雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。

学振のこと(大学院へ行きたい人へ7)

学振。
このタイトルを見て、なんのことかわからなかった人。
今回はそんなアナタにこそ読んでほしい記事。
前回の記事で少しだけ触れた
博士課程に進んで研究者になりたい。
でも、経済的な問題から躊躇してしまう。
これは学生さんからよく聞かれる悩み。

実は、収入を得ながら博士課程に進む方法というのが存在する。
一つは社会人大学院生というもの。
研究職や研究ができる職に就いて研究しつつ大学院に通う。
この場合、所属先よりお給料をもらいながら大学院に通うことができる。
詳しくは、社会人経由研究者のススメで書いた。
他にもお給料をもらいながら大学院に通うシリーズとして、キャリア官僚や大手企業社員になって、社内研修の一環として選ばれるというコースもある。
博士号院生は難しいかも(研究職以外だと少ない)しれないが、修士号院生、海外MBA等はわりとある。
就職活動の際に、これらの可能性を調査してはいるというのも手。

社会人大学院生には、職場とは関係なく大学院に通うというタイプもある。
これでは、昼間は仕事に通い、夜間と休日に大学院に通うということになる。
大学院はこういった人たちに対応できるように、夜間休日に特例で授業ができるように仕組みが整えられているところが結構ある。
昼間の仕事に研究的な要素がないと仕事と学業ということになり、かなりハードになるがいないわけではない。
このコースを考える人は「あるキャリア官僚の転職記~大学教授公募の裏側~ 」あたりを読むといいかもしれない。

で、本題。
本タイトルの学振について。
ストレートの博士課程に進んだあとで、毎月の生活費を得るという方法が存在する。
これのメインの方法が、日本学術振興会・特別研究員DCに採用される、というもの。
研究業界では、略して学振という。
日本学術振興会とは文科省系の独立行政法人で、競争型の科学研究費等を出しているところ。
博士課程の院生の中から優秀な人を特別研究員DCとして採用し、毎月の生活費と自由に使える研究費を交付する。
毎月の生活費はやっと暮らせる程度のものだが、親の扶養から離れて独立するため学費が免除になる可能性が高い。
貧乏ながら研究を自力で続けることができる。
加えて、生活費とは別に院生としては少なくない額の研究費が出るため、学会参加等の経費負担がなくなる。
さらに、優秀であることが履歴書上に残るため、将来の職が得られやすくなるというメリットもある。

この学振。
DC1とDC2という2種類がある。
DC1は修士2年の春ごろに申請し、博士課程の正規年限期間が採用期間。
DC2は博士課程在学中の各春ごろに申請し、2年間が採用期間。
なお、PDという博士課程修了者向けの特別研究員もあり、これは毎月の生活費と研究費の額が上がる。

では。
この学振、どうやって取るかというと、研究計画書や研究実績などを書類申請して、審査によって競争的に勝ち取る。
審査は分野の複数の研究者が行う。
よって、研究計画書をうまく書けるとともに、学会発表や論文発表等の実績をあげておく必要がある。
勝負の相手は自分の分野の大学院生達。
腕に自信がある人は、家庭の事情で研究をあきらめなくて済むコースでもある。

さて。
この学振を取るにはどうしたらいいか。
研究能力を上げることが大事なのだが、実績の部分を意識する必要もある。
特にDC1を目指すのであれば、学部の卒論を学会発表できるか、論文発表できるか、がかなり大きい。
修士の2年生になりたての段階での業績、ということになると、修士の院生になってからの仕事ではなかなか難しい。
よって、博士課程の院に進むことを強く意識している人は、学部卒論から勝負が始まっている、と思っておいた方がいい。
もちろん、DC1に関してはそういう状況なので、研究計画でおもしろいものが書けるか、というのもポイントになる。
DC2ということになると、修士課程の仕事も大事になってくる。

