週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

質疑応答虎の巻(研究をしよう40)

卒論修論の最後にやってくるのが、発表会。
発表については、過去にいくつか書いている。
発表をしようシリーズ
今回はその中でも、質問に関する応用編。
発表時の質問についての続編、と考えていただいて。

質問対応というのは瞬発力がいる。
何を聞かれるかわからず、いざ聞かれるとパニックになってしまうこともあろう。
しかし。
基本的にはコミュニケーションの1つでしかない。
聞かれたことをちゃんと理解した上で、丁寧にコミュニケーションを取ればいいだけ。
そう考えれば肩肘張らずに落ち着いて対応できるかもしれない。
いくつかポイントを絞って解説するので、ぜひ参考にしてほしい。
なお、この質疑応答のポイントは、研究発表以外の様々なシーン、例えば会社の会議などでも役に立つと思う。

質疑を理解する

卒論生レベルだと、質疑を受けても内容を理解できない、ということはよくある。
発表の場に緊張して立っているので、無理もない。
咄嗟のことでよくわからなかったということは起こりうる。
そうでなくても、質疑をする人が大学教員だったりすると、言葉が難しすぎてわからない、何を言ってんだコイツ?となることもあろう。
また、質疑自体がよろしくないこともよくある。
質疑を発する側も人間であるので、勘違いから、ナンセンスなものまで、玉石混在と見ていい。
なので、質疑に合わせて、正しい対応をする必要がある。

その第一歩が、質疑を正しく理解する、ということ。
コミュニケーションであるので、わからなければ臆することなく聞き返そう。
言っていることがよくわからないので、別の言葉でお願いできるか、と、単刀直入に聞き返していい。
少し意味がわかるのであれば、言い換えて、ご質問は〇〇ということでいいか、と自分の言葉で聞き返してもいい。
わかってもいないのに、質疑に答えを返していくのはコミュニケーションとして正しくないし、不誠実で大変よろしくない。
なお、僕も学会なんかで質疑の意味がわからなければ聞き返すし、多くの発表者もそうしている。
学生の場合、未熟なことはある程度わかっているので、遠慮することなく理解するための聞き返しをしてほしい。

その上で。
質疑には大きく、2つあるので、そのどちらであるのかも把握する。
1つ目は、純粋に内容の確認したり、わからない箇所をクリアにするための質問。
これは質問内容にあわせて新たに情報を提供して、相手に理解してもらうように努める。
まあ発表時間という制約がある中では、なかなかうまく伝えられないものなので、こういう質問は出てくるもの。
場の理解も進むので、しっかりと対応したい。

もう1つは、問題点に突っ込んでくる系の質疑。
結論・主張に対する研究文脈上の疑問と言ってもいい。
突っ込みポイントは、研究をしようシリーズの2−11を読んでいただいて。
早い話が、結論・主張に対する挑戦、と考えてもらっていい。
自分が1年も2年も考え抜いて進めたかわいいかわいい研究である。
出来うる限り、質疑を打ち返して守ってあげたい。
守備と攻撃側にわかれたゲームの守備担当をやっているという気分で、ライトに構えて、質疑応答を楽しんでいただくくらいがいいと思う。

この後は、この、守り方、に関するポイントをいくつか書く。
なお、質疑対応のポイントは以下の一点のみ。
研究の結論・主張を守ること
言い換えると、結論・主張の(1)新しさ、(2)正しさ、(3)研究文脈上の意義、に対する疑問をつぶしていくことである。
このことを常に頭に置いて質疑に応答していきたい。

あいまいな質疑をクリアにする

結構困るのが、あいまいで、質疑の意図がよくわからない質問。
ひどいのになると、何を聞きたいのかすらよくわからないことがある。
この場合は、前の項で書いたように、その意図と問題点をクリアにしていくコミュニケーションをすることになる。
この時に重要なのが、研究の結論・主張を関係を考えながら、意図・ポイントを聞きとっていくこと。

あいまいすぎて何を答えたらいいか全くわからない場合は、単刀直入に、何を知りたいのか具体的に教えてほしい、と聞こう。
あいまいながらうっすらとわかる場合は、自分の言葉で置き換えて、〇〇について答えればいいか、と確認する。
基本的に質疑で突っ込んでくる以上、研究の結論・主張と何らかの関係があるはずなので、そのことを頭に置いて推測と確認をするしかない。
なお、あいまいな質疑に関しては、質疑する側に問題がある。
よい質疑とは結論・主張をひっくり返すポイントをキリでひと突き、みたいなやつ。
結論・主張との関係を意識しながら切り返すことで、研究がわかる聴衆にはその辺りのことは伝わるものなので安心してほしい。

