週刊雑記帳(ブログ)

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専門知識と研究リテラシー(なぜ学ぶのか、何を学ぶのか 10 )

久しぶりのこのシリーズ。
大学生で学んでおきたいものとして、専門知識は外せない。
ただ。
少しだけ気をつけたいことがある。

そもそも、大学で専門領域を学ぶ意義はどこにあるのか。
この辺りをしっかり押さえておきたい。
ただただ、専門知識を身につけたいのであれば、大学でなくてもできる。
それこそ、専門学校や書籍の読み込みで学ぶのでもいいだろう。
では、大学の強みは何か。
それは、知識の生産現場であること。
具体的には研究を指す。
つまり、研究に関するなんらかの能力を身につけなければ、大学で専門知識を身につける意義が激減することになる。
まあもちろん、芸術など実技分野は少し事情が変わるかもしれないが、それでも最先端の創造の現場であることには変わりはないだろう。

さて。
そんなわけだから、研究リテラシーはしっかり身につけたい。
これが身についてくると、テキストの一行や授業のたった一枚のスライドにとてつもない手間がかかっていることに気づく。
そして、テキストの一行の根拠となっている事実(研究)について、具体的にイメージできるようになるため、理解度や得られる知識の奥行きがぐっと増す。
世の中には、ウソの言説や間違いも多い。
これらはテキストについても言えること。
研究リテラシーがあると、これらの真偽を自分の頭で考えて判断することができる。
このテキストの記載、研究ベースではどうやるんだろうか、とか、よくわからないので原典論文を読んでから判断しよう、とか、そういうことができるようなる。
これは、知識の生産方法を知らないとできない。
その場合は書かれていることをそのまま盲信するしかなくなる。
せっかく大学に来たのだから、そうはならないようにしたい。

さあ、その身につけ方。
専門知識はまあよいだろう。
授業を聞いて専門書や論文を読み込んで、という時間をたくさん積み重ねるしかない。
では、研究リテラシーはどのように身につけるのか。
これらは、最初は独学では難しい。
ゼミや卒論指導をうまく利用したい。
ゼミでの論文精読や紹介、批判などは、既存の研究のユーザーになる力を磨くことができる。
その分野の論文を多数読み込むことで、その分野の知識がどのような方法論で作り上げられてきたのかがわかるようになる。
こうなれば、研究リテラシーの半分は手に入ったようなもの。
残りは自分が作り手になってひと通りやってみることで手に入る。
これをやるのが卒業研究。
大変だけれども、やはり実際にやってみることでわかることもある。
知識の作り方の大変さやら厳密さやら、そういうことがわかれば、まあよし。
具体的に意義のある知識が作れたり、おもしろさに触れたりできれば、なおよし。

これを手に入れて卒業していく学生は結構少ないので、少しでも身につけて卒業できれば強い。
ではまた。





横浜のとある片田舎にて。

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2019/09/14 18:57
仕事上がり。
鳥取市内にて。


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Update 2019/09/14
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