取りやすい研究室、というのもある。
審査の時には、所属研究室はあまり関係ないはずなので、おそらく内部で書類の書き方や業績の書き方等のノウハウの蓄積があるのだと思う。
研究能力や業績に加えて、書類の作り方や見せ方など、通るためのテクニックというのはやはり存在する。
狙っている人やこれがないと困る人は、これを意識して研究室選びや進学先選びをするといいかもしれない。
研究室のHPのメンバの欄を見ると、その辺りが載っていることが多い。
研究室選びの訪問をする際に、学振とった人はいるかというのを聞いてみるのも手。

ただ、あまりこれにこだわりすぎて、好きな研究テーマから遠ざかる、というのは本末転倒な気はしている。
それなら企業研究員コースの方がいい。

では今回はこの辺で。
また。




f:id:htyanaka:20210516163316j:plain 羽田空港にて。

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2021/05/15 20:33
今日から梅雨入りらしい。
鳥駅スタバにて。


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Update 2021/05/15
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政治を勉強したい人のために No.1 時事と問題を知る

「政治のことを勉強したいのですが、どうしたらいいですか。」
これはたまに質問されること。
SNSで発言したり、ここでものを書いたりしているせいか。
そこで、今回はこのことについて書いてみようと思う。
ここでいう政治は学術的なことではなく、あくまで一般的な社会人としてのお話。
なお、民主主義社会とは、一人一人が政治参加する社会だと思っている。
構成員がよく考えて政治的意思を表明することは、それだけ社会がよくなることだと思っている。

さて。
では具体的に何をすればよいか。
そこまで難しいことはない。
日々の生活の中に、少しだけそのための時間を取る程度でいい。

幅広く時事情報を仕入れる

いきなり政治のことを考えようとしても何もできない。
まずは幅広く社会のことや問題を知っておく必要がある。
これは昔からやり方は同じで、日々新聞を読む、ニュースを聞く、が基本。
今もかなり有効な方法だと思っている。
そして、この積み重ねは無視できない。
冒頭の質問をするような人は、まずこれをやっていないことが多い。
でも、政治は社会のことになんらかの判断を行うことなので、これを知らなければ何もできない。

まあ、NHKニュースを毎日見る、あたりから始めるのがいいのではないか。
ポッドキャストにはNHKラジオニュースも出ているので、それを必ず聞くようにする、でもいいと思う。
オススメはNHKラジオニュースの夜10時のニュースジャーナル。
平日1時間程度幅広くやってくれるので、ポッドキャストを流しっぱなしにしておくだけでも違う。
朝7時、夜7時の20分のやつもある程度世の中のことを俯瞰できる。
新聞だと、日経新聞、大手紙なんかを購読して、毎日目を通すようにするのがよいか。
オンライン版だと安価で読めるので、契約してスマホで読むのがおすすめ。
これらは、就活はもちろん、社会に出てから仕事をする上でも役に立つので早めにはじめるのがいいと思っている。

もちろん、メディアには偏りがある。
その組織の色のようなものがあって、政治介入などよって内容に影響を受ける。
なので、過信は禁物なのだが、それはある程度時事情報に触れてからでいいと思っている。
ある程度、時事の流れが頭の中に入ったら、コンビニで他紙を買って読み比べてみたりするとおもしろい。
同じ出来事を伝えるのに、新聞社によって印象や内容、扱いがこんなに違うのだということがわかる。
これをいくらか繰り返すと、新聞社やメディアの色がわかって、それを加味した上で情報を解釈することができるようになる。
このくらいまでいくと、新聞社を複数契約するような人が出てくる。
が、それは社会に出てからでもいい。
ちなみに、僕は国内はオンライン版を3紙、海外を1紙、オンライン版で契約している。
全部合わせても、紙配達版と比較したら安価で、いい時代になったと思っている。

なお、契約せずともネットで出てくるニュース記事を読めばいい、という意見があるかもしれない。
これに関しては、ここでの目的から不適当。
ここでは、現在の社会の状況について、幅広く知ることが目的なので、契約して最初から最後まで目を通すことが大事になる。
ネットの記事は無料で便利なのだが、無意識のうちに自分の知りたい情報に偏って選んでしまいがちになるのが難点。
これは、SNS経由の新聞記事も一緒。

