週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

ステージ別論文の読み方 その2 中級者編( 研究をしよう46 )

前回の続き。
論文というのは、目的に合わせて読み方が異なる。
その初級者編までは書いた。
今回は中級者編について。

初級者については、卒論生で3年生前期、修論生で始まって半年くらいが時期の目安。
中級者は、3年生後期、修論生だと後期前半くらいを目安として念頭に置いていただいたらいいと思う。

中級者の論文の読み方

ある程度、論文が読めるようになった。
方法論も身について、分野で研究されていることについてもざっくり知識がついた。
すると、次の段階として、研究テーマを決める、という段階へと進む。
これが、中級者の最終目標ということになるか。

そのために、この段階でやりたいことを3つ紹介する。

中級者1:研究分野を深掘りする

どんな研究が行われているか、ある程度学問領域の研究分野の分布がわかってきて、自分の興味もわかってくると、次は自分の研究テーマを決めるという段階へと入る。
これを行うためには、研究分野の深掘りを行う必要がある。
研究というのは、先人たちの研究と比較して、新しく、やるだけの価値(意義)がなければならない。
特に「新しい(誰もやっていない)」という部分に関しては、その研究分野の深掘りをしないとわからない。
これは、指導教員がプレイヤーとして研究をする場合でもそうで、新しい分野にて研究を行おうとするときは、とにかく徹底的に論文を読みまくって調査を行う。
基本的に指導教員は広さをカバーしていることはあるが、深さはカバーしていないことが多い。
指導教員が過去にその分野の研究を行なった、とかでない限り、自ら調査していることは少なく、過去にやっている場合でも知識としては古くなっていることがほとんど。
よって、中級者からは、分野の深い知識の面においては指導教員を凌駕する必要が出てくる。

そのために。
まずやることは、研究分野を決定すること。
これは、社会心理学とか発達心理学、とか教科書が1冊あるような大雑把な分野ではなく、もっとピンで狭く絞り込んだ分野を指す。
抑制機能の発達、とか、皮肉の理解過程、とか、漢字を思い出す時の認知過程、とかそういうかなりピンの狭い分野を決める。

どうやって決めるかといえば、これはもう時間と相談をしながら直感で決めるしかない。
自分がおもしろいと思う分野というのをベースに、研究可能な目的や方法が何か浮かびそうか、というあたりがヒントになる。
ただ、どうあってもこの段階で1つに分野を絞り込めないということであれば、2、3の分野を同時並行で深めていく、というのでもいい。
とにかく深さを追求する。
ただ、分野を絞りきれていない場合はその分深さが犠牲になる。
よって、深さ追求をしながら、なるべく早い段階で分野を1つに絞った方がいい。

どうやって、深さを追求するのか。
まず自分の興味を持っている分野に関するキーワードを決める。
そして、そのキーワードで論文データベース(CiNii、PubMed等)で検索をかけて、数百本の論文が引っかかるようになるようにする。
多すぎる場合はキーワードが足りないのでキーワードを追加して数百本くらいになるようにする。
少なすぎる場合はキーワードが狭すぎるので、もう少し広くひっかかるような大きなキーワードに変更する。
例えば、「うなづく」ということに興味があったとする。
この場合で「うなづき」で検索しても論文があまりひっかからないということであれば、「仕草」「非言語コミュニケーション」というように、上位の概念に変更してみる。
少なすぎる場合、研究が本当に少ない場合もあるので、まあ100くらい引っかかるくらいになればとりあえずよし。

あとは、データベースの検索画面に出てきた論文リストを全て印刷し、上から片っ端に当たっていく。
データベースでひっかけてきた論文というのは、自分の読みたい分野の研究でないことが明らかなものも含む。
よって、まずは論文タイトルで選別をかけ、関係ない論文を除く。
ちょっとでも関係ありそうであれば、次は要旨・アブストラクトを読んで、分野の論文なのかを判断。
分野の論文であれば、避けることなく、読むリストに入れる。

そうやって、ある程度読む論文が決まったところで、あとはひたすら読んでいくことになる。
論文100本読むと自然と自分の研究テーマ・目的が出来上がる、というのはうちの学生によく言うことで、そのくらいは読む必要がある。

ただ、ここで重要なことがある。
1つは、批判的に読む、と言うこと。
その研究はどういうモチベーションでやられて、何がわかって、問題点はどこなのか、改善できるとしたらどんなことができるか。
この辺りを考えながら、1本1本丁寧に読んでいく。
そして、もう1つが、記録をつけること。
印刷した論文、デジタルの論文ファイルなどに、手書きで上記のポイントたちを書き込んでいく。
研究ノートを持ち歩き、読むたびにそのノートにこれらを書き込むのもよい。
で、これらのメモをもとに、エクセルなどを使って自分で作った論文データベースに登録していく。
この辺りは、文献を整理しように書いてあるので参考にしていただいて。

中級者2:研究テーマを決める

中級者の目標は研究テーマを決めることである。
研究の目的、と読み替えていただいても構わない。
具体的な研究テーマ・目的を決めて、研究計画を立てる前段階に立てれば目標達成。

で、どうやるのかと言えば、分野の知識を深めていく中で出てきた問題点に対して、自分の研究で扱えそうなものをいくつかピックアップする。
参考になりそうな、重要論文を再度丁寧に読み直し、本当にそのテーマ・目的で行けそうなのか、熟考する。
さらに、そのテーマ・目的に関係しそうな論文はないか、検索で引っかかってこなかった論文を、検索キーワードを変えて探す。
重要論文に出てくる参考文献の中から、読むべき論文、気になる論文も取り寄せて読んでみる。

ひたすらこれを繰り返していくことで、研究テーマを中心してマニアックな知識が凝集する。
ここまでできれば、次の研究計画の段階に進める。

中級者3:論文検索技術を身につける

この段階で磨くキーとなる技術が、論文検索の技術。
検索技術というのは、最初から身についているものではなく、実践をしていく中でだんだん磨かれていくもの。
中級者になったばっかりの段階ではこれが未熟なことが多い。
うちのゼミ生の場合、だいたいは、わからんから教えろ、と言われ、一緒に検索をしながら身につけていってもらうことになる。

論文を探す技術とは、論文データベース検索技術だけを指さない。
広くは、引用文献欄を用いた重要論文の釣り上げなど、必要な論文にたどり着く技術全般を指す。
データベース検索からスタートして、先人たちのやり方を参考にしながら技術を高めていってほしい。
この辺りは、上級生がエキスパートだったりすので、彼らが卒業・修了する前に教えてもらう、というのもあり。

なお、検索技術については、上級編で駆使しまくることになる。
早めに身につけてしまいたい。

文献の探し方に関しては以下の記事も参考にしてほしい。
研究を探す〜論文編
研究を探す〜論文以外編


おしまい

今回でこのシリーズ〆る予定だった。
が、長くなってしまったので、もう一回だけ続く。
次は、上級者編+研究者編。

では今回はこの辺で。
また。




横浜の夜景。

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2025/05/05 15:30
のんびりモード。
定カフェ、南町タリーズにて。



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Update 2025/05/05
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