週刊雑記帳(ブログ)

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小学校学級会と民主主義

民主主義とは何か。
ここ10年、この問いについて考えるようになった。
それより前はあまり考えたことがなかったので、民主主義的な何か、が脅かされているのではないかと思う。

民主主義とは多数決である。
これは若い人に多い印象で一部政党が強く持っている考え方。
僕も若い時はそう考える節がなかったわけではないが、今は違う。
多数決=民主主義とは考えていなくて、民主主義の道具の1つとしてこれがあると思っている。
言葉で議論する、わかり合おうとする、説得するされる。
そういうのが前提で、その過程を十分行った上で、多数決を行う。
よく話し合ったからこそ、あとは多数決の結果をみんなで守る。
そういうものだと思っている。
この過程をすっ飛ばして、ただ多数決に決定を委ねるのは、果たして民主主義というのだろうか。

さて。
僕は民主主義という仕組みを考えるとき、小学校くらいの学級会を思い出す。
例えば、レクレーション大会の内容を決める時。
サッカーをやりたい、いいや野球だ、ドッジボールも捨てがたいぞ。
このように意見が割れる。
学級会ではサッカーはいいぞ、いや野球のこんなところがいい、などと一生懸命相手の説得が始まる。
こっちの競技だと、こんないいことがあるぞ、やりたい人だけじゃない、他の人も楽しいぞ、などなど。
自分がこうしたい、を大事にしながら、反対派の利益も主張しつつわかってもらおうとする。
たいがいは、議論の過程で個々人の意見の変化があるし、なるほど、と思えば主張を取り下げることもある。
こうして、みんなの議論が尽くされたのちに、多数決が行われる。
一度決まったら、あとは文句を言わずに決定に従う。

もちろんこの中では少数派、反対派への配慮も行われる。
前も、その前も意見を聞いてもらえなかった、という少数派については、我慢してもらった分、次は意見を聞こう、ということになったりする。
多数決で決まったからもうおしまい、とはならずに、意見が通らなかったクラスメートへの配慮は続く。
内容によっては次回以降ではなく、その回に盛り込まれる。
例えば、ほとんどの人がドッジボールをやりたいけど、1人病気やなんかで見学以外の選択肢しかないような場合。
議論の行方にその事実が影響し、ドッジボールが選ばれないこともある。
議題によっては、多数派の意見を通しつつも、不利益が極力生じないような工夫がなされる。

これ、小学生くらいだとよく見られることだと思っている。
で、僕はこれが民主主義の基本だと思っている。
多数決にあたり、なるべく言葉でわかってもらうように努力する。
自分の意見は変わるかもしれないし、相手もそうであることがわかっている。
少数派であっても、言葉の前には公平で、理が通っていれば意見を通すことできる。
そして、自分の意見を決めるにあたっては、自分の利益だけでなく構成員全員の利益を重視する。
意見を通せなかった構成員に対しては、通せた側がその不満が解消されるように努力する。
学級会は直接民主制なので、間接民主制とは違いがるものの、本質は変わらない。


ひるがえって。
なぜ、民主主義が失われつつあると感じるのか。
これは、多数決による決定に至るまでの過程から言葉が失われていると感じるから。
議論、説得、説明、対話、これらによる相互理解。
いずれも機能不全に陥っているように感じている。
都合の悪いことへの意味のわからない繰り返し答弁、質問に対応しない答えでの時間稼ぎ、そうやって無駄に時間を使った上で議論は尽くされたからと多数決による決定。
どれも手続には則っているものの、民主主義的ではないと思っている。
この辺りは、時々国会中継を見るとよく分かる。

もう一度、小学校の時の学級会の話に戻ろう。
先に説明した民主主義的な特性は、クラスの構成員の特性やその関係性によって異なる、ということは否定しない。
一部の力を持ったクラスメイトが、意見の異なる他者のことを全く考えずに力で意見を通しまくる、という場合もあろう。
この場合、このクラスはどういう集団になるだろうか。
どういう雰囲気で、どういう特性を持った集団になるだろうか。
先の例の民主的なクラス集団とどちらがよい集団といえるだろうか。

国のような大きなまとまりであろうと、基本は一緒だと思っている。

ではでは。
また。




夏だ、神宮だ、ナイターだ。

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2022/07/17 20:27
連休最終日。
都内にて。



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Update 2022/07/17
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