週刊雑記帳(ブログ)

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僕の研究変遷記〜修士編後半

前回(修士前編)の続き。

大学院修士になって脳科学へと進出。
前半はニホンザル電気生理学、に入門した話を書いた。
ところが、急転直下、ヒトのしかも幼児の脳機能研究へと転向する。
まあ、転向というほどニホンザルに浸かっていたわけでもないケド。

で。
幼児の脳機能をとるにも、当時所属してた研究室は、計測装置を持っていなかった。
そこで、共同研究という形で、とある企業の研究所に出向くことに。
この研究所は、計測装置を作っていた会社の研究所で、民間にしてはめずらしく基礎研究を旨としているところだった。
当時この研究所には大学院生もいくらか来ていて、工学屋さんから社会医学脳科学まで幅広く在籍。
それぞれの立場で情報科学、装置開発から脳機能計測まで様々な研究をやっていた。

さて。
僕は何をやっていたか。
与えられたテーマは幼児で何か。
研究室のテーマと計測装置の制約から前頭葉の何か、というところまでは決まっている。
で、装置について勉強しつつ、何をしようかと考えるところからスタートした。

そもそも、幼児で脳機能を測れる装置というのがかなり特殊。
まずはこいつの勉強から入った。
そもそも、脳の機能を測るには、脳活動に伴うなんらかの信号を集めてこなくてはならない。
脳活動というのは、ニューロンという脳細胞が電気信号を発することがそもそもの根っこにある。
修士前半で書いたニホンザル電気生理学研究は、そのニューロンから直接電気信号を記録しようという方法。
ただ、この方法、手術が必要になるのでヒトではできない。
ヒトでは手術をせずに、計測装置を使って脳活動に伴うなんらかの信号を連れてくるということになる。
脳波やMRIなど、いくつか装置があるものの、どれも制約があり幼児の脳活動を測るというのには向かない。
で、唯一取れそうだったのが、光を使った計測装置だった。
簡単にいうと、以下の原理。
①脳が活動する
②栄養供給が必要になり、活動した場所の酸素を運んでいる血液と酸素を運び終わった血液の量が変わる
③酸素を持っているかどうかで血液の色が違う
④レーザー光を入れると、わずかにこの色の違いを反映した光が返ってくる
⑤計測した光の変化で、元々の脳活動を推測する
入れるレーザー光の強さは曇りの日に浴びている光の量よりもはるかに少ないので、安全で、かつ、幼児でも測れちゃうというわけ。
この計測装置のお勉強、集めてきた信号分析プログラムの開発などを進めた。

一方で、「何を」研究するのか、についても検討した。
結局、半年くらい考えた末に、がまんの脳機能発達、というところに落ち着く。
幼児はがまんの発達が急激に進む時期で、でも、まだまだ発達途上。
がまんを測る実験課題はわりと単純なものがあって、それを使えば何か見れるだろう、という単純な発想。
まだまだ、当時の僕の研究技能はあまく、研究デザインに関してはまだまだ詰めきれていなかったが、幼児の脳機能というのがあまりなく、そのままそれが修士論文となった。
そんなわけで、大学院修士了の時点で、がまんに関する幼児期の脳機能発達、というのが専門に。
ついでにこの計測装置を使える人というオマケもついてきた。
特におまけの方がその後の僕の研究変遷に影響するのだが、その話はまたいつか。

あれ、今、特別支援教育とか心理学とか全然違うことをやっているんじゃないか、と思われる方もいるかもしれない。
修士了後にさらにいろいろあった。
が、それもまた今度。

今回はこのへんで。
ではまた。




ずっと昔の甲子園。


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2024/08/26 18:11
仕事後、アイスティーなど飲みながら。
鳥駅ドトールにて。



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Update 2024/08/26
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