週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

教員養成と研究振興のはなし

僕は現在、教員養成に携わっている。
そのため、教員が将来の選択肢である学生さんや、その養成に携わっているさまざまな大学教員と話をする機会が多い。
そして、これら方々から、気になることを聞くことがある。
教員養成に理解がない、それどころか、自分の研究室の学生が教員免許状を取ることを好ましく思っていない大学教員がいるらしいのだ。
これは所属校に限った話ではなく、開放性と言われる方式(教員養成が主ではなく、学部学科の希望する一部学生のみに教員養成をして免許状を出す方式)で教員養成をしている大学・学部で共通して聞かれる話。
ひどい場合だと、教職必修科目の時間にゼミを開講したり、取るなと圧力をかけたりする事例を聞いたりもする(所属校の話ではない)。
そこで、今回はこれについて書いてみる。

特に、研究にとって教員養成は邪魔だ、こんなふうに思っている先生に届くといいな、と思っている。
確かに教員免許状をとる学生さんは、そこに時間が取られてしまうため、研究に使える時間が減ってしまう。
これは短期的にみると研究の進捗にとってマイナスである。
ただ、長期的に見ると研究分野全体について大きくプラスになると思っている。

まず。
なぜ研究室の学生さんが教員免許状を取ることを嫌がるのか。
理由はわりと単純で、学生さんが専門分野の勉強や研究に充てる時間が減るから。
教員免許状を取得するには、その学部学科の専門科目に加え、免許状取得に必要な科目を取らなくてはならない。
道徳や特別活動、特別支援教育など、どの校種・科目であっても教員をやるにあたって必須となる知識は結構ある。
よって、本来研究に専念できる上級生であってもこれらの科目の履修が必要になる場合が多い。
また、教育実習など、一定期間研究が全くできなくなる時期も出てくる。
これらが研究に影響する、のを嫌うという場合が多いのではないだろうか。
別に嫌っていないが、ゼミの時間を教職系科目に配慮しないで設定する、という場合もあろう。

特に、教員の研究プロジェクトの中から、学生にテーマを渡して研究室を運営している場合。
研究が進まないと研究室運営上困る。
研究プロジェクトがポシャると、次の研究費獲得が困難になり、結果次の代の学生教育に影響する、ということになりかねない。
そんなことに学生を巻き込むなよ、という意見が出てきそうだが、教育経費が足りず教員のプロジェクト研究費で教育を行わざるを得ない場合もある。
そのくらい我が国の大学環境は厳しい。

ただ。
それでもなお、学校教員志望者を受け入れた上で研究指導をすることは意義がある。
短期的には研究にマイナスかもしれないが、長期的にはその研究分野にプラスになると思っている。
どういうことか。

卒業研究では研究を通じてその分野のおもしろさに触れることができる。
研究そのものの楽しさを感じてくれるかもしれない。
1年か2年一つのテーマをじっくり追いかけるため、学生時代の研究分野はそれなりに思い入れの深いものとなる。
こういった人材が学校教員になって、その分野を含めた教科教育の任に当たるわけである。
大学教員がアウトリーチと称して小中高に出ていかなくとも、彼らがその研究分野のおもしろさを語ってくれる潜在的な人材になりうる。
こういう人材が毎年少しずつ現場に送り出され、子どもたちに自分の好きな研究分野の話をしてくれる。
中にはそんな話を聞いて進学先の分野を決める生徒が出てくるかもしれない。
進路指導で具体的な進学先として勧めてくれるかもしれない。
こういう人材が初等・中等教育の現場にいるというのは、長期的に見てその研究分野の発展に大きく貢献するとは思わないだろうか。

これは学校教員に限った話ではない。
財界人、官僚、政治家。
その多くは大学経由で社会人になる。
その人たちに、在学中しっかりと研究の基礎理解とそのおもしろさを学んでおいてもらう。
そうすると、その中のいくらかは卒業後、研究業界を応援してくれる人たちになってくれるはず。
権力者にならなくとも教え子たちはみな有権者にはなる。
4年間も時間があるのだから、地道に教育をして研究外の各領域から応援してもらう、というのは悪くない考え方だと思っている。

と、まあそんかことを日々考えつつ、研究指導をがんばっている。
ただ、理想通りにはいかないもので、研究のおもしろさを伝えるのがまた、難しい。

ではでは。
また。




f:id:htyanaka:20211018232054j:plain にゃん。にゃにゃにゃん。

-----
2021/10/18 21:17
書く暇がないね。
仕事後の自宅にて。


雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2021/10/18
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2021 All Rights Reserved.

