍醐味。
もちろん高校までに習った分野について、自分の専門とは関係なく深めていくなんてこともできる。
せっかく大学に入ったのならば、この2つにしっかりと触れないのはとてももったいないと思うのだ。

で、今回は研究じゃなくて教養の話。
こういう話をするとよく言われるのが、専門分野とか目指す職業に関係ある分野にしか興味ない、というもの。
これは本当にもったいない。
なんで、知りもしない未知の分野のことを興味ないと言い切れるのか。
知ってみたら意外とおもしろくて、将来の自分を大きく変えるかもしれない。
文系だから苦手、理系だから苦手、という先入観を持った分野も、やってみると実はできるかもしれない。
大学受験のための勉強と知的好奇心を満たすための自由な学問は違うので、わりと楽しめてしまうかもしれない。
最初から視野を狭めず、いろいろとやってみたらいいと思っている。

それからもうひとつよく聞く言い分が、将来役に立たない、というもの。
これもおかしい。
だいたい何が将来役に立つかなんて、誰にもわからない。
確かに数学の教員になるのに、栄養学や法律の知識はいらないかもしれない。
でもね。
数学の教員やってみたら、ちょっと違ったってなるかもしれない。
仕事は好きなんだけど重労働すぎてやめたくなるかもしれない。
そんなときに思いがけず役に立つのが、専門とは全く関係ない知識だったりするのだ。
つまり、教養ね。
もし、ある専門分野のことしか知識がなかったら、その分野で行き詰った時はもう悲惨なのは想像に難くない。
こういう時に真価を発揮して、選択肢を増やしてくれるのが、昔はなんの役に立つかわからなかったいろいろな知識だったりするのだ。

例えば僕の場合だと、大学時代にきっと将来役に立つことはないんだろうなー、と思っていたプログラミングは働きはじめてから仕事の効率化にかなり役に立っている。
数学は思いがけず研究の分析を理解するのに使うことになった。
学部時代、全くの興味で手に取った脳科学の本は、僕の今の進路を決定づけた。
司馬遼太郎から学んだ幕末史は、旅をおもしろくしてくれるし、近代史をきちんと学ぼうという動機づけをくれた。
もちろん、将来これは役に立つかも、と学んだもので役に立ったものも多いが、
将来役に立つという視点が全くなかった少なくないものたちが、ひょんなことから役に立ったり楽しさを生んでくれたりしている。

こんな感じで、教養というやつは人生において選択肢を増やしてくれるのは間違いない。
それは人生において重要なものかもしれないし、ただただ楽しい、というようなものかもしれない。
苦難の時に助けになってくれるかもしれないし、意識はしてないが考え方の土台になっているかもしれない。
ただ、どんなものであってもその分だけ人生は豊かになると思うんだ。
まあ、将来の自分に向けて、多種多様なタネを蒔いておくようなもんか。
何が生きるかは、将来のお楽しみ。
生きなくても育ったそいつ自身が素敵かもしれぬ。

じゃあどうやって教養を養うのか。
これは一概には難しい。
そもそも教養って何か、が、難しい。
でもあえてあげるなら、基本はやはり本か。
授業を聞いて少しおもしろいと思ったらその分野の本を1冊読んでみる。
最初は新書あたりがオススメ。
それでそいつがおもしろかったら、その分野の少し難し目の本に挑戦してみよう。
せっかく大学にいるのだから、教員あたりにおもしろい本を紹介してもらうというのもよい。
大学教員は本を読む人が多いので、専門以外でもおもしろい本を教えてくれるかもしれない。
友だちから紹介してもらうというのもよい。

本を読むようになると興味に偏りが出てくる。
なので、数冊に1冊は自分が読んだことない分野の本を選ぶようにすると幅が広がる。
僕がよくやるのは、本屋の新書・文庫本コーナーに行って、はじめての分野やはじめての作家を買ってくるというもの。
何冊かまとめて買っておいて、専門や興味ある分野の本が続いたら、そういう本を挟むようにしている。
ハズレなこともあるが、アタリをひくとすごく嬉しい。

教養を養うのは本のみではなくて、映画や講演、人に話を聞くなど様々な方法がある。
映画などで情報を仕入れて、それにまつわる本を読む、なんてのもよいかもしれない。
その逆もまたしかり。
学生時代より教養を磨く時間が取れるのは、おそらく定年になるまで来ないので、やはり大学生のうちにしっかり磨いておきたいもの。




川崎市内のどっかで撮ったやつ。


なぜ学ぶのか、何を学ぶのか 3 へと続く


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2018/07/14 18:17
今日は暑かばい。
鳥駅ドトールにて。


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Update 2018/07/14
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