前回は、学会のお仕事、という当事者も業務なのか否かよくわかっていない、摩訶不思議なお仕事を紹介した。
今回はその続き。
研究者のお仕事の1つに、論文を書く、というのがある。
研究を計画し、実行し、結果を吟味し、一定の結論を導く。
その後、世間様に公表するところまでがお仕事。
その方法のメインのものが論文の発表、ということになる。
論文には、主に2種類のものがある。
1つは査読ありの論文と呼ばれるもの。
学術雑誌ごとに、審査を課すか否かが決められており、この審査のことを査読という。
査読ありの学術雑誌に載せる簡単なプロセスは以下の通り。
①論文を学術雑誌に投稿する
②雑誌編集者が受理・査読へと回すかそのまま断るかを判断(ダメならここでおしまい)
③複数の査読者へ論文の査読を依頼、査読レポート求める
④返ってきた査読結果から、掲載可否を決定(可の場合、ここでおしまい。可否の決定が難しい場合は③に戻って別の査読者へ追加依頼)
⑤掲載否の場合、査読レポートに対応した改稿を求めるか、掲載拒否にするかを決める(掲載拒否ならここでおしまい)
⑥改稿論文について③に戻る
とまあこんな感じ。
査読についての詳細は、
論文の種類〜査読(研究をしよう 4) を読んでいただいて。
で。
問題は、この査読者やら編集やらを誰がやっているか、ということである。
勘のいい読者の皆様はお気づきのことと思う。
そう、その分野の研究者の誰か、つまり大学教員・研究者がやっている。
この仕組みをピア・レビューという。
ピアは仲間、レビューは審査のような意味で、分野の近い研究者仲間で審査しあうことで、研究論文の質を上げよう、という意味合いがある。
査読ありの学術雑誌はこのピア・レビューの仕組みで動いており、質を担保している。
ピア・レビューはその精神が、仲間内で分野の研究論文の質を担保し合おう、というところにある。
よって、基本的に無償ボランティアであることが多い(僕はそれしかやったことがない)。
論文の投稿なんていうのは、四六時中行われるものなので、こちらの都合などお構いなしにやってくる。
もちろん、断ることもできるのだが、まあ学会という狭い世界で、自分も査読してもらうことがあるため、断りづらいものである。
だいたい、頼んでくる編集者が知っている人だったり、編集者が重鎮の先生に誰かいないか聞いた上で紹介を受けての依頼だったりもあるので、そういった場合はいよいよ断りづらい。
まあ、しがらみの中の自治会活動、のようなもので、道義的にも人間関係的にも、やらざるを得ないという種類のお仕事。
なお。
編集者が知り合い、ということを書いたが、この編集者もまた研究者である。
ファッション誌のような一般の商業誌と違い、学術誌は学会が主催して編集して刊行している。
体裁を整えたり紙に印刷したり電子版を公表したりといった部分には出版社が関わるが、内容に関する部分は学会に所属する研究者の誰かが扱うということになる。
よって、編集長以下編集者もまたボランティアで、研究者が分掌するということになる。
その査読。
ある日突然、依頼のメールがやってくる。
数日以内に受ける受けないを決めてね、というもの。
もちろん英文誌であることも多い。
で、受けると、今度は査読レポート提出期限のもと査読を行うことになる。
査読期限は、僕の分野だと2週間から1ヶ月くらいか。
査読レポートは分野や雑誌によって、その長さが異なるのではないだろうか(全分野のことはやったことがないのでよくわからない)。
ただ、論文投稿者にとって手間ひまかけて作成した大事な論文。
こちらも、それなりに手間ひまかけて査読レポートを作成することになる。
作成する査読レポートの長さは、投稿された論文の質に依存する。
1番楽なのは、とてもいい論文で直しがいらない場合。
greatだからpublishをrecommendすると書けばいいだけなので、たいした英語能力も必要なくおしまいになる。
が、そんないいものにはあまり巡り会えない。
すると、逐一、ここはどうなっているのか、ここのロジックが甘い、この結果からはこの結果は言えん、分析間違ってないか?などと査読レポートを書いていくことになる。
論文とまではいかないが、査読レポートがミニ論文みたいじゃん、みたいになることは、まあある。
これを期限内に仕上げなくてはならない。
なお、これの後ろでは授業や卒論指導、自分の研究などの通常業務が回っている。
そして、その査読の依頼は、重複することもままある。
先日も同僚の先生が「今査読が3つあるんですよー、大変です。」といっていた。
ね、結構大変でしょ。
じゃあこれが大学の業務か、と言われれば、これは 前回書いた学会のお仕事編 と同様、大学の業務とは主張しづらい。
まあ、査読を通じて最新の研究動向を察知し、自分の研究を進めるのに活かす研究活動、と言って業務と言い張るくらいしかできない。
少なくとも、「今査読忙しいんでその仕事は勘弁」みたいな言い訳には使えない。
ね、大変なんです。
なお。
このピア・レビューシステム。
論文の査読にとどまらない。
例えば、研究費の審査。
我々は科研費(国のコンペ型研究費)をはじめとして、外部の審査付き研究費を獲得してくる。
この審査もまた、ピア・レビューの仕組みで成り立っていることが多い。
例えば、外部研究費で1番大型の科研費はこの仕組みによる。
審査員になると、すごい数の研究計画書が送られてきて、それを夜な夜な、、、、いやあ大変。
と、まあ、悲哀が出てきたところで、本稿はそろそろおしまい。
では、また。
東京駅ですかな。
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2025/02/23 16:34
コーヒーを飲みながら。
鳥駅スタバにて。
Update 2025/02/23
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