前回は素朴な理解・知識を中心に書いた。
今回は素朴な理解・知識を超えた、論理的な理解・知識、学術的な理解・知識について。
素朴な理解とは簡単にいうと、経験から得た直感的な理解のことを言う。
それゆえに、素朴な理解は間違いやすい、というのは前回書いた通り。
それを超えた理解・知識として論理的な理解・知識と学術的な理解・知識がある。
まずは、論理的な理解・知識について。
素朴な理解・知識が間違いやすい、そこでそれらを論理で補おうというのがこいつ。
補い方にはレベルがあって、経験を論理で補正するものから、学術的な研究といった高いレベルのものまでいろいろある。
やさしいレベルから高レベルなものまでを順に追っていこう。
なお、具体的な実践方法については文字数の関係で今回は書かない。
簡単なものだと、経験を直感的に使うのではなく、論理的に考えた上で理解していくのがこれに当たるか。
自分の経験から直感的に理解するのではなく、立ち止まって筋道を立てて理解する。
これだけでも、直感的な理解とは異なり間違いが減る。
さらに。
自分や人間の思考のクセを把握して、意識的に補正をするということもできる。
こういう時はポジティブな情報に引きずられて間違った結論を出しがち、とか、こういう精神状態の時はネガティブな記憶ばっか浮かんでくるとか。
そういう、個人としての思考の特徴のようなものは存在する。
こういったクセは間違った理解へとつながりやすい。
個人的特性だけではなく、人間として平均的にこういう時には間違いやすい、というようなこともある。
これらを意識した上で、自分の思考の特徴を補正して正しい理解に進むように工夫をする。
こういうのを心理学ではメタ認知というのだが、論理的な理解としては立ち止まって思考するだけよりは正しい理解に近づく。
個人の経験には限界がある。
これが素朴な理解の大きな問題点だった。
そこを埋めるのが次のレベル。
いろいろな人に聞いてみる、本やメディアから情報を得る、などから他者の経験などの情報を得ていく。
これをもとに、自分の経験を超えた情報をもとに理解をしていく。
聞いたことの情報の偏り、本やメディアの性質なんかを意識して思考すると、よりレベルの高い論理的な理解が可能になる。
自分の外から情報を得る方法を工夫すると、情報自体の正しさはこれまでよりも一層増すはず。
そして。
論理的な理解の極み、とも言えるのが、研究的な理解。
ある学問分野で共有されている、情報収集・論理の方法などを駆使して、この中で最も正しそうな理解へと至る。
その分野の研究の積み重ねとしての共有知識である、間違いやすいポイントを考慮しつつ、確率的に間違いが起きづらい方法を使うので、論理的な理解としては最高峰に位置する。
僕が、大学教育において卒業研究を重視するのも、研究を通じて論理的に考えるジェネラルな力を身につけてほしい、というのが大きい。
これは学術的な理解の超初級レベルと捉えることもできる。
え、じゃあ論理的な理解と学術的な理解は何が違うのか、と思われた方もいるかもしれない。
例えば、文句のつけようがない論理的な理解によって得られた研究の知見があるとしよう。
これが完全に正しいのか、といえば、そうはならない。
というのは、1つの論理的な理解には限界があって、どこかに間違いがあって結論が間違う、ということがありうるから。
そこで、学問分野では得られた1つの研究的な知見について、別の人が自分の研究として再現できるかを試すことがある。
再現できるかを目的とせずとも、発展的な研究の中で再現できるかが報告されたり、関連のある別の研究によって整合性が問われたり、というのはよくある。
こうやって、複数の人が同じ対象を何度も何度も論理的に理解していく中で、あぁこうやって考えるのは正しそうだよね、というのが学問分野・専門家集団の中に共有されていく。
これが、この記事でいう学術的な理解ということ。
1つの研究、1人の意見ではなく、専門家集団の高度な論理的理解であるというのがポイント。
なお、集団の理解の中には素朴な理解の集まりの場合も多くある。
よって、集団で共有されている理解が即正しいとならないということには注意したい。
こう考えると、学術的な理解がどれだけ正しさに迫れているか、というのがわかることと思う。
だからこそ、学術的な理解の内容の一部が高校まで教科書になり、多くの人が学ぶ内容になる。
こんなカタイと思われる学術的な理解であっても完全に正しいというわけではなく、ある日間違いがあることがわかったりするから、おもしろい。
さて、つらつら書いてきた3つの理解の話はおしまい。
気が向いたら、この続きとして、応用編を書くかもしれない。
長くなったので、今回はここまで。
ではまた。
たぶん尾道のかカフェ。
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2025/08/30 17:11
出張中。
川崎市内にて。
Update 2025/08/30
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