週刊雑記帳(ブログ)

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正しいことへの迫り方(なぜ学ぶのか、何を学ぶのか19)

ものすごく汎用性が高く、それでいて役に立つ能力がこれ。
世の中は、間違った情報で満ちあふれている。
もともと正しかったものの、次第に間違いであることが明らかになった事柄。
そもそも最初から事実誤認である事柄。
ひどいものになると、最初から悪意や功名心から正しくない情報が生まれることすらある。
この能力は、仕事で企画を練る時、社会・政治問題を考える時、教養を深める時など、あらゆる場面で役に立つ。

で。
こいつを見極める方法。
実はこれ、大学で身につけることができる。
高校以前の教育で身につけるのはなかなか難しいのもこの能力の特徴。
ただ、大学で身につけることが「できる」だけであり、ぼんやりと過ごしていると絶対に身につかない。
そして、ちゃんとこの方法を身につけて大学を出て行く人、そんなに多くない。

なぜ、それ高校以前の教育では身につけることが難しいのか。
これは簡単で、高校までの教育内容は正しいさについて吟味を重ねた上で厳選されたものだから。
正しいことについて、疑う必要がない。
もちろん疑ってもいいのだが、教育活動の中に、疑うということが位置づけられていない。
正しさを疑って吟味する技能を学ぶこと自体、機会がほとんどない。
教員についても、正しさを疑った上で正しいことを選び取る技術を持っている必要がないがないため、この技能を持った教員に会えるかは運次第。

一方、大学。
大学で学ぶことというのは、最先端であるが故、そもそも間違っている可能性が今までよりも格段に上がる。
そもそも、世の中には怪しい間違った情報に満ちあふれている。
高校までは、正解を教科書に求めるため、怪しげな情報に頼ることもあまりないし、正解もある程度決まっている。
そういう、出来上がった知識体系の中で、正しいとされるものを効率よく学ぶことに力点が置かれた教育だった。
しかし、大学で学ぶ知識は、そこまで完成度の高い知識体系の知識ではないため、絶対的な教科書が存在しない。
そこで、自分で情報源や内容を吟味しながら学ぶという機会が格段に増える。
さらに、知識自体が積み上げられていないことも多い。
この場合は、自分で正しそうな情報を選び、自分で論理的に思考して、正しいとされる結論にたどり着く必要がある。
さらに大学後半で経験する研究は、活動そのものが未知の正しさ、へたどり着くための営みである。
大学教員は研究者であることが多いため、「正しいことへの迫り方」についてはプロの技を持っていることが多い。
なお、卒業後、この能力に長けた先輩上司に出会えるかは全く未知数なので、大学4年間のうちに身につけておくのがよい。

では、どのあたりにこの能力を磨く機会が転がっているのか。
まずは、レポート課題。
これは真面目にやると、かなり力になる。
根拠となる文献を吟味する、ダメと言われている情報源を使わない、複数の文献で根拠となる事実を確認する。
これは情報の取り方に関することで、詳しくは「根拠をWebに求めるな」「正しい情報のための書籍の選び方」にも書いた。
レポート内で論理的に主張を展開して結論に至るなんてのも、レポート課題で磨くことができる技術の1つ。
コツコツとこれをやると、数年後にはかなり力がついているはず。
経験は裏切らない。

それから、自分の専門分野における方法論を学ぶ、というのも大事。
心理学や社会学など、学問分野がある程度確立している分野だと、大学のカリキュラムにおいて方法論系の科目が用意されている。
これはその分野で使う研究上の方法を解説したもので、その分野における「正しさへの迫り方」が凝縮されているもの。
現在学んでいる、概論や専門講義の内容1つ1つも、これらの方法論を駆使して「正しさ」をある程度担保しながら作り上げられている。
方法論を知ることは、それらの正しさを吟味する技を手に入れることである。
しっかりと学びたい。
なお、学際分野などで方法論が甘い場合は、自分の興味ある既存分野(卒業研究を行う分野)に軸足をおいて意識的に方法論を学び取る必要がある。

そして、集大成が卒業研究。
研究自体が、正しさに迫るための営みであるため、これを本気で一通りやっておくというのが有効なのはいうまでもない。
詳しくは他の記事に譲る。

これで、自分の専門分野に関する「正しいことへの迫り方」はある程度身につく。
あとは他の分野への応用。
これは大学を卒業した後に身につけたいこと。
自分の専門分野だと「正しいことへの迫り方」を身につけてる人でも、他の分野だと全くのおバカさんになってしまう例をよく見る。
ただ他の分野の知識についても基本は同じなので、情報・情報源を精査する、専門分野に方法論が存在することを意識する、などを丁寧にやることで、どの分野でも「正しいことへの迫り方」を身につけることができる。
他の分野については、何も自分でその能力を身につけなくとも、身につけている人を見極める術を使うだけでも足る。
このためには、1つの分野の「正しいことへの迫り方」を身につけておく必要がある。
それを身につけることで、他の分野でどんな人が「正しいことへの迫り方」を身につけていそうか、どのあたりの情報だと確度が高そうか、推測することができる。

さて。
今日はここまで。
しかし、このシリーズもだんだん高度になってきた感があるね。




都内かな。
皇居前だね。

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2025/08/17 19:00
休暇最終日。
横浜市内にて。



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Update 2025/08/17
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