週刊雑記帳(ブログ)

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本の紹介,「知能指数―発達心理学からみたIQ (滝沢 武久,中公新書)」

知能指数―発達心理学からみたIQ
滝沢 武久(著)
難易度:☆☆


特別支援系の授業や心理学を教えていると、時々出てくるのが知能指数(IQ)。
知的障害だとIQがいくつ以下で、こんなテストがあるよ、というように教科書で扱われる。
が、結局のところIQってなぁに?
具体的にはどんなものなの?
そもそも知能ってなんだ?
という疑問に対しては教科書の記述からはよくわからない。
じゃあ本はというと、IQは世の中で結構使われているわりに、新書クラスの簡単な本が少ない。
この本はそんなIQについて、ビネー系と呼ぼれるテストを中心に解説した新書。
この本はかなりわかりやすく解説してくれている数少ない好著。
同種の本をいくつか当たってみたが、この本、かなりよい。

ビネーはIQテストをはじめに作った人。
全てのIQテストの源流といってもいいか。
この人が作ったIQテストは現在の日本でもよく使われており、鈴木ビネーや田中ビネーが有名。
このビネーテストを中心に深く掘り下げていく構成。
IQの基本的な考え方と意味。
IQテストができるに至った背景。
IQテストの歴史的な変遷。
新しい知能観と新しいテスト。
このようなことについて、さまざまなIQテストとそれらが作られる過程を通じて知ることができる。
もともとビネーは子どもの知能を測ることを目指して知能テストを作ったので、発達的な視点が豊富なのもこの本の特徴。

IQに関する基本的なことはこの本1冊で十分学ぶことができる。
1971年の本とかなり古い本なので、内容はやや古めだが基本を学ぶという意味では特に問題はない。
特別支援系の教員を目指す人、心理学を学んでいる学生さんで、IQがいまいちなんのことかわからない人は必読。
IQテストを日々実施している臨床家でも、歴史的な変遷や各テストの理論的な背景をよく知らない人であれば楽しく読める。
IQ系の本では一番おすすめな1冊です。
この本、かなり古いため現在は絶版になっているが、時々Amazonに中古が出る。
図書館にも入っていると思うので、そちらで手に入れるのも手。




にくきゅうは、よい。



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Update 2018/10/13
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