院で専門を変えることのあれこれ(大学院へ行きたい人へ9)

院で専門を変える。
時々聞く話なのだが、今回はこれについて書いてみる。

まず。
大学院で専門を変えることはアリなのか。
これは各教員・研究者でかなり意見がわかれると思う。
が、僕はアリだと思っている。
高校までの狭い勉強と経験ではなかなか全ての学問分野に触れることはできない。
大学入学後、教養科目や専門科目の隣接領域の勉強、自由な読書などを通じて出会える分野の方が圧倒的に多い。
たまたま入学した学部学科の先に、研究したい分野があるとは限らない。
なので、院、特に修士課程進学時に専門を変えるのはなしではないと思っている。

問題点もある。
一番は、大学院と学部で教育目的が大きく異なるところ。
大学院は研究をするところであり、研究指導的な教育が中心。
体系的・網羅的に専門分野を学ぶ機会は用意されていない。
一方で学部は、その専門分野の学問を広く浅く身につけることが主眼。
例えば、心理学であれば、心理学の学部を卒業すると基礎心理学から応用・臨床心理学まで、幅広く知識を身につけることができる。
大学院の場合は、ある心理学分野のごく狭い分野で研究ができれば問題がない。
つまり、心理学の学部を出て身につく専門性と、院を出て身につく専門性は別物と思っておいた方がいい。
大学院で専門を変えて、かつ、新しい専門分野を将来の仕事にすることを考えている場合は、学部レベルの知識を自分で勉強しておく必要がある。
例えば、大学教員になりたい場合。
学部の授業を担当する場合、自分の研究分野の狭い知識だけではほぼ授業はできないと考えておいた方がいい。
また、院で研究をする場合に学部レベルの知識が前提となっていることも多い。
これが身についていないということがディスアドバンテージになることはありうる、ということは覚えておきたい。
よって、院で専門がえを行う場合は、学部の早い段階でそれを意識して自分で勉強しておく必要がある。

では。
学部レベルの知識を自学でなんとかする場合にはどうしたらいいか。
オススメは、進学予定先の院にぶら下がっている学部のカリキュラムを調べて、その内容の本を網羅的に読むというもの。
その学部と同じような他大の学部カリキュラムも調べて、より一般性を持たせるのもありか。
各大学、シラバスは公開されているので、それを見て教科書を探すのもあり。
この辺りは、またいずれ改めて書く。

研究に直結してやっておきたいこともある。
すぐに研究が始められるように、必要のなりそうな書籍・論文はあらかじめ読んでおく。
これをやっておくことで、専門が変わってもすぐに研究を始めることができる。
読むべき書籍や論文は、進学先の指導教員候補者に紹介してもらうのがよい。
これを学部生のうち、できれば院の試験より前にやっておきたい。
院での研究を考える材料が増え、院試対策にもなって一石二鳥。

以下は、進学タイプ別の学部時代の備え。

学部専門の隣接領域への転向

例えば、心理学で脳科学転向とか、電気電子で情報工学転向とか、こういう場合が当たるか。
この場合、学部で軽くは勉強していること多い。
研究するだけで、将来の専門分野は学部時代のまま、ということであれば備えの勉強は軽くでいい。
自分の研究したい内容に関連した転向先の学部の内容を中心に勉強する。
将来の専門分野も院の分野に変えたいという場合は、学部のカリキュラムを調べて網羅的に勉強したい。
分野が近いので、学部高学年になってからでも対応が可能。

隣接領域に進む場合は、学部の専門性もしっかり身につけておきたい。
学部で身につけた専門性は新たな専門領域でも生きる。
視点が複合的になり確実に武器になる、ということは覚えておきたい。
無駄にはならない。

