週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

僕の研究変遷記〜修士編前半

前回(学部編)の続き。

大学学部は幅広く学び、いざ院の修士へ。
進学先は北の大地の大きな大学。
ここの医学系の大学院だった。
研究室は脳の電気生理学系の研究室。
高次脳機能学分野、という字面のイメージだけで希望を出し、ここに配属となった。
今考えると、正気かちょっと疑われるレベル。
先生も知らず、なんの研究をしているかもよくわからず、「脳の研究がしたい!」という純粋素朴な動機で選んでいる。
だって、周りに外部院進する人なんかいなくて、知らなかったんだもん。
願書や入学案内にも、1年後期から研究室配属って書いてあったから、そんなもんかなーって思っていた。

で。
いざ入学してみると、すぐに研究室に配属となり、めくるめく研究生活がはじまる。
電気生理学。
詳しくない人のために書いておくと、我々の身体の中にある神経細胞は電気信号を出すことで難しい知的活動を実現している。
本当に、ピコピコ電気信号(1m秒くらいの速さ)を出して、それを伝えて、次の細胞たちが電気信号を出したり出さなかったりすることで、脳機能が実現されていく。
この記事を書いている間も、僕の脳の神経細胞たちはピコピコ電気信号を放出。
その、生体の電気信号を記録して、それを研究しようという分野が電気生理学という分野。
1つの細胞の1つのタンパク質に注目して電気的なふるまいを明らかにしようという研究分野から、頭皮上にダダ漏れに出てくる電気信号を記録して分析しようという分野まで、幅広い。

僕の入った研究室は、電気信号を細胞そのものから記録しよう、という研究室だった。
対象はニホンザル
おさるさんに何か課題をやってもらって、その時の電気信号を記録することで、高次脳機能はどう実現しているのか、ということを研究するところだった。
ニホンザル電気生理学的手法をメインとしながら、それ以外の手法も利用しつつ、総合的に研究をしていた。
ネズミだったりマーモセット、リスザルの行動を見たり、なんてのもあった。

なーんも知らずに、能天気に選んだ研究室生活がスタート。
1番の思い出は「サル当番」。
当然なんだけど、サルを飼っているわけだから、その世話がある。
月に数回、研究室のメンバーが交代でサル部屋の掃除などを行う。
その主担当が「サル当番」。
これが結構キツくて、結構おもしろかった。
サルにはそれぞれ個性があって、しかも人間との間に順位付けもある。
1番えらそうなおサルが研究室で1番長い先輩のおサルで、たぶん新人の僕よりもエラい、という認識の持ち主。
掃除してたら、水はかけるは、餌を奪おうとするは、で、それはそれは太えやつだった。
誰にでもそういう態度をとるわけでないのがまた腹立たしく、先輩が来ると極めて従順にしおらしくしている。
まあ、こういう、普段見られないおさるの世界を垣間見ながら、月数回、サル当番をこなす。
数時間くらいかかり、当番が終わると1日サル臭くなる、というものだった。

研究者としては失格なのかもしれないが、サル当番をしているとサルに情が移ってくる。
どうも、サルを対象とした研究というものが思いつかなくなってしまった。
そんなもん、入学前に考えておけよ、という話なのだが、そうなってしまったものは仕方ない。
サルの前頭葉系の論文は読むものの、なかなかイメージがわかない。
修士もまだ始まったばかりだというのに、えらいことである。

そんなこんなで、前期も試験期間が終わった頃の話である。
ボスがミーティングで急にこんなことを言い出した。
「幼稚園児の脳機能を計測したい。ヤナカ、行かねぇか?」
どうも、大型研究費のネタで子どもの高次脳機能の研究をするというものがあったらしく、でも、研究室のメインはおさるで、メインでやる人がいなかった。
スーパーエースみたいな先輩がサルをやりながらヒトの幼児もやっていたのだけど、専念する人が欲しいとのこと。
「あ、やります。」
持ち前の能天気さで引き受けることに。
「わかった。でも計測装置がないから、とある企業の研究所に出張してくれ。」とボス。
聞けば埼玉の山奥にあるとのこと。
「出張ってのは、どれくらいの期間行けば?」と、聞くと、
「データが取れるまでずっと」とボス。

そんなわけで、僕の専門分野はサルの電気生理学、から、幼児の脳機能計測、へと変更。
北海道の冬を経験することなく北海道を去り、その後戻ってくることはなかった。

今日はここまで。
次回は修士後半編。
では、また。




、、、よこ、、はま??


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2024/01/07 19:01
年末年始休暇が終わってしまう。
丸善の3Fにて。



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Update 2024/01/07
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