週刊雑記帳(ブログ)

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論文とはなにか(研究をしよう 3)

では論文とはなにか。
僕が考えるのはコレ。
なんらかの事実をもとに、ロジカルに自分の主張を展開する文章。
研究をまとめた論文としては事実とロジカルさと主張は絶対に必要。
まあだいたい全学問分野で共通しているのではないだろうか。
これらにプラスして、やった研究の大事なポイント、つまり、
(1)新奇性(New)
(2)意義(Significance)
(3)正しさ(Correctness)
が盛り込まれたものということになる。
やった研究を論文にまとめるわけだから、これは当然。

さて。
これらに加えてもう一つ大事なことがある。
なにかわかるだろうか。
それは内容の精査・批判が可能なこと。
その論文と同じことをやって、同じ結果や主張が得られるか試すことが可能か、が問われる。
この点が学会発表とは決定的に異なる。

なぜ精査・批判が可能でなければならないのか。
それは研究とは、その内容が正しいか、わからない類のものだから。
もちろんやった本人は正しいと思っていることが多い。
しかし、他人から見るとロジックがおかしかったり、事実があやふやだったりして、結論・主張がおかしいことはよくある。
場合によっては本人も結論・主張に無理があることを承知で論文にしている場合すらある。
これを見破らなくてはならない。
そのために必要最低限の精査できる情報が載っていなくてはならないわけ。
学会発表などのプレゼンはどちらかというと情報を素早く伝えることが目的になるので、精査可能な細かい情報までいらない。
代わりにわかりやすく全体を知ってもらう、ということが重視される。
同じ研究の発信でも目的が違うわけですな。

まあそんなわけで、論文どんなもんかはわかっていただけたと思う。
さて。
前の記事で論文から研究を学ぶんだ、みたいなことを書いた。
じゃあどんな論文でもただ読めば学べるか、というと、そういうわけでもない。
なぜならば、世に出ている論文というのは玉石混交なのだ。
よい論文というのは意外に少ない。
分野にもよるが、10本読んで1本も当たりに出会わないなんていうこともよくある。
うまく当たり論文に出会えれば、それを参考に研究や論文の書き方を学ぶことができる。
ハズレの場合は役に立たないかというとそんなことはなくて、それを他山の石として、批判して改善点を考えることで学べる。
最初のうちはゼミや指導教員をうまく利用しないと難しいが、慣れてくると自分でもできるようになる。

ハズレ論文にはパタンがある。
ひとつは研究の要件がハズレなパタン。
これは論文の内容を精査・批判するために必要な情報はあり、論文としてはしっかりと書けているものの、研究内容(コンテンツ)がよくないためにハズレなもの。
こういう論文は勉強にはなるし、学びにもつながる。
自分の研究を考えるときに肯定的な文脈で使うことはできないものの、役には立つ。
そもそも研究をやっていると、思いがけない結果や事実が後から出てきて、研究の要件(特に意義)が下がってしまうことはよくある。
こういう研究を見つけた場合は、同じ著者の別の論文を探すと当たりに出会えることがわりとある。

もう一つのハズレ論文のパタンは、内容の精査が不可能な場合。
これは、もうどうしようもない。
ここの記述が不十分で精査ができないので、研究が信じられない、という評価になってしまう。
例えば、こんな事実があるよ、と引用している先行研究の書誌情報が不十分でその研究論文を取り寄せることができない、なんてのがある。
方法論の記載が不十分で、再現して確かめることができない、なんてのもこのパタン。
研究を学ぶ、という意味では得るものが少なくて、残念。
ただ、なぜか職業研究者が書いたものにこの種の論文が混ざっていることがあるので、注意が必要。

基本的に論文は、この学会誌に載っているから素晴らしい、とか、この研究者が書いたものだから信じられる、といったものではない。
同じ研究者が書いたものでもいいやつもあれば悪いやつもあるので、それぞれ自分で読んで評価する必要がある。
これは載っている雑誌についても同じ。
この学会誌に載っているから無条件で信じられる、といった姿勢は間違うことになるので厳に慎みたい。

論文の評価は、論文から研究を学ぶ上でも大事だが、研究する上で事実を抑える上でも重要。
自分はこの論文の主張は信じて、コイツは信じない。
信じた先行研究の事実の積み上げの上に、自分の研究がのっかる。
間違うとね、自分の研究の価値がガラガラと崩れる。
こわいですな。

今回は論文について、総論的なことを書いた。
次回は論文の種類について書いてみようと思う。




飛行機を、ドアップで。
羽田空港にて。


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2018/08/26 19:35
日曜の黄昏時も終わってしまった。
定番鳥取ドトールにて。


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Update 2018/07/14
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