週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

質問力を鍛える〜授業編(大学生のための学び方入門16)

質問をせい、というのは授業でも、研究でも僕がよくいうこと。
質問に関する記事もいくつか書いている。

質問をしよう(大学生のための学び方入門4)
質問力(なぜ学ぶのか、何を学ぶのか 9 )
発表時の質問について(研究をしよう 18)

今回はその実践編。
大学の授業を使ってうまくこの力を鍛えよう、というもの。
なお、質問力というのは汎用性が高く、就活や社会に出てからもかなり役にたつ。
いい質問した人、というのは、印象に残るし、能力が高いと評価される。
大学生のうちに鍛えたい能力のひとつ。
質問力というのは、他の様々な能力と一体なので、総合的に様々な能力が鍛えられるのもポイント。
以下、レベル別に書いていく。

レベル0:簡単な質問を考える

まずはここから。
なんでもいい。
質問を考えよう。
あまりにも当たり前なことからはじまったな、と思われた方もいるかもしれない。
しかし、すでにこの段階からできていない人が多い。

質問をするためには、わからないポイントを見つけなくてはいけない。
漠然と授業を聞いているだけでは足りず、注意深くよくわからないポイントを探しながら聞かなくてはならない。
どこまでがわかってどこがわからないのか。
内容の理解以前に、出てくる用語自体がわからない、なんてこともある。
どんなにくだらないことでも、些細なことでも構わない。
なんでもいいので、わからないところはどこなのか、探しながら授業を聞く。
わかった気になっていたが、これをやると意外とわかっていないことがあることに気づく。
それを書き出して、質問を作る。

自分がわからないことを意識するというのは、理解を深める第一歩。
わからないことがわからなければ、それ以上学びようがない。
ただ、何がわからないかわからない、ということはまずない。
このくらいチンプンカンプンな場合は、頻出している用語の1つ1つがわからない、ということが多い。
これらが、「わからないこと」ということになる。
最初はそのくらい初歩的で構わない。
まずは、なんでもいいから「わからないこと」を見つけよう。

ちなみに。
なんでもいいからひとつ質問する、ということを自分に課して話を聞くと、かなり話に没入することになる。
当たり前なのだけど、漠然と聞き流していた時よりも理解度が増す。
質問を考えながら聞く、というのはそういう副産物もある。
副産物というよりは、学ぶことの本質かもしれないが。

なお、僕の授業ではリアクションペーパーで疑問点を書く欄がある。
ここで疑問点が一切書かれなかったのに、試験は落第というパタンがよくある。
疑問点がなければ試験は満点なはずなので、このレベルで止まっているということだと思う。
そして、このタイプの大学生、わりと多い印象。
ぜひ、脱していただいて。

レベル1:手を挙げずに質問をする

質問ができたら、次は実際に聞いてみよう。
ただ、手を挙げて質問するのはハードルが高い、という方がほとんどだと思う。
その場合は、それ以外の方法で質問をしてみよう。
授業毎にリアクションペーパー等がある場合は、それを利用するのがいい。
ない場合は、授業後に教員のところに行って質問してみる。
メール等での質問もあり。
これらはみんなの前で質問する、という度胸を要しないためおすすめ。

そもそも疑問点を持つのと、その疑問点を他人に的確に伝える「質問」は少し異なる。
「質問」では自分がわからないことを他人にもわかるように言語化しなくてはならない。
これを繰り返すと、言語化のスキルが少しづつ上がる。
特に教員とのface to faceだと、うまく伝わらない場合、教員からの反応でわかるので、それが即時のフィードバックになる。
やはり繰り返すと、質問のレベルが上がっていく。

なお、ここでも副産物。
当然だが、疑問点が解消するので、当該内容の理解が深まる。

レベル2:みんなの前で質問をする

質問が作れるようになったら、みんなの前で質問をしてみよう。
何か質問ある人いるか、という問いかけに、手を挙げるというもの。
これは少々ハードルが高いかもしれない。
が、がんばってチャレンジしてみたい。

この段階では、大きく2つのものが鍛えられる。
まずは質問度胸。
みんなの前で質問をするというのはかなりの度胸がいる。
もともとこういうのが得意な人もいるが、これは慣れな側面もある。
授業なんて練習的な場なので、臆せず度胸をつけるのに利用したい。
就活や仕事の場で意見を述べる際の度胸がつくことになる。

もう1つは、質問の言語化の技術。
教員相手に1対1で質問をするレベルに比べると、授業参加者という多数の人にもわかるように質問をしなくてはならない。
face to faceの場合は教員が補ってくれるし、資料を見せたり文脈で補ったりしながらの質問が可能。
すべて言語に頼る必要がない。
ただ、みんなの前での質問はそうはいかない。
すべてを言語のみによって説明をしなくてはならず、これは相当な言語能力を必要とする。
これを鍛えたい。

うまくいかず恥ずかしい思いをするかもしれない。
が、語学は恥をかいた分だけ上達する。
母国語での質問も同じだと思っている。

レベル3:自分で調べてみる

ここまでくると、疑問点の洗い出し自体はわりとできるようになっていることが多い。
疑問点について、用語の意味がわからないのか、深い理解に及ぶ部分なのか、そういうのもわかるようになってくる。
前者を中心に、自分で調べることが可能なものも多い。
自分で調べられそうなことについては、自分で調べてみよう。
すると、意外と自己解決してしまうことも多いことに気づく。

質問をすることを前提に話を聞くようになると、わからないポイントはどんどん洗い出される。
それらの全てを質問するのは現実的ではないので、自分で解決できるものは自分で調べるという技を使いたい。
もちろん、理解が深まるという副産物が生じるのだが、いいことはそれだけではない。
質問力自体も高まる。
そうやって、自分で調べて、それでも解決しないものが質問としては高度なものであるし、より本質に迫るような質問ができるようになる。
このレベルまでいくと、質問力も知識面も、だいぶデキる方。

レベル4:自分の言葉でまとめて理解を確かめる

ここまでの段階で、ある程度高度な内容について質問できるようになっている。
内容的に難しいものに対しての質問がメインになる。
もう一段階上の能力を身につけるため、この段階では質問の仕方を少し変える。
具体的には、「〇〇について(わからないので)説明してほしい」というような質問をやめる。
そうではなく、「〇〇とは〜〜のように理解したが、その理解であっているか」というような質問を心がける。
難しい内容について、まず自分なりにまとめてみる。
その上で、質問として理解が正しいかを問う。

これは慣れるまでは結構難しいが、確実に言語運用能力を鍛える。
言語能力は思考力とほぼ同義なので、かなり汎用性の高い能力を鍛えることになる。
なお、自分の言い換えがあっていると自信にもなる。
これがある程度できるようになっている場合、大学生の質問力のレベルとしてはなかなかのもの。

レベル5:矛盾点をつく

ここまで実践しても、なお出てくる疑問。
それは、本質的にものすごく重要なものである可能性が高い。
授業レベルではなかなか発見できないが、研究レベルだとわりと多い。
授業に関連してこの手の質問ができたらたいしたもの。
僕がそういう質問を受けたら、名前をしばらく忘れないレベルで感心すると思う。
が、こいつについては、研究編の方が説明しやすいので、そこで書く。
大学生が質問力を鍛える場は、授業の系統と研究の系統の大きく2つがあって、それぞれちょっと鍛え方が異なる。


長くなった。
今回はここまで。
また。




そろそろ神宮の季節。

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2023/04/30 16:34
ただの日曜日感の漂う、GW前半。
鳥駅ドトールにて。


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Update 2023/04/30
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