学部専門と全く異なる領域への転向

例えば、教養科目で心理学に興味を持って、専門は全く関係ないが院で心理学を極めたい、といった場合。
この場合は、かなり早い段階から、学部の知識を独習する必要がある。
やり方は本文に書いた通り。
卒業研究については、進学予定の教員や学内にいる専門分野の近い教員に助言を受けたいところ。
学部の指導教員に理解があれば、指導委託等の柔軟な対応が可能な場合もあるので、それができる研究室を選ぶのも手。

あまりにも学部の専門分野と院の分野が違いすぎて、勉強が追いつかない場合もあろう。
この場合は思い切って、学士編入や研究生兼科目履修生を選択してもいい。
中途半端に進学するよりも後々のことを考えるとプラスになるかもしれない。


まあ、こんなところか。
ではまた。




f:id:htyanaka:20211003174505j:plain ずっと昔に乗ったロマンスカーの展望席。

-----
2021/10/03 17:27
10月になりました。
日本のどこかで。


雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2021/10/03
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2021 All Rights Reserved.

僕の研究室に向いている人・向いていない人

指導方針メリット・デメリットなんかはすでに書いた。
こういう方針を書いているせいか、恐れをなして逃げていく学生さんの話をちらほら聞く。
でも、そんな恐れることはない。
大変ながらもみんな卒業していくし、他に比べて厳しいわけでもない。

ただ。
どんな研究室でも向いている・向いていないというのがあるもの。
そこで、うちの研究室はどうか、僕の主観で書いてみることにした。
研究室選びの参考にしていただけたら幸い。
なお、指導方針メリット・デメリットを読んでいない人は、こちらを先に読んでいただいて。

なんといっても向いているのは、研究に時間を使う気がある人。
ほぼ、これに尽きる。
できるできないはあまり関係がない。
なぜなら、種々の能力は研究活動の中で身につけるため。
研究室配属までにこの力を身についておいてほしい、みたいのはあまりない。
もちろん、身につけておくと研究がはかどるよ、みたいなものはあるのだが、それらは研究室配属になってからコツコツ身につけていただくので問題がない。
そんなことよりも、大事なのは研究に時間を使えるかどうか。

これは指導方針とも関係する。
僕の研究室はテーマ設定が自由。
自分でミニ専門家になってもらい、研究のテーマを自ら設定してもらう。
これにはかなりの時間を要する。
山のように論文や書籍を読まなくてはならず、これにはかなりの時間が必要というのはわかっていただけると思う。
こちらからはテーマを与えないので、未熟な研究能力を鍛えつつ、テーマを設定して研究計画を練っていくことになる。
これにも相当な時間が必要。

ではどのくらいの時間を想定しているかと言えば、平日の日中が研究メインになるくらい。
まあ、1,2年生のころ授業に使ってた時間を、まるまる研究に使うくらいを考えていただければ。
というか、そのために4年生の授業がスカスカになるようにカリキュラムが設計されている。
でもまあ、これは基本なので、就活等で研究時間が少なくなるとかは工夫でカバーすれば問題ない。

なぜ時間を求めるのかといえば、卒業研究を大学教育の集大成だと考えているから。
教員としてそばにいるとわかるのだが、卒業研究に時間をかけて本気で取り組むと、学生さんかなり伸びる。
それは研究能力に特化したものではなく、社会人になってから役に立つものばかり。
これはホント。

というわけで。

僕の研究室に向いている人

・研究に時間を使える人
・自由にやりたい人
・研究能力を身につけたい人
・研究を通じて色々な力をつけたい人

僕の研究室に向いていない人

・研究に時間を使えない人(ライトにやりたい人)

気にしなくていいこと

・能力や成績
 →時間が使えるのであれば問題なし
特別支援教育への興味
 →特別支援教育以外のテーマでも可(詳しくはコチラ

と、まあこんなところか。

では今回はこの辺で。
また。




f:id:htyanaka:20210927183846j:plain鳥取市内にて。

-----
2021/09/04 20:27
夏の終わりに。
鳥駅ドトールにて。


雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2021/09/04
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2021 All Rights Reserved.

