週刊雑記帳(ブログ)

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本の紹介,「図解 内臓の進化(岩堀修明,講談社ブルーバックス)」

図解 内臓の進化 形と機能に刻まれた激動の歴史
岩堀修明 (著)
難易度:☆☆☆


呼吸をする、栄養を吸収する、それを運ぶ、いらないものを捨てる。
我々人間が日々意識することなく行なっているこれらのことは、どういうメカニズムで実現されているのだろうか。
この辺については、高校の生物基礎あたりで扱う内容で、大学だと解剖学や生理学といった分野で学ぶ。
学んだことある人だとわかると思うが、かなり巧みな仕組みで実現されている。
知れば知るほどその巧みさを理解し感動するのがこの分野のおもしろいところでもある。

さて。
本書はそんな身体の仕組みについて、進化の視点から迫ったもの。
ガス交換の系である呼吸器系、栄養吸収の系である消化器系、血液からいらんものを捨てる系である泌尿器系、2個体から新たな性質を持つ個体を作り出す系である生殖器系、ホルモンを使って身体を調節する系である内分泌系。
これらのシステムごとに、動物比較を行うことで、その進化を考えていく。
最後には全く別の進化をたどった、昆虫の身体の仕組みについても扱う。

例えば、呼吸器系。
魚類ではどのように酸素を取り入れ、それが魚類の中の種ごとにどう違うのか、形態を図示し生息環境を参考にしながら進化を考察していく。
魚類の後は、陸に上がった両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類と比較し、その形態と機能の違い、どこがどのように変化してヒトの呼吸器系になっていくのかに思いを馳せる。
ほほう、魚ではそうやって酸素の交換を行なっているのね、あ、えらのその部分が肺に進化していくのね、などと図を見ながら感動とともに進化を追っていくことができる。
各系とも、知らないことや、その生息環境だとそう工夫するのか、というようなことが満載。
呼吸器系だと、魚類の段階で肺を持つものが現れ、乾季にこれが生存競争の生き残りに有利に働き、この器官を発達させすぎた種が逆に水に戻れなくなった、という考察がとてもおもしろかった。

この本の特徴は、その図の豊富さ。
著者の岩堀さんは解剖学者で、解剖学者が書く本らしく、詳細に器官を描いた図がふんだんに使われている。
原始的な魚の器官から、ヒトの器官まで、さまざまな臓器の図を見ることができる。
比較解剖学(様々な生物の構造を比較検討する学問分野)の本は、専門書だと数万円するものが多い中、1000円強でこれが読めるのはかなりお得。
形をただ羅列するだけでなく、本文で機能面(生理学)の解説を平易に行い、その機能と進化について理解を深めることも可能な構成になっている。

生理学や解剖学、身体の構造と機能(解剖生理学)などを学ぶ大学生の副読本としておすすめな1冊。
生物学だ大好きな高校生、一般の人もまた楽しめるか。
僕の教える生理学系の授業の副読本調査用として読んだのだが、僕自身が楽しむことができたので、ヒトの正常機能をある程度知っている人でもおもしろく読めるかもしれない。
いいよ、この本。
なお、岩堀さんの本は「図解・感覚器の進化」というのもあって、こちらもまたおもしろい。
おすすめです。

では今回はこの辺で。
また。




備後落合という、奥の方の駅にて

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2025/06/28 18:36
横浜週末の回。
中央林間のタリーズにて。



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Update 2025/06/28
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