週刊雑記帳(ブログ)

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研究でやってはいけないこと〜剽窃編(研究をしよう36)

研究には、絶対にやってはいけないことがある。
学部生、未熟な院生レベルだと、これがよくわかっていない場合がある。
よくよく振り返ると、学部生向けにあまりこれに関する授業や講習がなかったりする。
ただ、これ、研究業界でやると犯罪に準じたヤバさがあり、処分を受けることになる。
例えば、論文提出後、卒業前に見つかれば、不正認定で留年は間違いない。
卒業後・修了後に見つかれば、卒業や修了、学位の取り消し処分がなされる。
悪いことをわかっていて軽い気持ちでやったとかなら本人が悪い、ということになるが、そもそもどこまでがダメかがわからん、ということなら、学生にも少し同情の余地がないではない。
ただ、こんなのは知っていて当然な上に、学則にやっちゃダメって書いてあることがほとんどなので、知らなかったでは済まされない。
なので、今回はこれについて書く。
いつもは読み飛ばす人も、こればっかりはしっかりと読んでおいた方がいい。

さて、今回はその剽窃編。
書くことと研究計画に関する不正、と思っていただいた結構。

論文の基本

論文が不正にならないためには最低限以下を満たす必要がある。
(1)自分のアイディアで計画を立て、自分で実施する
(2)自分で表現する

これは何も研究に限った話ではない。
あらゆる表現物やお仕事は多かれ少なかれこれらを満たす必要がある。
特に、(2)については、守らない奴らを罰する法的な枠組みがたくさんある。
そのくらい重要な事項であることを頭に入れておきたい。

これらを守らないのが、研究不正となる。
卒論生・院生は、基本的に自分で考えて自分で書け、というのが基本的な守るべき事項ということなる。

剽窃とは

文部科学省(2014)は盗用を以下のように定義している。

盗用
他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又 は用語を当該研究者の了解又は適切な表示なく流用すること。

剽窃は上記文書の中では言及がないが、一般的に他人の著作を自分の著作物の中に無断で使うことを指す。
盗用のうち、文書に関する部分を特に剽窃と言うと考えていただいて構わない。

何がアウトで、何がセーフか

まず、コピペ。
これは1発アウト。
1行でもコピペがあったら、アウトと思って欲しい。

次に、コピペしたものの一部表現を変える。
これもアウト。
基本的に大部分が同じなので、ダメ。
一部を他人著作から流用しているのでアウト、と言うことになる。
いや、これくらいバレないだろう、と思われるかもしれないが、バレる。
これについては、コピペはバレるを読んでいただいて。

基本的に、自分で書く、表現する、というのが必須。

次に出てくるのが、本や論文をコピペではなくて、真似して打ち込むこと。
これは、やり方の違いであり、コピペと変わらない。
他人に代筆してもらった、もバレにくいがダメ。
何度も言う。
自分で表現しなくてはならない。

セーフなものは何か。
まず、他人の言うことを論文で使いたい場合。
これは、引用という方法を使う。
原典を明示して、お作法に習って引き移す、もしくは要約する。
分量書き方その他いろいろお作法があるが、それに従っていれば剽窃には当たらない。
やり方に関しては、レポートの書き方本にあるので、それを参考にしてほしい。
この辺りが参考になる。
なお、剽窃・盗用・引用については、レポートの書き方本の基本として書かれており、論文を書くにあたりこれらの本の内容くらいは頭に入っていることが想定されているため、不正した場合、知らなかったが通ることはまずない。
聞いていないだけで、たいがいどこかで繰り返し説明されているはず、となる。

論文の表現としてどんなものがあるか、を複数の論文で確認する、というのはあり。
論文の表現や構造、というものはあって、自分の書いた表現がそれに当てはまっているかがわからない。
「示す」という表現は使っているのか否か、どういう時に使っているのかなど。
基本的に自分で書いていることを前提として、その表現の細部を確認して改めるというもの。
論文の表現技法を学んでいるだけなので問題はない。
盗んでいない、というのが大事なポイント。

詳しくは、論文の書き方本を読み込んでいただいて。

なぜバレるのか

教員がなぜ気づくのかについては、コピペはバレるを読んでいただいて。
これはすぐわかる。
こちとら、書き手のプロであり、読み手としてもプロであり、教育のプロでもある。
なめてはいけない。

では、いつバレるのか。
自分の指導教官をスルーできても、普通は複数人審査教官がいる。
副査だったり指導教官以外の主査だったり。
指導教官にバレた場合であれば、提出前であればキツイお説教ともに書き直しを命じられてことなきを得る場合も多い。
問題は、指導教官以外の教員にバレた場合。
これは、提出後審査のプロセスに入っていることが多く、不正認定の上、卒業延期となる。
おそらく、組織の教員全員に不祥事と共に名前を共有されることになる。

他にもある。
最近では論文を公表しよう流れがあるため、卒業後指導教官が公表するために内容を見直すことがある。
この過程でバレる。
僕が卒論生の論文を公表する場合、中身のチェックはかなり入念にする。
引用している場合、引用元の内容と照らして言い過ぎではないか、までかなりしっかりチェックする。
公表してから何か不備があると、学生の名前にも傷がつくので、そこはかなり慎重にやる。

他者からの指摘でバレることもある。
なんらかの事情で、論文が剽窃した元の著者の目に触れてしまうことがある。
その結果、これは自分の論文の盗用なのでなんとかしろ、と大学に垂れ込まれる。
こうなるともうどうにもならない。
著者以外の第3者が指摘することもある。
代筆していた人が告発する場合などもあるか。
最近は、剽窃をチェックするソフトウェアがあって、それでバレる可能性もある。
博士レベルだと、ひどい不正をやらかした人がきっかけとなり、過去の論文チェックが行われ、、、みたいなパタンもある。
怖いですな。

卒業後・修了後の場合は、不正認定委員会あたりにかけられ、認定されることになる。
時効がないので、いつバレるか全くわからない、ということに注意が必要。

バレるとどうなるのか

卒業・修了前だと、組織に処分され卒業・修了が延びる。
所属学部・学科では、不正の人ととして、名前が共有される。
ただ、これは教育上の措置であり、教育しようとしているだけまだいい。

では、卒業・修了後はどうなのか。
さかのぼって、卒業・修了が取り消され、学位が取り消しになる。
その時点で、職についている場合、これがどんな影響を与えるか、わかるだろうか。
特に、学位が仕事上重要な場合、それはそれは大変悲惨なことになる。

まあ、そんなわけで、不正はするなってこと。
こんな爆弾を抱えて生きていくくらいなら、留年・卒業延期の方がまだマシだと思わないだろうか。
不正をせずに、能力を身につけて卒業・修了した方が、社会に出ても活躍できるだろうし。


長くなった。
ではまた。




大雪の鳥取市内にて。


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2024/01/21 14:10
休日の大事さを噛み締めながら。
ドトール鳥駅にて。



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Update 2024/01/21
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