トピックを絞って勉強する

時事情報を仕入れていくと、特に興味がわく問題が出てくる。
重要そうだけど、自分でどっちをとればいいのかわからない。
ニュースや新聞だけだと内容がよくわからない。
意見が割れていて、どっちの論がいいのかわからない。

こういうのが出てきたら、これらのトピックについて勉強してみる。
個人のブログやSNSでも意見が流れてくるが、情報の質にこだわるのであれば、まずは書籍がいい。
新書かブックレットクラスの簡単な本を読んでみる。
できれば専門家が書いたものがよい。
明らかに専門家でもなんでもない人が書いた本が書店に並ぶことがあるが、事実自体に間違いが含まれる可能性があるので避けたい。
専門家の場合、その領域について専門的な技能を持っている上、フェイクを流すと専門家間で信用を失うので、あまり変なものが出てこない。
書いた人がその分野の研究者なのか、分野を語る上で信用に足る職歴の人かどうか、を判断基準にしたい。
もちろんそれ以外の人が書いたものでもいいものはあると思うが、知識的に真偽が判断できない状態でそういう情報に接してしまうと間違う可能性が高くなる。
間違った情報からは間違った判断しか出てこない。

できれば、同じトピックについて複数の本を読んでみるといい。
内容について食い違う箇所があれば、その箇所は事実としてアヤシイ(未確定、どちらかが間違っている)と考える。
逆に、みんな同じことを言っていれば、そのことは事実としての信憑性が高いということになる。
専門家が書いた書籍自体に意見の異なるものがあれば、これは専門家間で意見が割れているということを意味する。


もっとコンパクトに書く予定だったが、あまりに長くなった。
他にも書きたいことがあるのだけれど、今回はこの辺で。
シリーズ続編を書く予定。




f:id:htyanaka:20210228231357j:plain ニコタマかな。


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2021/02/23 20:18
ひきこもり。
自宅にて。


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Update 2021/02/23
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研究計画を立てる〜実践編(研究をしよう24)

このテーマではすでに何度か書いた。
それでもなお、難しいらしい。
そこで。
理想的なことはわかった、でも、どうしていいかわからないんだ、という人向けに。
研究テーマを決める研究計画を立てよう 前編研究計画を立てよう 後編がまだの人は、まずはそちらから読んでいただきたく。

まず。
卒論には〆切がある。
手順に沿って研究計画を作っていたらもう間に合わない、という場合もあるだろう。
もう研究計画が出来上がるべき時期が過ぎてしまっている、ということは多いと思う。
このあたりは、卒論のスケジュールを考えるあたりを読んでいただいて。
もはややるだけのことはやったけどうまくできず、何をやっていいのやら途方に暮れている人もいるのではないだろうか。

で、そういう場合はどうしたらいいか。
研究の目的から書こう。
これは相当に未熟でも構わない。
まずは、文字にして書類という形にする。
今一番興味を持っている、もしくは、詳しいことについて、なんでもいいから研究の目的を書く。
やりたい調査法があれば、それも意識した目的にしておくとよい。

おそらくそうやって書かれた目的は、自分でも何をしていいかよくわからない、具体性のないものだと思う。
そこからスタートする。
続いて、その目的に向けて、段落構成を考える。
これもこの際根拠とかどうでもいい。
まずは、この段落でこういうことを言いたい、というような筋立てを勝手に考える。
引用も、根拠探しも、何もいらない。
とにかく、完成させる、というのを第一に考える。
形式については、研究計画を立てよう 前編研究計画を立てよう 後編に準拠するといいか。

そうすると、1日もあれば、なんだこりゃ、というような研究計画らしき文書ができる。
それでいい。
ここからが勝負。
勝手に考えた段落構成において、それぞれの段落で言いたいことの根拠を探しては書き込んでいく。
根拠が見つからない場合はその箇所を保留して、とりあえず最後まで根拠を探しては根拠となる文献を書き込んでいく。

