週刊雑記帳(ブログ)

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AIと大学教育 その2 大学生のAIとの付き合い方

前回はChatGPTを使ってみた雑感について書いた。
今回は本題。
AIと大学生はAIとどう付き合うべきかについて考えてみたいと思う。
想定読者は、大学生、大学教職員および関係者。
ただ、今回はメインのメッセージは大学生に向けている。

あくまで素人が使ってみた感想といくつか本で仕入れた知識をもとにしているので、間違いはあるだろうし一考察にすぎないことはお断りしておく。
なお、僕のバックグラウンドとしては、 AIは素人、脳についてはほんのちょっと知っているので、神経をモデルとしたAIの基本的なアイディアはなんとなく理解できる程度。
AIの論文などは読んだことはないし、きっと読めない。

技術に対するスタンスとしては、使えるものは使ったほうがお得だよ、という感じ。
AIについても、基本的には使いこなしたほうがいい、と思っている。
ただ、大学教育の中で使用するかについては、やめておいた方がいいというのが現在のスタンス。

でははじめよう。

AIでできること・特徴

AIができることについての、僕の認識は以下の通り。
・大量のデータを使って学習して、データの傾向から新たなものを作り出す
・学習したデータから確率的にもっともらしいものを作る
・指示の出し方で作られるものが変わる
例えば、文章の場合、過去のデータから確率的に導き出される文字列がとても自然な形で導き出される。
AIの側で正しさなどはわかっておらず、ただ、過去の大量のデータから確率論的に作り出している、というのがポイント。
過去の対話型アプリとの違いは、前もって用意していた選択肢から選んで処理を進めていないところ。
だから、 AIに絵を大量に学習させれば、それらに似た絵を新たに生成してくれる。
おそらく、データが大量に存在しさえすればこれが可能で、プログラミングなんかに応用できるのもこれがため。

一方で、必然的に間違いを多く含む。
しかも、 AIの技術が進んだため、自然な感じで間違いを埋め込んでくる。
ChatGPTは自然言語のAIらしいので、言葉としてはとてもなめらかで、ありもしないことをさも本当のように教えてくれるのは、前回「使ってみた」の記事で見た通り。

AIを使いこなす人材とは

さて。
AIは単なる技術にすぎないため、道具として使いこなすべきである。
これからはそういう人材が求められる。
そういう意見がいくらか見られた。

そこで、道具として使いこなすためにどんな力が必要か、考えてみた。

1番大事な能力は、間違いを見抜く能力
これは、生成された内容についてもそうだし、文章力(絵や音楽、プログラミングの AIならそれらの能力)も、ということになる。
あくまで、トレーニングデータから確率的に生成された生成物である。
正しさは保証されないし、これからも保証されることはない。
そういう技術なので、これはもうどうしようもない。
よって、これを見抜いた上で、必要な修正をかけてから利用しないとものの役に立たない。

では、間違いを見抜く能力にはどのようなものがあるか。
それこそ、コンテンツについての専門的な知識であったり、論理的な思考力であったり、文章を読んだり書いたりする能力。
まさに、現在大学で学んでいるものたちばかり。
つまり、現段階でAIは個々の能力を超えない。
AIは自分が十分有する能力を使う作業について、その一部を代わりにやってもらって手間を省く、といった使い方にしか使えない。

では、AIを操る技術はどうか。
これは、確かに現段階では多少必要かもしれない。
が、使いこなすのに技術が必要かといえばそうは思えない。
だいたい、なんでChatGPTが急速に注目されたか考えてみたらいい。
直感的で簡単だから、である。
使ってみればわかるが、使うのに長い時間かけて習得するような特別な技術は必要ない。
もし仮にそのようなものが存在したとしても、この場合、技術の方が人間に近づいてくる、というのは歴史が証明している。
もっと簡単に操れるAIというものが登場して、せっかく手に入れた特別な技術は無力化されると思う。
技術そのものは「誰でも使える」に帰着していくはず。

よって、AIを使いこなす人材とは、AIにはできない部分についての能力を有する人材というところに集約していくと考えている。
つまり、今までの「人材」となんら変化はない。
まあ、道具立てとして与えられた時に毛嫌いして使わない、となると話は別だが、今時の大学生、元々パソコン・スマホを使いこなせているので、そうならない下地はすでに有している。

もう一つ。
AIを使いこなす人材、として、重用されるとすれば、ユーザではなく開発者・企画者として使いこなすような能力を有する者か。
AIというものの本質をわかった上で、どんなデータを学習させて組織でどう活用していくのか。
そういうことを考えられる知識・技能は、これからの社会で強いとは思う。
ただ、一般的にAIを使いこなす人材、というときに、こういうことを指してはいないので注意が必要。

大学生とAIとの付き合い方

基本的には学業においてはAIは使わないほうがいいというのが僕の考え。
大学の学業においては、AIを上手に使う人材として必要になる各種能力を磨く(詳しくはこちらのシリーズを参照していただいて)。
教養や専門分野の知識、読む力、書く力など、AIが生成したものの中身を見極めて自分なりに利用する能力を鍛える。
これを鍛える過程でAIを使えば、当然これらの能力は身につかない。
よって、学業は自らの力を鍛える場と意識して、あえてAIのようなものは使用しないことをおすすめする。

計算機で例えるとわかりやすい。
足し算を学んでいる最中に計算機を利用してしまったら、足し算の技術は身につかない。
それでも、計算機の答えが常に正しいなら問題はないかもしれない。
しかし、AIの場合、技術的に間違いを含むので前提として足し算ができないと使い物にならない。
足し算の技能を身につけるまでは使ってはいけない、というのはわかると思う。

いやいや、完璧なAIが登場するかもしれないじゃないか、そうしたら人間の持つ従来型の知識・技能は役に立たなくなるかもしれないじゃないか!と思われる方もいるかもしれない。
今の基本的なAIの仕組みから考えてそんなものはしばらくできないとは思うが、仮にね、そんなものができたとして、それをタダで使えると考えるのはちとアマイ。
少し考えればわかるのだが、それを利用するのにはお金がかかるようになると思う。
普通に考えると、技術開発する企業はお金を稼ぐためにやっているわけなので、技術をお金に変える方法を考える。
おそらくね、人件費と引き換えに人をAIに代えて、その分を利益にするという方略をとる。
そうなった時、ただユーザーとしてAIを操れるだけの人は弱い。
それに、AIがなければ力を発揮できない人材ということは、AIが無料で使えなくなった時にはなにもできない人材ということにもなる。
なお、開発中でユーザーのフィードバックがほしい現段階のChatGPTですら、最新のバージョンは月額使用料が必要。
これの意味をよくよく考えておきたい。


ではでは。
今回はこの辺で。
次回は大学教員向けに、評価について書く予定。




羽田空港にて。

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2023/05/27 15:54
コーヒーを飲みながら。
鳥駅スタバにて。


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Update 2023/05/27
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