週刊雑記帳(ブログ)

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なぜ指導教員は前と言っていることが違うのか(大学教員・研究者という生き物 12)

なぜ指導教員は前と言っていることが違うのか。
卒論生・大学院生と話していると、時々こういうことを言われることがある。
これは結構よくあることらしく、場所・人を問わず、聞く。
そういえば、僕も院生時代、これに覚えがある。
え、それ、先生が言ったからやったのにー。
なぜそれやったのか?はないんじゃない?
そのことは前に先生に言って、うんって言ったじゃん!!
聞いてないとはひどい。
まあこんなところか。
前回と言っていることが真逆じゃん、なんてこともあるかもしれない。
なお、これは、指導教員に限らず、世の上司にも共通していると思うので、「指導教員」を「上司」に読み替えて読んでいただいてもそんなに外さないと思う。

さて。
指導される側だった僕や友人たちも時々ぼやいていたこと。
でもね、これ指導する側になると、なんで起こるかがよくわかる。
教員側は、それ以外の人が思っているのの数倍は忙しい。
一人で何件も指導学生を抱えており、他に授業もやっていて、事務仕事も多い。
特に、指導学生の部分が大きく、同時並行で全然違うテーマを数件指導している。
するとね、誰に何を言ったか言っていないか、このあたりがわけわからなくなりはじめるのだ。
もちろんそうならないように、工夫はする。
学生ごとにカルテメモのようなものを作ったり、前の指導した時に使った資料を見直したりもする。
ただ、そのメモも完璧には取れないし、メモする前に別の緊急案件で中断されたり、別の学生が間髪入れずに質問に来たりする。
そうなると、記録も残らず、振り返ることにも限界がでてくる。

それでも、なんとかなることは多い。
同じ資料に目を通してその場で考えれば、指導する内容はだいたい同じところに行き着く。
それで、その場で一生懸命考えながら、前に言ったことを思い出しつつ、指導する内容をその場で紡ぎ出す。
大体はこれで問題は生じない。
ただ。
人は気まぐれな部分もあれば、見落としもある。
前回うっかり見落としていた箇所があり、でも今回はそれに気づいて、その結果指導内容が異なるところに行き着く。
しかも、見落としていた事実自体に気づくことができない。
そんなわけで、言っていることが違う!ということになってしまう。
他にも、他の人への指導内容や指導で言った記憶が混ざってしまって、それがその場で思いつく指導内容を変えてしまうこともある。
日々指導しているので、与えられる文脈情報が刻一刻と変化している。
その結果、我が愚脳が導き出す出力内容も異なったものになってしまう。
おそらく、スーパー優秀と思っていた指導教員にもこういうことが起きていたのだと思う。
なお、これは自分の研究でも起きることで、Aだと思って作業を進めていたものの、作業しながら考えて行くうちに「これはAではなくてBなんじゃないか」と、考えを変えることはよくあること。
研究という営み自体に、そういう要素がある。
かくして、言っていることが違う指導教員が出来上がる。
僕は、これは避け難いとある程度あきらめていて、学生さんにその旨を伝えて、自分が前回言ったことの確認から入ることもしばしば。
間違うこともあるので、そういうことが起きたら指摘するように言ってある。

さて。
じゃあ学生(あるいは、上司に相対する部下)はどうしたらいいのか。
もうこれは簡単で、コイツ(指導教員か上司)は覚えちゃいないので、そのつもりで話す、資料を作る、に尽きる。
お前のこの指摘に対応して、こういう作業をやって、こうなった、とみせる。
まあ、ドラマやアニメでいう「前回のあらすじ」のような説明を少しつけるようなイメージ。
僕は自分の能力のポンコツさには全幅の信頼を置いているので、すまん忘れた、前回オレ何言ったっけ?と聞けるけど、そういう人間ばかりではない。
そこで、指導教員(や上司)にあらかじめ共有したい文脈情報を与えてしまう、というやり方。
これ、わりと有効で、僕が上司や共同研究者とやりとりする時にはこのやり方をするようにしている。
すると、結構スムーズに物事が運ぶ。
これはわりとオススメ。
あらゆるシーンで役にたつちょい技。

まあもちろん、そのくらい指導教員(あるいは上司)の側でどうにかしろよ!という意見はあると思う。
スジ論としては極めてごもっとも。
ただ、やってみるとどうも難しいのだ。
これはポンコツな側の僕だけでなく、スーパーエース級能力なはずの指導教員であっても起こる、というのがその難しさを物語っている。
まあ、スーパー優秀な人にはスーパーな量のお仕事・指導学生がやってくるので、やはり能力の限界を超えてしまうということなのだと思う。

ではでは。
また。




羽田空港にて。


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2024/01/21 14:10
休日の大事さを噛み締めながら。
ドトール鳥駅にて。



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Update 2024/01/21
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