週刊雑記帳(ブログ)

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新しい何かと出会う(なぜ学ぶのか、何を学ぶのか17)

生物学を学びたくてこの学部を選びました。
プログラマになりたくてこの学科で学んでいます。
教員になりたくて大学で学んでいます。

大学生と話していると、時々聞く言葉。
目的意識を持って学ぶ、というのはとてもいいことである。
ぜひ目指すものに近づくために、どんどん学んでほしいと思っている。

が、しかし。
目的意識にないから、それは学ばない、ということになると話は違う。
生物学を学ぶために入ったんで、この授業は履修しません。
プログラマになりたくて学んでいるので、教養のこの科目は学びたくありません。
教員になりたくて学んでいるから、関係ない授業は履修しません。
目的意識があるからこそ、目的外のものについてはシャットアウトする。
こういう姿勢の学生は少なくない。
しかし、これはもったいないなぁ、と思う。

そもそも。
高校生までに学んだことなんて、世の中にある知識のほんのちょっと、かなり限られた分野のことにすぎない。
あまたある学問分野のうち、基礎的で汎用性の高い、世の中に出て役に立ちそうなものだけが選び抜かれて、高校までの内容を構成している。
例えば。
外国語は高校までだと英語1種類のみしか学ばないことが多い。
フランス語、ドイツ語、中国語などの外国語には大学で初めて触れることが多い。
教育学や心理学、社会学など、大学に入って初めて学べる学問分野もまた多い。
高校で学んだ学問分野についても、大学では研究を交えた話になるので、高校までとはまた違った知識となる。
つまり、大学生になってはじめてお会いできる新しい分野や知識、というのはかなり存在する。

一方で、目的意識が固まっている人の場合。
その目的意識は、高校生までの知識と経験に方向付けられていることが多い。
しかし、高校生までのは知識と経験かなり限定的なもの。
そうすると、知らないがゆえに定まった目的意識ということにもなる。
まあそれは仕方ないことなのだが、問題となるのは目的意識にないことは学ばないと決めてしまっている人の場合。
この場合、知らないことは知らないままになってしまう。
大学で新たに出会う学問分野や知識の中には、ひょっとしたら別の目的意識につながる情報があるかもしれない。
今目指している目的意識にプラスしてより深い学びを考えるきっかけがあるかもしれない。
目的意識の根底にある何かまで立ち返って、新しく知ったことがらから新しい目的意識が出てくるかもしれない。
目的意識にないことは学ばない、と決めてしまうと、こういう出会いを丸ごとシャットアウトしてしまうことになってしまう。
自分の可能性をつぶすことになってしまっているのにお気づきだろうか。
初志貫徹して目的を達成したとしても、視野が狭い人間になっていることは間違いない。
もったいない、とはそういうこと。

教員になるつもりで大学に進んだら、福祉や医療という考えもしていなかった分野に興味を持ち、そちらに進むことになった。
プログラマになるつもりで大学に来たのだけど、脳の情報処理がおもしろくなり、生理学分野の大学院に進んだ。
教養の科目を真面目に受けたらめちゃくちゃおもしろくて転学部してしまった。
人の悩みに寄り添いたくて心理学を専攻したところ、その道具立てである統計学の方がおもしろくなって極めた。
医学科に進んだのだけど、数学科の授業に混ざって数学という学問を楽しんだ。
大学においては、こういうことがあって然るべきだと思っている。
新しい何かと出会うんだから、その後の人生もまた変わっていい。
だから、大学っておもしろいし、人生もおもしろい。
結果として初志を貫徹したとしても、視野が広くて深い人間が出来上がる。

そんなわけだから。
大学では、新しい何かと出会う、ということを大切にしてほしい。
目的意識があればあるほど、新しい何かとの出会いをシャットアウトしがちになるので、意識的に。
将来に繋がったとしても繋がらなかったとしても、人生は豊かになるはず。

では、また。




たぶん、鳥取空港に向かう道


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2025/06/29 20:29
今日はたくさん書いた。
南町田タリーズにて。



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Update 2025/06/29
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