週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

大学のレベルの話

大学のレベルの話をしよう。
偏差値による大学のランクわけ。
大学生と話をしていると、上位校と比べて自校を卑下していることがある。
ただ。
大学のレベルは単に入学時点の点数の順序に過ぎない。
知識・能力という意味では、その後の過ごし方如何で上位校出身者を凌駕するというのはよくある話。
そもそも入学試験自体が多くても2回程度なので、実力を出しきれないことだってある。
個人レベルで見ると、1つか2つくらいレベルが上の大学の学生との差なんて誤差みたいなもん。
あまり気にする必要なない。

では。
大学のレベルによって何が違って、何が同じなのか。
いろいろな視点から見ていく。

教員の質

これは大学間でそんなに変わらないと思う。

大学の人事は主に研究業績で行われる。
よって、上位の大学ほど研究ができる人が多いということになる。
これが違いといえば違い。
大学入試の序列と教員が行きたいと思う大学(研究ができる、待遇がよいなどで決まる)の序列が必ずしも高校生の偏差値序列と一致しないので、緩やかにそうなっているくらいに考えていただいて。
ただ、どの教員も大学の学部で教えるのに十分な能力は有している。
しかも、大学教員人事は運とタイミングの要素もかなり大きい。
実力的にはトップ校の教員と同じような人が、そうでない大学で教鞭をとっていることもよくある話。
この辺りの裏事情は 大学教員公募戦線物語(大学教員・研究者という生き物7 ) にも書いている。

また、大学教員は大学間の異動が多い。
在籍中に研究業績を上げて、次に上位校に異動することもよくある。
昇進を機に上位校から赴任してくることもある。
なんでこの先生が、というようなとても研究できる先生が所属していることもある。
行きたかった大学の元教員や将来の教員に教えてもらうというのは、わりとよくある話。
このように、この点の大学間差はあまり気にする必要ない。

なお、ここでいう教員の質はあくまで研究による。
教育力とは全然違うのは頭に入れておきたい。

授業の質

これは必ずしも上位校が優れているわけではない。
むしろ中位校くらいの方が授業の質は高い、というのはよく耳にする。
上位校の学生は教える側があまり工夫しなくても勝手に理解するというところがあって、工夫しなくても授業が成り立ってしまう。
中位校くらいだと、それなりに教える技術を要求されるので、それなりに授業の質が高い、というわけ。
下位校の場合は、さらにていねいな教育を求められるので、そういう教育についての教員の教育技術のレベルは高い。

また、授業自体は学生の知識レベルに合わせて用意される。
よって、無理に上位校に行くくらいなら自分のレベルにあった大学の方が効率よく学べる可能性がある。
なお、大学の学びにおける授業の占める割合はそんなに大きくない。
それよりも自ら学ぶことによって得るものの方が大きい。
よって上位校の授業が受けられないからと言って上位校で学ぶ知識が得られないということはない。
専門書も論文もたくさん出版されているので、自学をしっかりすれば大学のレベルによる学びの差はでない。

教員の数

これは上位校(というよりは大規模校)とそれ以外の大学で大きな差が出る。
上位校というのは大学の規模が大きいので、教員数も多くなる。
同じ科目に複数人の教員がいることになるのだが、これが高校までとは異なった意味を持つ。
高校までだと、生物学の教員であれば何人いても同じ生物学の内容を教えられ、それ以上の専門性はない。
ところが、大学の場合、生物学の中でもかなり専門が細分化されている。
それぞれの専門を細かく細分化していくと専門領域が全く同じということはほとんどない。
大学教員の専門性の特徴。
自分と同じことをやっている人は日本で数人、世界でもそこまで多くない。
そういう専門性を有している。

これは卒論の研究室を選ぶときの選択肢を増やす。
研究でより専門性の高い教員を選ぶことが可能なのがメリットの1つ目。
もう1つのメリットは、オムニバス形式の授業などで、専門性の高い教員それぞれから各専門領域を学ぶことができる点。
この辺りは、アクティブに質問したり研究したりする学生にとってはアドバンテージになるか。
領域の教員が多いと、同じ専門領域の複数の教員から研究を見てもらえるのもメリット。

ただ、学部レベルではそこまで大きく影響があるかといえば、多くの人にとってはそうではないとは思う。

同級生と人脈

個人個人で言えば、大学のレベルが少しくらい違っていてもその差は誤差みたいなもの、というのは冒頭で書いた。
時の運で上位校を逃している場合もあれば、それ以外の何らかの事情ですごい実力の人が上位校でない大学にいることもある。
教員をやっていると時々そういう学生に出会うので、これは間違いない。

一方で、全体平均で言えばやはり明確に差が出てくる。
上位校にはやはりすごいやつがゴロゴロしている。
すると同級生からの刺激という部分については差が出ることになる。
一緒に研究したり議論したり、そういう同級生は上位校ほど探しやすくなると思う。
上位校でない人で、この辺りを補いたい人は教員をうまく使いたい。
議論しに行ったり、研究の話を聞きに行ったりは、ウェルカムな教員も多い。

もう一つが、卒業後の人脈。
これは上位校というよりはトップ校の特典。
例えば東大だったら、同級生の何人かは省庁でえらくなり、他の何人かは企業で偉くなる。
こんな感じで各所で活躍する同期・先輩・後輩が比較的多くなる。
一緒にサークルを楽しんでいただけの友人がこうなる可能性もあって、こういう人脈は大きい。
企業が東大生を求めるのの一つの理由にこの人脈が目当て、というのを聞いたことがある。
真偽のほどはよくわからないが、確かにそういった側面はあると思う。
こいつは埋めようがないが、実力をつけるのが本筋なのでそちらで対抗すればよし。


とまあ、思いつくままに書いた。
冒頭にも書いたけど、大学のレベルって入学時の点数の序列でしかない。
実力という意味では通過点の一側面からの評価でしかない。
後からぐいぐい伸びるタイプもいれば、今は良くても伸び悩むタイプもいる。
必要以上に卑下せず、大学で実力をつけて出て行ってほしいと思っている。




川崎の工場団地のどっか。

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2020/07/12 23:59
休暇中。
自宅にて。


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Update 2024/03/28
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