週刊雑記帳(ブログ)

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学部生を学会へ連れていく(教育奮戦記13)

学部学生を学会へ連れていく。
数年前から新たに始めた教育実践。
もともと、研究好きなゼミ生が現れて、学会に興味を持ったのがスタート。
その後、誘ってみると、わりと行きたいと言ってくれるゼミ生が多いので、定期的に声をかけることにした。
参加学生はゼミ生がメインで、2、3年生がメイン。
ゼミ生以外を連れていくこともある。
4年生にも行ったらいいと勧めるものの、大忙しで無理ということが多い。

これは、学生・教員双方から驚かれる。
院生ならともかく、学部学生はハードルが高いのではないか。
内容が高度すぎてわかる気が全然しない。
学生側としてはこんな意見が多い。
教員側も似たような意見。
加えて、声をかけても来てくれない、というのも聞く話。

僕が勧める学会は、ポスターセッションがある学会が多い。
これがあることが学部生に学会参加を勧める大きな理由になっている。
ハードルは思っているよりも高くなく、卒論に向けていろいろと学びが多い。
チュートリアルとか教育講演があるとおススメ度が上がる。
これらにプラスして口頭発表を聞くというスタイルを想定している。

なぜポスターセッションがいいのか。
これがあると、学会の会場を歩いたりプログラムを眺めたりするだけで分野横断的にやられている研究たちを知ることができる。
これがねらいの1つ目。
教科書でその分野の知識を知ることはできるのだが、現在その分野でどんな研究が行われているか、流行っているかは、教科書からではわからない。
学会誌を定期的に読む、専門書を定期的にチェックする、くらいしか現在の研究の流行りを知ることはできないのだが、これは研究者か院生でないときつい。
学会に参加して、ポスター会場を眺めるだけでも、一体どんな研究が行われているのか、ざっと知ることができる。
こうやって、将来の卒論のテーマ探しをやってもらう、というのがねらい。

ポスターにはもう一ついいことがある。
これは、発表者と対話的にやり取りをしながら研究内容について聞くことができるところ。
ポスター会場を歩きながら、興味持ったポスターの内容を教えてもらう。
内容は通常高度で、書籍や論文ではよくわからないようなものでも、対話形式だと理解が可能なことが多い。
たいていは、相手の知識レベルに合わせて教えてくれるので、口頭発表や書かれたものから学ぶよりも格段に入ってくる。
まわりの院生や研究者が質問をしているのを聞くのも勉強になる。
他人の質問、それもレベルの高い者の質問は質問力を鍛えるのに有効。

それでも、学部2年生、場合によっては3年生でも早いんじゃないか、と思われる方もいるかもしれない。
が。
これもねらいの一つ。
学会に連れていく場合、全くゼロの状態で連れていく、というわけではない。
2年生の場合は、心理学の方法論を一通り扱った上で、それ以上の学年の場合は論文なんかはいくらか読んでいる状態で行く。
その上で、教室で学んだものの実際の研究を見に行こう、というスタンスで連れていく。
こうすることで、学んだことのうち身についているものを利用して研究を理解することができる。
ただ、学部2、3年生だと、発表を聞いてもわからないことが結構出てくる。
統計や、方法論、語学の壁などもあるか。
質疑についていけないということもあろう。
わからないことを経験してもらう、というが結構大きなねらい。
わからない部分、自分に足りていない部分がわかるので、帰ってきてから勉強をして、次に学会に行くときにはもう少し基礎力をあげて参加してくれる。

他にもある。
ポスタ発表は研究の論理構造を学べる。
口頭発表だと、研究プレゼンの技術を学べる。
特にうちのような地方国立大で博士院生やポスドクがいない部局の場合、先輩の背中を見て学ぶことができない。
学会の院生や若手研究者など、歳の近いキラキラした人たちから学べることは多い。

しかし。
いちばんのねらいは別のところにある。
学会発表だと、学部の時の卒論のネタが結構発表されている。
院生や社会人になった本人が発表していたり、教員が代わりに発表していたりと、さまざまだが、数はわりとある。
それらを見てもらって、そのクオリティを目指して卒論に取り組もう!とモチベーションを上げてもらいたい、というのがねらいの1番大きなもの。
中にはものすごくしっかりした卒業研究ベースの発表があり、おどろいて帰ってきたりする。
自分もやれる、と思って研究に打ち込んでもらい、成長してもらいたいなぁ、と思って連れて行っている。
研究は打ち込んだ時間、みたいなところがあるので、卒業研究がとてもいい研究で学会発表どころか、学術誌への発表だっていける、というのはある。
プロが適当にやった研究よりも、思い入れが強い卒論生が全身全霊で打ち込んだ研究の方がいい、というのはあっても不思議ではない。
まあ、その辺りに願いを込めて、連れていくという取り組みをしている。

なお、学会前準備教育として、学会へ行こうシリーズを読んでもらっているので、実践しようと思った同業の先生、これらについてもご活用いただければ幸い。

では、今回はこの辺で。
また。




横浜かな。


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2024/09/14 14:33
アイスティーを飲みながら。
鳥駅ドトールにて。



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Update 2024/09/14
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