大学生になって、読むことと書くことの量と幅が格段に広がる。
読むものは、教科書や参考書にとどまらず、教養のための新書、専門書、論文といった学術に関係あるものから、新聞や小説など、本当に多岐にわたる。
読む量に関して言えば、高校までのそれとは比べ物にならないと思う。
書くこともそう。
調べた上で知識を頭の中で整理して、自分の言葉で書き直すということが増える。
もう少し学年が上がると、自分の考えを文章で表現する機会も多くなることだろう。
大学生と話していると、「書く力」を伸ばしたいのだけどなかなかいい方法が見つからない、と聞くことがある。
書く能力を上げるためには、いい文、いい文章をたくさん読んでおく必要がある。
それについては、別の記事に書いているので、詳しくはそちらを参考にしていただいて。
今日ちょっとそれとは角度変えて、辞書のハナシ。
書く力を伸ばしたい、というか、言語能力を伸ばしたのであれば、辞書をひくくせをつけよう。
特に、書く時に逐一辞書をひくようにしたい。
なぜか。
これは、語彙力と表現力を上げるから。
読む時に比べると、書く時のほうが辞書は効果的だと思っている。
もちろん、読む時にでこれをやってもいいけど、時間がかかるし、意味は推測しながら読むこともできる。
読みながらなんとなく意味をつかんで脳内語彙を増やす、というのは元々我々の基本的な能力として備わっていて、ちびっ子の時からこれを使って語彙力を増やしてきた。
読む時にわからないものをいちいち辞書をひかなくても文脈からなんとなく意味を取れるので、数をこなせば語彙力は勝手に伸びていく。
読む時に辞書を引くのは、どうしても正確な意味を押さえなくては先に進めない、全体を理解する上で重要な時、だけでもいいと思っている。
異論はあると思うが、何よりも読むことを楽しんで数をこなした方がいいという立場。
では書く時はどうか。
書くという行為は、頭の中に表現したい何かがあり、それを文字に落とし込む作業。
頭の中の何か、は、言語の形をとっていないので、自分の内にある語彙辞書を使って文字を当てていく。
ただ、読んで作った語彙辞書は推測で作っているものなので、間違いや曖昧なものが混ざっている。
そこで、当てた文字のうち、曖昧だなぁと思ったものについて、辞書を引く。
元々、頭の中に表現した何かがあるので、それと辞書を引いて得た情報を引き合わせて、その文字が表現したいことに当たるのか確かめることができる。
この作業は大きく2つの点からオススメしている。
1点目は、表現した文字、ひいては文章を自分の意図した通り他者に伝わる内容により近づけることができる点。
意外と、自分の語彙にいる言葉の意味が辞書に載っている意味とずれて勘違いしていることはある。
その歪みを正して文を綴ることができるので、間違って伝わる危険性が減る。
辞書には用例が載っているので、使い方、言い回しのおかしな部分を修正することもできる。
辞書を引いて、ああこれはちょっと言いたいことと違うな、と思って文字を当て直すことは僕もよくあること。
2点目は、その行為自体が、自分の語彙力と書く力を磨く点。
書く行為をする中で、自己の語彙辞書の歪みを直す行為を常にやるわけだから、語彙力が上がらないわけがない。
読書でふわっと語彙を増やして、書くときに語彙の正確性を磨く、というイメージ。
大学生の時にレポート課題や卒業論文などでこれを逐一実践すると書く力は結構磨かれると思う。
レポート課題なんかで、頭の中に書くもののイメージができていないのであれば、それは入力が足りない。
しっかり入力する、頭の中に書くもののイメージを作る、書く、をしっかりとやりたい。
参考文献やWeb、AIの引き写しに終始すると、語彙力や書く力は伸びない。
卒論で困るか、社会に出て自分の言葉で文章を綴れない人間ができあがってしまう。
ちなみに。
辞書をひく時はWebを利用するのではなく、ちゃんと編まれている辞書名のわかるものを利用したい。
これには理由がある。
まず、辞書に書かれているものは、言葉の定義ではない。
というか、言葉を定義なんかできない。
このあたりは、長くなるので別記事でいくつかにわけて書く。
では辞書に書いてあるものは何か。
簡単に書くと、世の中で共有されているその言葉の意味を、一つ一つ文字で表現したもの、といったところか。
その表現の方法には辞書の編集方針ごとに色があり、収録されている語やその意味、網羅範囲も違う。
この辞書には載っているけど、こっちには載っていない、辞書ごとに表現の仕方が違う、なんてことが起こる。
常用の辞書とサブの辞書を1つずつ買って使い分け、時には2つを引いて比べる、というのをおススメしている。
続けていると、辞書の色が何となくわかってきて、自分の好みや用途による使い分けができるようになる。
なお、辞書自体は紙のものでなくて、スマホのアプリ版でもいいと思う。
どこでも調べられるので、そっちの方がいいかもしれない。
Webでは辞書は選べないし、辞書以外の真偽のわからない何かが引っ掛かることも多く、全くオススメしない。
辞書を引く、は僕は日常やっていて、論文はおろか、ここに記事を書く時、Twitterにつぶやくときにも、辞書を引いて意味確認をすることがある。
辞書は、新明解を常用し、三省堂国語辞典をサブとして使っている。
新明解は、なんというか、表現・用例がおもしろい。
まあこれは完全に好みの問題。
どっちにも載っていなくて、でも、この意味あるよな、という時のみ大辞林や広辞苑などの大辞典や、Webを使う。
心理学や医学、障害、教育学などは、その専門の辞書をそろえてあって、そっちを先に引くことが多い。
論文などで専門用語がわからない時、Webの情報に頼る学生は多いが、専門辞書という選択肢は覚えておいてほしい。
では、今回はこのへんで。
また。
たぶん、みなとみらい。
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2024/09/01 21:28
今日は誕生日だよ。
鳥駅ドトールにて。
Update 2024/09/01
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