「今はその話はしていない」系質疑をかわす

あいまいな質問と似ている質疑が、これ。
研究的文脈やら何やらを全部無視して、外部から新たな論点を導入して論を展開して、質疑を行う。
ネット系言論人にはこれが得意な有名人も多い。
もっともらしく論を引っぱっていった上で、自分の土俵上に引きこ込んで問題点を提示してくる。
賢く見えるので、そうかも、と思ってしまいがちな質疑でもある。

ただ。
研究発表の場合、重要なのは、自分の研究の結論・主張を通すこと、この一点。
他の文脈を持ち込んで、こういう研究の視点の方がよかったんじゃないか、というような質疑がこれにあたるのだが、それは自分の研究の結論・主張には影響しない。
よって、この手の質疑については、そういう視点の研究も必要なことは理解するけど、今発表している研究はそういう研究ではない、と切り返した上で、自分の研究のアピールポイントをもう一度説明する、といった対応になる。
相手の主張する研究の重要性と、自分の発表している研究の結論・主張は基本的には関係ないはずなので、相手の土俵のらずに質疑応答に対応する必要がある。
それでもなお自説に固執してしつこく食い下がってきたら、そんな大事だと思うならあなたがやったらいいじゃないか、的な主張で倒そう。

もちろん、相手の主張に対する情報を自分の研究から提供できるのであれば、それを教えてあげると喜ばれる。
それができる場合は対応したい。
が、自分の研究から離れてはいけない。

問題点が間違いであることを主張する

続いては、キリでひと突き系質疑。
問題点をずばっと切り込んでくる質疑は怖いもの。
これのかわし方は2種類ある。
その1つ目が、問題点自体に対する反論。

聴衆はかなり短い時間で発表を聞いた上で質疑をしてくる。
また、発表者よりも発表内容に対する知識レベルが低いことがほとんど。
よって、当然、誤解に基づく問題点の質疑というのはありうる。
どの部分を誤解しているのかについて質疑内容等から把握し、そのポイントを軸に反論する。
もちろん、誤解点を把握するための聞き返しは構わない。

この反論がうまくいくと、質疑者は理解が深まり納得する。
同時に聴衆の理解も深まるので、しっかりと対応したい。

問題点が正しい場合

キリでひと突き系質疑の2つ目。
問題点が正しい場合。
この場合は結論・主張への影響についてを軸に反論する。
質疑でなされた問題点自体は正しいとしても、結論・主張への影響は全くなかったり、軽微だったりすることは多い。
僕はこのような問題を、クリティカルな問題ではない、と呼んでいる。

クリティカルな問題ではない場合は、その問題があったとしても結論・主張には影響はないことを説明する。
自分のデータで反論する、論理で反論するなどの方法がある。
「おっしゃる通り、〇〇な可能性はあると思います。ただ、その場合はこっちのデータはこうなるはずなのですがそうはなっていないので、結論には影響はないですし、先行研究の××というデータからも〇〇である可能性は低いのではないでしょうか。」
みたいな返し。

この質疑対応は結構難易度が高い、ように見えるのだが、そんなことはない。
なぜなら、そういう問題は、発表者はあらかじめ把握している可能性高い。
自分の研究について、脳が汗をかくほど考えていれば、こういう問題点には気づいているもの。
あとは、あらかじめそれに対する反論を用意しておくだけなので、切り返しの瞬発力があまりいらない。

では、クリティカルな問題点だった場合、つまりその問題点が、結論・主張にもろに効いてしまう場合はどうしたらいいのか。
卒業研究はかなりタイトな時間制約があるため、当然こういうことはありうる。
その場合は、おっしゃる通り、と認めるしかない。
認めた上で、では次に何をすればその問題点をつぶせるか、これを応答として提供する。
今後の課題とさせていただく、は、勉強不足感が否めない上、自分の成長にもつながらないのでできるだけ避けたい。
今後の課題はいいとして、それをどうやって潰せばいいのか、自分の研究でどうしておけばよかったのか、このあたりを誠実に説明する。
ただ、この問題点をあらかじめ把握している場合は、最初から発表に組み込んでおくほうがいい。
研究の限界、あたりに記載しておいて軽く説明しておき、質疑で突っ込まれた場合には詳しく解説、というやり方もある。



と、まあ、質疑応答について書いてみた。
わりと高度だけど、研究以外の場面でも役に立つ技術だと思う。
ぜひ、研究の場を利用して技術をみがいていただたて。

今回はこの辺で。
では、また。




たぶん、高松港

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2024/06/02 20:03
ぐーたら記念日だよ。
鳥駅スタバにて。



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Update 2024/06/02
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