本の紹介,「ロヒンギャ危機―「民族浄化」の真相(中西嘉宏,中公新書)」

ロヒンギャ危機―「民族浄化」の真相
中西嘉宏(著)
難易度:☆☆


ロヒンギャの問題をご存知だろうか。
ミャンマーで大量に生じている難民の問題。
数年前にミャンマーの国内問題からロヒンギャ難民が大量に発生して国際的に問題となっている。
問題自体は知っていたが、背景や詳細をよくわかっていなかったので、ちゃんと勉強しようと思って読んだのがこの本。

ロヒンギャとはミャンマーバングラデシュ国境近くの地区に由来するムスリムイスラム教を信仰している人々)を指す。
ミャンマーでは仏教が主流。
歴史的背景からこの地区にはムスリムがいて、大昔は問題なく暮らしていたらしい。
これが、この地区を支配する勢力の衰退や、植民地支配等を経て、不利益を被るように。
無国籍状態に陥ったり、迫害されたり。
ミャンマーはその後軍事政権になり、いくらか前に民主化された。
この民主化政権下で、軍や仏教徒から迫害を受けて難民が大量に発生した。
だいたいこういうことらしい。
こういった詳細について知ることができるのがこの本。

わざわざこの本を紹介をしようと思ったのは、ロヒンギャ問題を知ってほしいという理由からだけではない。
ミャンマーの国の形から学べることがたくさんあると思ったから。
ロヒンギャ問題とミャンマーの国の成り立ちは、他の国際問題や政治を考える上でも参考になる。
イスラエル問題(ガザ地区の話も、ユダヤ人の話も)のように同様の根本構造をとる問題は多いし、日本の労働移民政策なんかの是非についても考えることができる。
国内外の政治を考える上で知っておいた方がよい内容。
どういうことか。

一つ目は、安易な移民政策は遠い将来大きな問題を引き起こすということ。
ロヒンギャも大昔に労働力として別の地からやってきた。
当時は問題なく暮らしていたという。
それが長い時を経て難民問題を引き起こす。
ロヒンギャの問題は仏教徒である住民が国や軍とは別に迫害したという側面もある。
仏教の僧侶が迫害に肯定的なコメントを出すなど、多数派の価値観による異なる価値観への暴力のような面が見え隠れする。
これらのことは、教育等他の政策とセットで慎重に移民政策を考えないと間違う、ということを教えてくれる。

もう一つが、軍と政治の問題。
ミャンマーはご存知の通りクーデターによる軍事政権が長く続いた。
ロヒンギャ問題は民主政権に移行してから大きくなった問題なのだが、じゃあ民主政権だけが悪いかというと必ずしもそうは言えないところがある。
というのは、ミャンマーの政治体制として、民主政権が必ずしも軍を従えていなかった。
民主政権に委譲するにあたって軍の独立性の仕組みを整えているし、民主政権も軍にかなり気をつかっている。
この本が書かれたのは民主政権時代なのだが、読んでいるとやりようによっては再びクーデターが起きそうな気がする。
そして、この本が出た直後、実際にクーデターが起きて再び軍事政権になっている。
日本でも何度かクーデター危機があったが、幸にして全て失敗している。
ただ、日本でこれからクーデターが起きないとも限らない。
そういう問題を考える具体例としても知っておきたい内容。

ロヒンギャの問題を知りつつ、具体例を通じて政治を考えることができる本。
かなりオススメ。




f:id:htyanaka:20210920172712j:plain なつかしの神宮球場にて。

-----
2021/09/20 11:41
仕事と仕事の合間に。
汽車の車内にて。



本の紹介へ戻る
雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2021/09/20
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2021 All Rights Reserved.

進学で研究室を変えることのあれこれ(大学院へ行きたい人へ8)

久々このシリーズ。
大学院に進学したい。
ではどこに進学しようか。
今いる研究室はわりと気に入っている。
でも、他大の院に進学してみたい。
こういう悩みは結構耳にする。
今回はこういう人に読んでほしい記事。

まず。
他大に行け、というのが僕の個人的な考え方。
基本的に研究室所属の学部生に相談を受けるとこうアドバイスすることが多い。
僕の大学は研究に特化した大学ではなく、博士課程もない。
進学者も多くないため、研究者を目指す先輩の背中はみることができない。
ただ、何よりも、外の世界を見て色々と知っておくのがいい、というのが大きな理由。
もちろん、どうしても僕でなくてはならない事情があったり、鳥取を離れられない事情があったりとした場合はこの限りではなく、まあケーズバイケースにはなる。
この方針はおそらく一般的ではない。
院生を抱える多くの教員は学部+院をセットで教育したほうが効率的と考えており、出て行かないでほしいと考えている先生もいると思う。
こちらもケースバイケース。
その上で、続きを読んでいただければ。

