週刊雑記帳(ブログ)

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つれえぜ、一人親方研究室(教育奮闘記10)

医学部や工学部だと、1つの研究室に教授を頂点として、准教授・講師・助教等の教員がいて、さらに複数スタッフがいるということが多い。
この仕組みを講座制というそうで、昔はこの方式をとることが多かった。
いわゆる博士講座と呼ばれる方式で、教員数の積算もこれを単位に定められていたらしい。
この博士講座を「研究室」と呼び、今でも医学部・工学部で博士課程を持っているとこのタイプ研究室構成になっていることが多い。

このタイプの研究室。
教授の役割は、研究室の運営が主となる。
どんな研究費を取ってきて、どんな研究を進めていくのか。
研究の進め方はどうやって、成果はどんな感じで出していくのか。
全体を統括して、教育も含めた研究室運営を中心にことを進めていく。
まあ会社で言うところの、部や課の単位で部課長に当たるお仕事と考えればいいか。
もちろん、その運営方針の中で、研究や教育の実働として動くこともある。

准教授・講師・助教の場合は、もう少し実働に近いことを行う。
教授の方針に従って小グループ単位で研究を進めたり管理したりする。
学部生・院生の指導を実際に行うのもこの人たちの比重が大きい。
研究の実働としての役割も大きく、バリバリ研究を進めるのもこの人たち。
もちろんお雇い研究者(ポスドク研究員)や博士課程の院生への指示・指導もする。
民間でいうグループリーダ的な人と思えば外さないか。

一方で、お雇い研究者(ポスドク研究員)もいる。
言ってみれば研究のプロで、職人のような存在。
その見習いが博士課程の院生か。
見習いの段階で、かなりできる。
研究室の後輩の相談に乗ったり、研究の助言をしたりする。
身近な存在として、教員よりは気軽に教えを乞うことができる。
ま、気難しい人もいるけど、平均的には外れていないと思う。

そして、修士の院生、学部の卒論生と続く。
修士の院生は1度卒業研究を経験している身近な先輩として、学部生にアドバイスをする。
学部学生と距離がかなり近いので、修士の先輩に仲のいい人がいると、いろいろと教えてもらえる。
具体的にどうやって分析をするのか、パソコンの使い方、その他、教員には聞きづらいことも含めて、学ぶことができる。
背中を見て学ぶことができるのも、ちょっと上の先輩の背中がちょうどいい。

このようにして、システマティックに研究を進め教育するシステムが整っている。
もちろん、最近は予算減による人員減でこんな理想的には進まないものの、各々が役割を担いながら研究と教育が進んでいくスタイルは変わらない。


さて。
地方国立大学や私立大学には、この講座制のようなスタイルでない研究室が存在する。
学部によってはむしろこっちの方が主流かもしれない。
その組織に教員が1人ポツンと存在し、1つの研究室を運営している。
同じ分野の教員はいない場合が多く、隣接分野の教員すらいない場合がある。
まるで親方一人で職人仕事をこなすように見えるため、これを僕は勝手に一人親方研究室と呼んでいる。
一人親方は、必ずしも教授とは限らない。
准教授のこともあれば、講師・助教のこともある。
そもそも組織に同じ分野や近い分野に他の教員がいない。
いたとしても、独立して存在しており、研究や研究指導を分担して行う体制になっていない。
職位は、上下関係を意味するものではなく、業績と経歴をもとにしたラベルくらいの意味しか持たない。
これはこれで、自由にできる、フラットな組織、上司ストレスフリーな日々などなどいいことも多いのだが、タイトルから外れるので今回は書かない。

さて。
この一人親方研究室。
結構大変なのでございます。
1番は、上記に挙げたすべての役割を一人で担うことになるところ。
ほとんどの場合は、学部生しかおらず、いてもごく少数の修士課程院生がいる程度。
仕事としては博士院生やポスドクがいるところとは違うので楽な気もするが、そうでもない。
学部生への研究指導としては、教授・准教授・講師・助教、プラスしてポスドク・博士院生・修士院生の果たす役割をすべて担う必要がある。
これはわりと大変。
研究のノウハウは基本的に研究室に蓄積しない(毎年メンバーが刷新されるため)ため、これを蓄積させるためには工夫がいる。
PCの操作や論文の読み方、書き方の基本なども含め、逐一イチから全部自分で教える必要がある。
うまい方法はないだろうか、と、試行錯誤する日々。

他にもいろいろある。
一人親方研究室ということは、研究指導だけでなく、研究面も自分がプレイヤーである必要がある。
と、同時に運営も自分でやらなければならない。
研究面でも役割分担がないので、自分で全てをやらなくてはならない。
ポスドクから助教・准教授・教授のお仕事を全部一人でカバーということになる。
多忙を極める割に、研究業績は大したことにならない。
内実がわかっていない人から見ると、サボっているように見える。

そもそも一人親方状態の場合、同僚に同じ分野の教員がいないことが多い。
すると、その組織における学問分野のカバー範囲が広くならざるを得なくなる。
卒論生の研究テーマ、担当授業、組織主導のプロジェクトの担当割り振り、などなど。
何らかの事情で、1番近いところの教員がいなくなると、そのカバーまでやってくることがある。
地味なところでは、研究内容を議論する同僚が組織にいない、というのもある。

そんなわけで。
つれぇぜ、一人親方研究室、ということに。
事情が違う同業者の方々、ぜひいじめないでいただいてですね。
なお、こうは書いているものの、僕自身はわりとこの状況を楽しんでいる。
たださ、全然研究していないね、とか言われたら泣いちゃう。

ではでは。
今回はこの辺で。




いつぞやの神宮球場で、東京音頭中。


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2024/02/04 16:25
のんびりモード。
鳥駅ドトールにて。



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Update 2024/02/04
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