雑記帳(ブログ)

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成功の理由と失敗の原因と格差社会の話

成功するとお金持ちになり、そうでないとお金持ちになれない。
ある職業は収入が多く、ある職業は収入が少ない。
同じ会社でも、地位によって収入に格差が生じる。
仕事ができる人は富み、仕事ができない人は貧する。
新自由主義の中で、当たり前に受け入れられているこの考え方は、本当に正しいのだろうか。

まず、仕事のできるできない、成功するしないについて。
これらが自己のがんばりや生き方の結果としての能力差によって生じる場合、これらによる格差は正しいように思える。
しかし、本当に自己のがんばりや生き方のみで能力差は決まるのだろうか。
まず、人は生まれながらに持っている能力や特性が違う。
ものすごくがんばって成績上位にいる人もいれば、ほとんどなにもしなくても成績上位になれる人もいる。
また、能力をみがくのに適した生まれ持っての性格特性(気質)もあるはず。
さらに、生まれ育った環境も人それぞれ違い、能力をみがくのに適した環境やそうでない環境がある。
これらは自分で選び取ることができない上、能力差を生み出す要因としては大きい。
生まれながらにどうしようもない理由で能力差が生まれることは大いにあり得る。
これに加え、運の要素も大きい。
さて、そういう側面のある仕事の出来不出来や成功するしないに対する格差はどの程度正しいのだろうか。

仕事の価値によってお金が決まるんだ、という意見を聞くこともある。
例えば、経営者は新しい価値を生み出していて、単純労働者は新しい価値を生み出していない。
だから、収入に差が開くのだという論。
これも一見正しそうなのだが、本当だろうか。
確かに、腕一本で起業したり経営したりする人の仕事の質は高く、仕事の価値は高いかもしれない。
でもね。
じゃあその人の下で実務をこなしている人の仕事はその人よりも価値が低いのだろうか。
末端の社員の仕事の価値は低いのだろうか。
そんなことはないと思う。
会社という組織はみんなでお金を稼いできて、それをみんなで分配する仕組み。
稼いできたお金は、投資家に分配して、経営者から末端社員までやった働きに応じて分配して、将来稼ぐための投資に回す。
働きに応じて、という部分に、仕事の価値という理屈が使われる。
しかし。
そもそも仕事の価値って誰が決めているのか。
それは経営者や管理者等の雇い主側にいる人たち。
末端の社員などの雇われ側は自らや上司の仕事の価値を評価できない。
どうやっても、決定できる人たちの仕事の価値は高くなり、それ以外の人の仕事の価値は低くなる構造になっている。
だって、一生懸命働いている人たちはみんな自分の仕事の価値は高いと思っている。
決定プロセスがこんなにも不公平な仕事の価値という概念に対して、お金の大小がつくのはどの程度正しいのだろうか。

いや、探せば代わりのいる人の仕事の価値は低いんじゃないか、という声も聞こえそうだが、それは単に労働市場の需給の問題。
仕事の価値の高い低いの問題ではない。
労働市場は分野ごとに異なっていて、その分野の労働供給(労働したい人の数)と労働需要(雇いたいポストの数)のバランスで決まる。
例えば、イラスト描きの場合、どんなに仕事の腕がよくても、供給過多になっているため単価が低くなる、という話を聞いたことがある。
これは、あらゆる職種に言えること。
そして仕事上の能力は労働市場内でのみ有効なものが多いため、市場間の労働力の移動は起こりにくい。
そもそも最初にどの分野に進出するかは運の要素がかなり強く、その後の分野の需給がどう変化するかも予想が難しい。
かくして、自分の能力とは関係なく高賃金・低賃金が決定してしまう。

さあ、こう考えてみると、収入格差がなんのために存在するのか。
ちょっと考えさせられてしまう。
格差をどの程度許容するかはその社会が決めることと聞いたことがある。
僕は社会の構成員みんながそれぞれ力を発揮できる社会をよい社会と考えている。
このため、がんばっている人が報われるために、そこにいくらかの賃金格差が生じるの悪くないと思っている。
ただ。
現在の日本の格差は、昔に比べるとかなり大きくなっている。
少し行きすぎな気がしていて、これ以上格差が進むのはいいことだとは思っていない。

ちなみに。
大きな格差を許容するには、特に大事なことがあると思っている。
それは格差競争が生まれによって不公正にならないこと。
これには教育を受ける権利が平等でなければならない。
悪すぎる家庭環境については手厚いサポートがいる。
お金持ちが儲けた分うちいくらかを税金という形でわけてもらって、これらを充実させる必要がある。
もちろんこれだけでは先に書いた様々な個人レベルでの問題は解消しないのだが、これがないと親の格差が子の格差につながってしまう。
それゆえ、こいつが特に大事だと思っている。
ただ、これらについては現在の格差を容認するほど充実しているとは思っていない。

そんなことを考えた。
あなたはどう思うだろうか。




f:id:htyanaka:20210208075334j:plain 羽田にて。

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2021/02/07 22:33
ゆっくり休んだ。
自宅にて。


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Update 2021/02/03
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