これをやると、どうしても根拠が見つからない場合がある。
その場合、そもそもそのことを調べることを研究の目的に変更した方がいいかもしれない。
どうあっても無理っぽければ、ここで目的を変更した上でやり直してみてもいい。
そこまでの流れはあるので、このやり直しは初版に比べると時間がかからない。
ただ、その前に指導教員に見せてコメントをもらってみるのもいい。
漠然と質問をするよりも、格段に有益なコメントがもらえると思う。

この段階まで来ると、過去に書いた「研究計画を立てよう」の記事の内容を見ながらある程度自分でできるのではないだろうか。
加えて定期的に教員に見せてはコメントをもらうことで、それなりに進んでいくことと思う。

この、未熟でもいいからとりあえずやってみる、は結構大事で、研究の各段階でも意識しておきたいこと。
まあ、研究に限らず、何かをやる時には大事なことかもしれない。

ではまた。


おまけTIPS

なお、この未熟な研究計画の更新。
古いバージョンは残しておくのがよい。
過去に作ったものは、その後部分部分使えることがあり、将来資源になる。
時々、消して書き換えて作成して最新バージョンしかない学生さんに会うことがあるが、あれはもったいない。
ファイル名の末尾に日付を仕込んでおき(例えば、卒論研究計画210429.docx)、改訂のたびにファイル名を変更して作業をしたい。
こうすると、全てのバージョンが残ることになり、便利。




f:id:htyanaka:20210430200820j:plain 横浜かなー。

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2021/04/29 21:10
GW1日目。
鳥駅スタバにて。


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Update 2021/04/29
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東海道を歩いた話

僕は歩くのがとても好き。
カメラ片手にぶらぶらしていると、気付けば数キロ歩いているとういうのはザラ。
都内散策なんかすると、新宿・渋谷から東京駅まで歩く、ということもよくある。
で、若かりしのある日。
僕は思いついてしまった。
東海道を歩いてみたら、楽しいんじゃないか、と。
12年以上前の20代後半のことだった。

当時の僕は、愛知県は岡崎市にいた。
岡崎は最初の任地で、働きはじめて3年目くらいだったと思う。
岡崎や名古屋の街歩きも一通り終わり、新しいことを求めていた。
当時から東京・横浜は好きで、近いこともあって1ヶ月に1回くらい出向いていた。
散策すると旧街道と出会うこともあり、岡崎市内にも旧東海道の名残があった。
そこで、思いついたのだと思う。
東京に行く度に旧街道を歩いてみよう、と。

で、これが大変おもしろかった。
教科書としては、「東海道ネットワークの会 の 新版・完全 「東海道五十三次」 ガイド」という本を使用。
毎回、1−2区間ずつ歩いた。
旧東海道はほぼ国道1号線だと思っていたが、歩いてみるとそんなことはない。
国道はバイパスのように旧街道の近くに新しく作っていることが多く、その1本奥に入った道が旧道であることが多かった。
時には国道を全く離れて、山道に突入することも。
旧東海道散策をやっている人は意外と多く、東京・横浜だと似たような本にカメラ持ちとすれ違うことも結構あった。

旧街道歩きもいくらかやっていると、地図がなくとも大体どこが旧道かわかるようになるのもおもしろかった。
旧宿場町の街道は古い商店街を通っていることが多い。
当たり前なのだが道沿いには神社・お寺が多いのも特徴。
後半は道路の線形でここが旧道なんじゃないか、とあたりをつけられるようになっていた。
安藤広重東海道53次の絵を見ると、当時の面影と変わってしまった地形なんかがわかって、それもまたおもしろかったりした。
徒歩での距離感がわかるようになると、時代小説や水戸黄門等の旅物時代劇が身近な感覚で楽しめるようになる、という副産物もついてきた。
幕末時代小説では東海道の往来が多く、歩いているとそれらに登場する地名を結構目にすることができて楽しかった。
かなり歴史があるので、史跡もだいぶ残っており思いがけずそれらを見つけるのも醍醐味の一つ。
昔の景色を想像しながら歩いていると、ロマンを感じるというか何というか。
一番楽しかったのはこの部分だったと思う。

