週刊雑記帳(ブログ)

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分析を見据えたデータの取り方を考える(研究をしよう41)

研究計画のイントロが仕上がり、目的が出来上がる。
研究目的に対応した、方法に関する計画も上がってくる。
方法論については、質問紙なのか、面接なのか、実験なのか、といった大きなくくりから、どんな内容でどんなデータをとるかという細かいものまで書かれている。
と、ここまでは、計画段階で出来上がっていることが多い。
問題はこの先。

僕はこの段階の研究計画を見て、以下の2点を質問する。
(1)どんな分析をするのか
(2)その分析の結果、どんな結果が出てくるとうれしいのか
学部卒論生だと、ここでビシッと答えられない人も多いのではないだろうか。
本格に研究をするのが初めてな大学院生修士クラスでも答えられない人がいる印象。
(さすがに、博士院生クラスだと大丈夫なはず)

さて。
これらの質問にはどういう意味があるのか。
まず、(1)どんな分析をするのか。
そもそもこれは研究目的があっての方法であるはずだから、答えられないのがまずい。
研究目的を達成するためには、データをとるだけでは不完全。
取ったデータにどんな分析をかけるか、までがセットでなければならない。
これが答えられないということは、研究目的と方法論の対応がよくわかっていないということを意味する。
答えられない場合の多くはとりあえずデータを取って、取った後で考えようということなのだと思う。
特に卒論や修論等期限のある研究の場合、時間が迫っていて焦ってデータを取りたがる傾向がある。
データさえとればなんとかなる、と思いがち。

だが、しかし。
これは大いなる間違い。
確かになんらかのデータを取りさえすれば、何かは発表できてしまう。
が、それが研究目的にあったものになるか、というとそうなるとは限らない。
例えば、質問紙でデータを取ってきて、男女間で平均値に差があるか調べたいとする。
その場合、質問紙は平均値の計算をしてもいいような作りになっていないといけないし、男性と女性での人数も分析に耐えられるような人数でなければならない。
分析方法が、それ以前のデータの取得の仕方に縛られるのだ。
その質問紙の聞き方では平均値は出せない(出しても意味がない)よね、とか、その男女の人数では統計分析かけても何も出てこないのが普通だよね、とか、そういうことが発生する。
聡明なみなさまはお気付きのことと思うが、データを取り終わった段階でこういうことが出てきた場合、もうどうしようもない。
データというのは、その後の分析を見据えて取ってくるものなのである。
はい・いいえで聞くのか、とても当てはまる〜全く当てはまらないの5段階で聞くのか、はたまた、自由記述で聞くのか。
人数は何人くらい取るのか、グループに振り分けてデータをとるのか、一人の人が何パタンも質問に答えるのか。
これらはその後の分析によって決まる。
で、データ取得前であればこれらはいくらでも直すことができる。
繰り返しになるが、データ取得後に分析方法を考えても、それはできない、ということは往々にして起こる。
そして、その分析ができないがゆえに、研究目的が達成できない、ということになってしまう。

そういうわけだから。
研究計画の段階で、具体的な分析まで考えて、データ取得も含めた方法論をしっかりと固めてからデータ取得をスタートしたい。
どうしても具体的なデータがないとわからん、という人は、少人数の予備データを取って、一回分析をやってみて手直しをしてから本番のデータ取りにはいるようにする。
これを徹底するだけで、研究をまとめる段階でかなり楽になるし、研究全体がグッといいものになる。
なお、データを取った後で、これどう分析したらいいでしょうか、という質問を受けることがあるが、基本的にどうにもならないことが多い。
データは目的を達成するために最適なものを取得すべきで、そうじゃないものを後からなんとかするのは難しい。
このあたりは、研究をやったことない人にはわかりにくい部分かもしれない。


次に(2)の質問、どんな結果が出るとうれしいのか。
意図は2つ。
研究目的と分析を含めた方法論の対応関係を理解しているか。
これはここまでに書いたことと同じこと。
理解していれば、これはすんなり出てくるはず。
これが出てこない場合は、研究目的と方法論の対応関係を理解していないか、場合によっては研究目的が焦点化されていないことも。
データを取る前になんとかしたい。

2つ目の意図。
これは、他に考えられる分析の探索やそれに備えた方法論の練り直しを促すこと。
うれしい結果以外にも、目的を達成するための別の分析も考えられるかもしれない。
方法論によってはデータを取る前に工夫が必要になることもある。
うれしくない結果、予想外の結果が出た時に、あらかじめ方法論や文献調査で備えておく、ということもできる。
うれしい結果であろうが、そうでない結果であろうが、方法論の欠陥でそれが出た、というのは避けたい。
データを取る前に分析方法をしっかり詰めておく必要がある。
そのために、どんな分析でどんな結果を予想するのかは、あらかじめ考えておきたい。

ちなみに、どんな結果が出るとうれしいか、は研究の意義そのものでもある。
長い時間をかけて研究を作っているとわからなくなってしまうこともあるので、計画段階でこれをしっかりと把握しておきたい。


長くなった。
今日はこのへんで。
ではまた。




海芝浦という大変いい駅。

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2024/08/17 16:48
休暇だよ。
東京都内にて。



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Update 2024/08/17
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