前回の続き。
コロナ対応授業の想定文句とその言い訳。
今回は授業以外のいろいろについても触れてみる。
内容は所属機関を代表するものではなく、あくまでイチ私見なので、その辺よろしく。
ほとんどの人が大学の周りにいるのだから対面授業にしたらいいのに
これもたまに耳にする意見。
県境をまたいだ移動が制限されていた頃によく聞かれた。
自分の周りはほとんど大学の近くにいるのだから、対面でよいじゃん、というのが主張の骨子。
特に低学年に多い印象。
ただ、これは難しい。
なぜかと言えば、少数の学生さんが県外でオンライン経由参加をしているから。
大学が移動の自粛を呼びかけているので、この人たちが不利益を被るのは避けなければならない。
上級生になると就活等で県境をまたがなければならない人も多くなる。
大学の近くに戻ってきても2週間は出校停止になるので、これも対面だと不利益を被る。
まだある。
コロナでなくとも僕らは体調を崩すし風邪もひく。
現在はこういう場合もコロナを警戒して出校を見合わせることになる。
そういう学生さんを出席扱いにすることはできるが、授業内容のフォローをするのは難しい。
こういった理由から、対面よりオンラインが勝つ。
対面とオンラインの混在が大変なこと、即時の切り替えが難しいことは、その1で書いた通り。
学費は割り引くべき
私立大学を中心にこの声が上がっていた。
普段と同じ授業や大学生活を享受できないのだから、お金返せ。
一見正しい意見に聞こえる。
ただね。
これは大学側から見ると酷。
と、いうのは、コロナで普段の授業が提供できていないから大学や教員が楽をしているわけではないのだ。
むしろ、コロナ対応のために準備や設備のコスト(時間的にもお金的にも)は増えている。
そうすると、このコストを誰が払うか、ということになる。
当たり前のことなんだけど、これを大学側が一方的に被れば大赤字になる。
なので、これが長期にわたれば大学は潰れるか、コロナ禍の現状を前提としてコストを授業料にのせていくことになる。
コロナ禍という特殊状況下で代替手段のオンライン授業を提供する、という離れ業を同じ授業料でやっている、と見ることもできるわけで、学生さんは視点を変えてこのあたりを勘案してもよいのではないか、とは思っている。
なお、心情的にはコロナで損をしている感、がっかり感を味わっている学生さんがいるのは十分わかっている。
そのあたりのことを考えて、オンラインが対面授業の劣化版にならないようがんばっている教員は多いと思う。
金銭的サポートが足りない
各大学、経済的に困窮した学生さんを救済するために経済的なサポートを行なっている。
これが足りない、もしくは、もらえなかった、という不満を目にすることがある。
まず、大学がなぜこういうことをするか。
これは、いろいろなところから困窮の事例が上がってくるから。
他大で1週間ご飯を食べてなかった学生がいた、なんて話が上がってくると、うちもそういう学生さんがいるかも、と考える。
恵まれている人にはわからないかもしれないが、経済的な背景は本当に人それぞれである。
コロナのせいで家庭の事情が大きく変わったというようなこともある。
もともと、生活費の大半をアルバイトで稼いでいる、という学生さんもいる。
こういうことで、大学を辞めて欲しくない、というのはおそらく多くの大学教員と大学に共通していると思う。
なので、そういう悲しいことにならないように、緊急避難的にできる範囲で経済的サポートをしている、というのが正直なところだと思う。
ただ。
これは本来大学の役割ではない。
特にコロナの場合、全国的にかなりの大学生がこういう状態におちいっていることが考えられる。
日本国憲法第26条第1項には「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」とある。
それを受けて、教育基本法第3条第2項で「 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。」と定めている。
つまり、これは本来国と自治体の役割である、ということ。
なので、かなり困窮している、そういう人が身近にいる、という場合は、このラインに働きかけていくというのも大事。
声を上げる、は、民主主義の基本。
本当はなんとかしたいんだけど、予算が限られている以上大学としてできることは限られてしまう。
特に国立大学は授業料だけだと常に赤字で、国費で補って運営しているので、厳しい。
なお。
経済的に困窮して、退学を考えるほどになっている学生さんは、一度教員に相談してほしい。
いろいろと道が用意されているので、一人で考えるよりもはるかに選択肢が増えると思う。
決して、一人で思い詰めて辞めてしまわないよう。
長くなった。
今日はこの辺で。
ではまた。
ザギンのテンホコ。
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2019/06/21 20:31
休暇中。
鳥取にて。
Update 2020/06/21
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