大学生も高学年ともなると研究が始まる。
これに付随してスタートするのがゼミ。
どうも学生さんと接していると、ここで何を学ぶのかを理解していない人がいくらかいるよう。
そこで、本日はこのゼミについて少し書いてみる。
ゼミで一体なにを学ぶのか。
共通の知識・技能を学ぶ
何人かでゼミをやっている場合、ゼミメンバーの専門領域・研究領域は似ていることと思う。
おそらく論文を読んでも方法論等研究上の技能や基礎として必要な専門知識は共通していることが多い。
そこで、これらについてみんなで学ぶというのがゼミの一つ目の目的。
みんなに共通しているのでみんなで一緒にやった方が効率的。
教員の説明やコメントも一回で済むし、わかんないことは教えあえる。
発表技術や質問力をみがく
ゼミでは当番制で発表がある。
これは今までの講義型の授業と大きく異なる点。
これを通じて、発表技術を鍛えるというのが2つ目の目的。
自分の研究や紹介論文は自分が1番詳しい。
こいつをいかに他人にうまく伝えるか。
これは簡単なようにで結構難しい。
教科書的な正解があるわけでもなく、技法は各自の経験で身につけるしかない。
技術をみがく練習の場として、ゼミを利用する。
自分ではうまく説明できた気になっていても、説明不足なことはよくある。
用意した資料がよくなくて、うまく伝わらないということもしばしば。
教員やゼミメンバーから反応をもらって、問題点を洗い出しては発表の方法を見直す。
これの繰り返しで発表の技術を磨こう。
発表技術は研究だけではなく社会に出てからも汎用的に使えるので鍛えておきたい。
発表者以外は質問力を身につけよう。
質問にはレベルがある。
最初はわからない用語に対する質問等簡単なものからはじめ、次第に問題の本質に迫るような質疑技能を磨く。
詳しくは、 質問力(なぜ学ぶのか、何を学ぶのか 9 ) も参考にしていただきたく。
自分の研究をみがく
自分の研究を発表したり論文を紹介したりすると、ゼミメンバーや教員からいろいろなコメントが返ってくる。
このコメントがかなり役に立つ。
自分では気づけないことって結構ある。
正しいと思って紹介した論文に大きな穴があるかもしれない。
自分の研究計画を発表したところ、思いもしなかった視点からコメントが来るかもしれない。
これらのコメントを書きためておいて、後々自分の研究に活かす。
これは大変役に立つ。
なお、発表者以外にはこういうコメントをすることが求められる。
もちろんゼミが始まった当初は、なかなか難しいかもしれない。
が、ゆくゆくは発表者にいいコメントができるようになりたい。
この辺は持ちつ持たれつの話。
他のメンバーの研究領域を準専門領域にする
わりと忘れられているのがこの視点。
これ、ひょっとすると大学院生クラスでも意識していないかもしれない。
ただ、これ、ゼミの終盤や終わったあとでかなり効いてくる。
よくいるのが、自分の発表の大事さはわかっているのだが、他人の発表に全く興味がないタイプ。
時間に追われている中、なぜ他人の発表なんか聞かねばならんのか、意義を見いだせていない学生に会うことがある。
他人の専門領域が自分とずれているとしよう。
そういう場合、他人の発表は全く役に立たないのかというと、そんなことない。
ここまで説明した、発表技能や質問力、共通の知識・技能を学ぶことはできる。
ただ、ここで強調したいのはそれではない。
1年ないし2年、他人の専門領域の発表を真面目に聞いていると、後半はその領域の内容についても結構詳しくなってくる。
これがね、準専門みたいな知識になるのだ。
発表者にはかなわないだろうが、その分野の重要論文や問題点はおさえられるようになる。
つまり幅が広がるわけだ。
副産物なのだが、これがその後結構役に立つことがある。
卒論発表会では別の研究室の学生の研究がわかりやすくなったり、卒業後の専門知識の一つとなったり。
ムダだと思って聞き流すと、こうはならないのでもったいない。
どうせ同じ時間を過ごすなら有効的に使いたい。
注意したいこと
さて。
ここまで書いてきたことが有効になるのに見落としてはならないことがある。
それは、情報のシェアとメンバーの参加が前提ということ。
この前提がうまく満たされているゼミは得るものが多い。
逆に、全く満たされていないと、ゼミ自体が死んでしまう。
そうならないように教員は働きかけると思うけど、結局のところメンバーたる学生の意識次第のところはある。
全体としてゼミが死なないように、情報のシェアを心がけた発表と、質問やコメント等の参加を心がけてほしい。
ゼミが一人の場合
うちはゼミが一人だよう、という学生さん。
心配しなくていい。
その代わり教員を独り占めできる。
これはこれでかなりのアドバンテージ。
ここまで書いてきたことを意識しつつ、教員相手とのやり取りでこれらを学んでいただきたく。
ではでは。
また。
羽田にて。
しばらく行けないのだろうか。
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2020/06/28 21:06
6月も終わり。
鳥取駅スタバにて。
Update 2020/06/28
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