週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

研究の現場を読む(雑学・読書のタネ5)

僕は研究者の書いた、研究記のような読み物が好き。
世の中には想像もできないような研究分野があって、多様な研究者が日々自分の研究に取り組んでいる。
もともと研究の現場は世間様から見るとちょっと変わっていて、研究者はもっと変わっている。
これは同業者から見てもそうで、研究業界で生きている僕から見ても想像もつかないような研究分野があって、ぶっ飛んだ研究者がいる。
その人たちが描いた彼らの研究記は、下手な小説よりも波乱と冒険に満ちあふれていて、なかなかおもしろい。
研究室にこもって調査したり実験したりというような研究分野で生きている僕からすると、想像もつかないような研究生活が展開されていて、モノによってはほぼ冒険物語。
これがね、とてもおもしろい。

今回はそんな研究記から、いくつかお気に入りの本を紹介する。
なお、これらの本に描かれた研究の世界。
大学生が大学生活の後半でやる卒業研究や大学院生の研究とゆるやかにつながっている。
自分も学生時代の研究としてこんなことを、、、という場合もないわけではない。
そう考えると、ちょっと身近な物語としてこれらの本を読めるのではないだろうか。
ぜひ、研究者の少し変わった非日常な世界を楽しんでほしい。

高崎山のサル

「高崎山のサル」、伊谷純一郎(著)

イチオシはこの作品。
ニホンザルの生態がわからない。
そいつを明らかにするために若い研究者が大分の野生の山に入ってフィールドで調査をした研究記。

霊長類研究の草創期に、群れで過ごすニホンザルにどう迫るのか。
試行錯誤と調査の実際を追体験することができる。
群れのリーダーとの対峙、離れザルと群れのリーダの対決など、読み応えのあるシーン満載。

僕は研究室の中で研究することが多いので、こういう世界もあるのかと感心した本。
迫力があっておもしろい。
研究をしていた当時の筆者は20代中頃なはずで、その点もすごいと思ったポイント。
生物学系フィールド調査をメインとした内容。

詳しい紹介記事はこちら

バッタを倒しにアフリカへ

「バッタを倒しにアフリカへ」、前野ウルド浩太郎(著)

こちらも生物学系の研究記。
バッタの若手研究者が、野生のバッタについて研究しようとアフリカのバッタの研究所に赴いた時のことを描く。
筆者の前野さんは僕の1つ上の研究者で、博士号取得後にアフリカに行った時の話がメイン。
もともと、研究室ベースでのバッタ研究は行っていたものの、野生のバッタは知らないな、というところから話は始まる。

文体はかなり軽妙で読みやすい。
これもフィールド調査を主とした内容だが、時期によっては実験室レベルの研究の話も出てくる。
僕ら世代の、博士号取得後の不安定な身分の実際についても触れることができる。

博士課程に進学しようか否か悩む、修士課程くらいの院生にもおすすめ。

ヤンキーと地元

「ヤンキーと地元」、打越正行(著)

お次は文系の研究記。
若い社会学者がヤンキーの社会について調べていく。
調べ方が独特で、街の暴走族に声をかけては研究のために仲間に入れてもらおうとする。
そうやって、うまく仲間に入れてもらったら、今度はパシリとなって、仲間でも本物のパシリでもない、ちょっと特別なポジションに位置どり、不思議な信頼を得ていく。
そうして、内側からヤンキーの社会を観察し、記録をつけていき、彼らの社会を描き出す。

文系の人にもおすすめ。
文系の研究って何するの?と思っている理系の人にも読んでほしい本。
おもしろい。
なお、この本も筆者が修士の院生くらいから始まるので20代中盤から若手時代の研究。
そう思って読むと、なおすごいと感じることと思う。

詳しい紹介記事はこちら

遥かなるケンブリッジ

「遥かなるケンブリッジ」、藤原正彦(著)

最後は、昔の数学者の留学記。
筆者の藤原さんはのちに「国家の品格」というミリオンセラーの新書を書いた人。
昔から専門外の文章がうまく、30代前半で書いた「若き数学者のアメリカ」も有名である。

「遥かなるケンブリッジ」は、40代中盤でイギリスのケンブリッジ大学で1年間在外研究員として過ごした時の日常を記したもの。
イギリスの大学の雰囲気、数学という領域の研究様式などに触れることができる。
研究の内容には深く触れないが、厳しい研究の世界を垣間見れる。
アメリカのスタイルとは違った、イギリス的な文化を知ることができるのもおもしろい。

イギリスの大学というと、苅谷剛彦さんの「イギリスの大学、ニッポンの大学」もおもしろいが、こちらは研究を知るというよりは教育を知る、といった風が強い。


と、いうわけで、研究の現場を読む本のオススメをいくつか紹介してみた。
他にもいい本はたくさんあるのだが、それについては、本の紹介シリーズに上がるのを拾っていただければ幸い。

では、今回はこの辺で。
また。




横浜の港の大型客船。

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2025/05/04 18:34
GW2日目。
横浜市内にて。



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Update 2025/04/03
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