週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

卒業研究の進め方と落とし穴(研究をしよう23)

今回は卒業研究にしぼったテーマを。
卒論生がおちいりやすい落とし穴と研究のすすめ方について。
卒論生はその多くが初めての研究になる。
それがゆえに、研究の進め方の勝手がわからなかったり、落ちやすい落とし穴があったりする。
今回はそれなりについてのいくつかについて書いていく。
想定読者は、学部3年生や、4年生の早い段階にいる学生。
研究に慣れていない修士院生でも読めると思う。

計画の見積もりが甘くなる

初めての研究なので当たり前のことなのだが、基本的に計画の見積もりが甘くなる。
研究計画から調査の実施、データ分析、論文執筆までいくつかの過程があるが、思っているよりも時間がかかる。
例えば、調査の実施はやることが決まればすぐできるようなイメージを持っている学生さんがいるが、実際には準備等にとてつもない時間がかかる。
実験を実施するにしてもプログラムを組んだり実験に協力してくれる人を集めなければならない。
質問紙を行なうにしても、印刷郵送や分析をみすえた変更など、ちゃんとやろうとするとかなり時間がかかる。

このように、なにをするにしても思っているよりも時間がかかることが多いのだが、このあたりの感覚が経験不足ゆえわからない。
よって、そのつもりで見積もりよりもかなり余裕持って計画を立てておくことが必要になる。
このあたりについては、卒業研究のスケジュールを考えるという記事を書いているので、こちらも参考にしてほしい。

毎日取り組もう

学部の3、4年生ともなると、忙しい。
特に卒業研究以外の重要イベントでかなりヘビーなものが入り込んでくる。
就活、就職試験、教育実習にインターン等々。
で、学生さんをみていると、これらのイベントの期間は研究をやらなくなりがち。
これが結構なブレーキになる。

研究は長期間やらないと、やっていることの内容を忘れてしまう。
そのため、久々に研究をやると内容や進捗を思い出すところからスタートとなる。
これがかなり効率を落とす。
よって、毎日ぶっ続けで3ヶ月研究するのと、1ヶ月やって1ヶ月休んでで6ヶ月研究するのとでは、前者の方が圧倒的に研究が進む。
これは大学教員等、研究を仕事にしている者ですらそう。
学生さんを見ていると、1ヶ月全く研究に触れない期間があった場合、やりかけの研究を進めるところに到達するまでに1−2週間はかかる印象。

いやでもちょっと待て。
重要イベントやっている期間中は研究どころではない。
そう反論される方も多いと思う。
それはその通りなので、なにもフルに研究をやる必要はない。
忘れない程度に、1日1−2時間細々とやる、という程度で構わない。
本格的に手を動かすのは無理でも、論文を読んだりそれをまとめたりくらいはできるはず。
研究計画のロジックを見直したり、方法論の枠組みについて考えたりもできる。
この程度で構わないので、毎日手をつけるようにしたい。

ここを間違うと、ただでさえ見積もりが甘い研究の計画が、さらに後ろにずれ込むことになる。
後述するように、卒業研究はかけた時間が論文の質に大きく影響するようなところがあるので、質の低い論文へとつながってしまう。
心したい。

やった時間が質に影響する

卒業研究・論文は、やった時間がもろに質に影響する。
大学院の博士課程くらいになると、基礎的な研究能力にも差が出てくるため、研究にかけた時間=研究の質とはならない。
ただ、学部学生(場合によっては院の修士課程も)くらいだと、研究能力がゼロスタートとなるため、かけた時間に比例して能力が伸びる。
卒論の出来については、明らかにかけた時間の不足によって質が低くなっている場合が多い。
このように、取り組んだ時間がそのまま研究や論文の質に直結する。
そのつもりで研究に取り組みたい。

なお、卒業研究を通じて得られるものは、研究能力だけではない。
ロジカルな思考力、文章力、表現力等々、研究を離れても社会で役に立つ技術ばかり。
これについても、取り組んだ時間分だけ力が伸びることになる。
卒業研究を時間かけずにやることも可能だが、その場合、これらの力を身につける機会を放棄している、と考えた方がいいと思っている。



他にもいろいろ書こうと思ったが、少し長くなったので続きはまたそのうち。
では、また。




f:id:htyanaka:20210125223552j:plain 休日の大桟橋埠頭。


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2021/01/25 22:34
お忙しいね。
自宅にて。


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Update 2021/01/25
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