他大に進学するメリット

一番は新しい研究環境を経験することができること。
研究というのは研究室の教員の色が強く出る。
すると、当たり前だと思っていた考え方、環境、研究姿勢等が当たり前ではないということに気付かされる。
これは大きい。

研究大学以外の研究室から研究バリバリの研究室に進むと、その環境の違いに驚くかもしれない。
同世代の院生がたくさんいる環境は刺激的だし、モチベーションも上がる。
博士課程の院生や研究員、助教といった研究のスペシャリスト一緒に研究ができるのもいい。
ハイレベルなゼミや勉強会、共同研究なんかも経験できるかもしれない。
こういう環境から学べるものは計り知れない。

学部が研究大学であっても、小さな研究室から大きな研究室に移動すれば上記のようなものが手に入るかもしれない。
逆に、大きな研究室から小さな研究室に移ることで、教員との密な議論等、指導の質が変化するかもしれない。
院に入るにあたって分野替えをすることで、前の分野の常識とは異なる常識や考え方に触れることができるかもしれない。

移動に伴って、教員も変わることになる。
大学教員のキャラクターや指導スタイルというのは思っている以上に多様なので、1人しか知らないよりは複数人知っておいた方が視野が広がってよい。
研究環境は教員の手腕によって変わるので、この辺りを複数見れるのもおもしろい。

以上が、進学するメリットの主だったもの。
あとは、指導教官と合わない、研究環境に不満、など、現状を変えたい人にも大きなメリットがあるが、これは研究に限った話ではないので書かない。

研究室を変えることのデメリット

メリットがあればデメリットもある。
一番のデメリットは、学部でのやり方がガラッと変わる可能性があること。
特に、学部の研究室があっていた場合は、院の研究室の方が相性や環境が悪くなるということもあり得る。
これは、クジを引き直すようなものなので避けようがない。
現在学部生で、教員との相性がバツグンだったり、専門分野や研究テーマにかなりマッチしていると感じていたりする場合は、このリスクを考えておきたい。
研究がサクサク進んでおり、今後も研究が捗ることが予想される場合は、あえて院で他大に移動する必要はないかもしれない。
この場合は、他大に出る代わりに学会や研究会に積極的に出て外の世界を知る、という戦略でもいいか。

学部の時の研究を投稿論文にしたい、という場合も、所属が変わるとうまくいかないことがある。
特に教員の研究費を使って研究をした場合、データは元の研究室の誰かが論文化する可能性がある。
これは予算の出どころからして、まあ仕方ない。
自分のところの学生だから教育の一環でスピード感に目を瞑ってもらっている場合もある。
教員の研究費が競争資金の場合や研究のアイディアが教員から出ている場合は、教員側のモチベーションとしてさっさと論文にしたいもの。
まあ、卒論のデータやその後の論文化については、学部の教員によるので、どういう方針か聞いてみるといいと思う。

卒論を自分で投稿論文化してもいい場合でも注意が必要。
新しい研究室ではそれをするだけの時間が取れないこともありうる。
進学先の研究室は卒論の研究分野とは多かれ少なかれずれることが普通。
新しいことも学ばねばならず、手が回らない、ということは想定しておいた方がいい。
また、まとめる段になっても問題が生ずることもある。
そもそも学部卒業程度の研究能力なので、自力で投稿論文にまとめるには難がある。
しかし、元のネタについて進学先の先生が面倒を見てくれることはあまりない。
特に卒論のネタを元に論文化して学振を狙うようなことを考えている場合にはこのデメリットはあまり無視できない。

最後に、もう一つ。
学部の土地を離れる場合は、息抜きに付き合ってくれる友人がいなくなる、というデメリットもある。
これは経験するまでは気づかないのだが、人によっては地味に利く。
まあこれは院生に限らず、新社会人になる人にも当てはまるが。
進学先が定員の大きな大学院だったりすると、同級生がたくさんいるのでこれを補える場合もある。


他にも、院で専門を変えることについても書く気でいたのだが、長くなりすぎた。
これはまた次に。
ではまた。




f:id:htyanaka:20210905130315j:plain 大昔の横浜にて。


-----
2021/09/04 20:27
夏の終わりに。
鳥駅ドトールにて。


雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2021/09/04
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2021 All Rights Reserved.

