週刊雑記帳(ブログ)

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本の紹介,「公務員という仕事(村木厚子,ちくまプリマー新書)」

公務員という仕事
村木厚子(著)
難易度:☆


村木厚子さんをご存知だろうか。
知っている、と答えた人は、大阪地検特捜部の冤罪逮捕事件の被害者として、ではないだろうか。
大阪地検特捜部が当時厚労省局長だった村木さんを逮捕。
のちに担当検事による証拠捏造が明らかになって特捜部長以下3名が逮捕された異例の事件。
その時一躍有名になったのがこの人。

が、今回はその話ではない。
厚労省局長、とあるように、村木さんはキャリア官僚。
容疑が晴れた後、復職し、厚労省の次官まで上り詰めたエリート。
そんな彼女が、官僚時代を振り返って書いたのがこの本。

制度・法律がどのようにできていくのか。
この本では村木さんが関わった事例を中心に、それらが出来上がる過程を眺める。
国家公務員として、どのように問題点を見つけ、どのように制度・法律を作っていくのか。
これらについて具体的に知ることができる。
もちろん、これは国家公務員だけでできることではない。
国会議員や学者、他省庁や地方行政。
いろいろな人たち、組織と協力しながら制度・法律が作られているのがわかる。
与党議員、野党議員、財務省など、さまざまな人たちや組織の印象とは違う顔を知ることができたのもまたおもしろかった。

村木さんが勤めていたのは厚生労働省
そのため、保育所不足の話、障害者雇用の話など、福祉系に関する仕事の記述が多かった。
この分野は社会の不満や問題点が多い領域である。
何を気にして、どこを向いて、何が発端で政策が進むのか。
その一端を知ることができる。
SNSでただ声を上げる、それだけでも世の中が変わりうる、ということもわかる。
特別支援系の教員や、福祉関係の人、社会問題に興味がある人も読んでみて損はないので手にとって見てほしい。
もちろん、それ以外の人にとっても行政の動かし方、制度の変え方とその過程は知っておきたい内容。
平易な文章で読みやすく、教養として、進路の参考として、社会をよくする知識として、あらゆる人におすすめな本である。


ところで。
僕は地方の国立大学で教えている。
すると、キャリア官僚になりたい、と相談に来る学生さんがたまにいる。
東大・京大等の有名大学ではない。
そんな自分が、キャリア官僚になんかなれるのだろうか、というもの。
僕の答えは、地方国立大でもなった人はいるし、活躍している人もいるよ、というのが常。
そして、必ず名前を上げるのが村木さん。
村木さんは、高知大学を卒業後、キャリア官僚として活躍した人。
女性のキャリアパスがあまり確立していない時期に仕事人としてのキャリアを歩んだ先達でもある。
この本の内容とは直接は関係ないが、そういう学生さんにもおすすめしたい一冊。


では、また。




津山かな

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2022/08/27 12:08
のんびりモード。
都内にて。



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Update 2022/08/27
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