障害児等病理学特論2021(鳥取大学・院)

授業内容


第1回 オリエンテーション(オンデマンド)
第2回 神経系の基礎(1)(10/8)
     ~大脳の構造
第3回 神経系の基礎(2)(10/15)
     大脳の機能
第4回 発達障害の基礎(1)(10/22)
     最初~2発達障害の原因:DNAが伝えているもの
第5回 発達障害の基礎(2)(10/29)
     2発達障害の原因:DNAが伝えているもの(補足)~水頭症
第6回 発達障害の基礎(3)(11/12)
     2発達障害の原因:新生児脳症~2発達障害の原因:ラスト
第7回 発達障害の基礎(4)(11/19)
     代表的な発達障害ADHD自閉症
第8回 発達障害の基礎(5)(11/26)
     代表的な発達障害:LD~ラスト
    自閉症の基礎(1)
     最初~前操作期と表象
第9回 自閉症の基礎(2)(12/3)
     ことばと表象~自閉症とは:事例
第10回 自閉症の基礎(3)(12/10)
      様々な自閉症の定義~
第11回 自閉症の基礎(4)(12/17)
      自閉症の診断と評価~自閉症と遺伝,疫学
第12回 自閉症の基礎(5)(12/24)
      各種質問,振り返り
第13回 自閉症の基礎(6)(1/7)
      自閉症に関連した遺伝子~ラスト
第14回 LDの基礎(1)(1/21)
      LDとは
第15回 LDの基礎(2)(1/28,予定)
      LDの出現頻度~



関連情報


自分で勉強したい人へ【準備中】
障害児等病理学特論に関する役立ち情報
発達障害に関する役立ち情報


連絡事項


授業の連絡事項



担当授業に関連した情報へ戻る
雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2022/01/27
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2022 All Rights Reserved.

病弱児等の教育課程と指導法2021(鳥取大学)

授業内容


第1回 オリエンテーション(10/6)
    病弱の概要(1)
     最初~病弱とは:合理的配慮
第2回 病弱の概要(2)(10/13)
     病弱に関連した解剖と生理~病弱と教育:病弱教育の方法
第3回 病弱の概要(3)(10/20)
     病弱と教育
    病弱教育の歴史と現状(1)
     最初~黎明期:明治期の医療
第4回 病弱教育の歴史と現状(2)(10/27)
     黎明期:~戦中
第5回 病弱教育の歴史と現状(3)(11/5)
     戦後~養護学校の増加
第6回 病弱教育の歴史と現状(3)(11/10)
     義務制へ向けて~
第7回 病弱教育の歴史と現状(4)(11/17)
     現状:病弱教育の場と統計~現状:児童生徒の多面的な理解
第8回 病弱教育の歴史と現状(5)(11/24)
     現状:学習状況の把握と教育
第9回 病弱教育の実際(12/01)
     訪問教育としての特別支援学級
第10回 病弱教育の歴史と現状(6)(12/08)
      現状:学習状況の把握と教育
     代表的な疾患と指導上の注意(1)
      糖尿病:はじめ~腎臓での糖再吸収
第11回 代表的な疾患と指導上の注意(2)(12/15)
      糖尿病:インスリン~腎臓病:尿細管での再吸収と分泌
第12回 代表的な疾患と指導上の注意(3)(12/22)
      腎臓病:糸球体ろ過量~
第13回 代表的な疾患と指導上の注意(4)(1/5)
      腎臓病:腎移植~気管支喘息:学校での対応
第14回 代表的な疾患と指導上の注意(5)(1/19)
      気管支喘息:発作の程度~ラスト
第15回 復習とまとめ




関連情報


自分で勉強したい人へ【準備中】
病弱児等の指導・保健・教育に関する役立ち情報
病弱に関する役立ち情報


連絡事項


授業の連絡事項



担当授業に関連した情報へ戻る
雑記帳トップへ戻る
HPへ戻る


Update 2022/01/24
Since 2016/03/06
Copyright(c) Hisakazu YANAKA 2016-2022 All Rights Reserved.