この東海道53次。
結局静岡まで歩いたあたりで勤務地が岡崎から福井へと変わり、気軽に東海道へ行けなくなったため、あえなく中断となった。
またいつか再開したいなぁ、と思えど、勤務地がどんどん東海道から遠ざかり、今にいたっている。
ちなみに鳥取や福井周辺の旧街道を歩こうと試みたことがあるが、宿場町間の距離があまりにも長すぎる上に、野性味あふれる旧道のようで、早々に断念している。
当時の東海道中記がまだプライベートページに生き残っているようで、興味ある人はこちらをのぞいていただいて。
(当時スマホを意識せずに作ったので、スマホは横向きじゃないと読みづらいかも)

では。
今回はこの辺で。




f:id:htyanaka:20210503105151j:plain これも横浜のとある旧街道沿い。

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2021/05/02 20:26
ひきこもり。
自宅にて。


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Update 2021/05/02
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論文に嘘を書いたりしないの?(研究こぼれ話 No.1)

数年前のゼミでの話。
確か、統計を使った数字バリバリの研究論文だったと思う。
その論文を読んでいる最中に、学生さんが素朴な疑問を持った。
「論文に嘘を書いたりしないのか?数字が嘘ってことはないのか?」
実に、いい質問。
今日はこのネタについて。

論文に嘘を書く。
嘘の数字を書いてしまう。
結論から言うと、可能である。
ただ、真っ当なほとんどの研究者は絶対にやらない。
なぜか。

技術的には嘘を書くだけなので、簡単にできてしまう。
そして研究論文はそういうことをしないこと前提として性善説で書かれているため、巧妙な場合、論文そのものを読んで嘘を見破ることは難しい。
ただ。
嘘の研究論文が1本あるということは、先行研究の蓄積した知の中に間違いが混ざるということになる。
これはものすごい損失となる。
なぜならば、新しい研究を考える際、先行研究の知を前提として目的や仮説を考えなければならないため、間違った知識にひっぱられることになるから。
間違った知識が混ざっているということは、次の世代の研究の多大な労力が無駄になるかもしれないということを意味する。
それが真面目にやって間違ったとかではなくて、意図的な嘘だとすればこれはちょっとたまらない。
だからこそ、この行為、研究業界では蛇蝎のごとく嫌われる。

では、その嘘はバレないのか、といえば、バレる。
バレ方はいろいろある。
まずは、嘘の数字を書いた場合、いろいろと不自然になる。
統計の各種数値が合わなくなったり、不自然な数字になったりする。
ここで、バレる、というのはよく聞く話。
よほど統計や分析のことを熟知していないとなかなか嘘をつきとおせない。

もし、完璧な嘘をつけたとしたら。
この場合は、すぐにはバレないがのちのちおかしなことになる。
なんせ、事実が嘘なので、他の研究者が同じ手順で研究を進めたときに追試できない。
もちろん、嘘ではなくたまたま間違っていて追試できないこともあるが、嘘をつく研究者は他の研究でも嘘をつくことが多いので、その人のあらゆる研究で追試ができない、ということになる。
業界で、オカシイ、とニラまれ、どこかのタイミングで尻尾を出してバレるということになる。
ちなみに、嘘をついたことがバレた場合、もう2度と研究業界で仕事をできないと思った方がいい。
性善説で動いている業界なので、こういう不正についてはかなり厳しい。

このように、論文に嘘は書かれにくいし、書かれてもいずれバレるようになっている。
では、もし自分が不正を疑われたらどうするか。
こうなった場合、分析に使ったデータを出したり、分析のプログラムや手順を公にして不正はなかったことを証明しなくてはならない。
実験ノートもそのためにあり、細かく実験の記録や分析の手順等を書き込むことにより、疑義が生じた際、これらを公にすることで、ちゃんとデータが存在したことや分析したことの証明に使う。
教員が口を酸っぱくして実験ノートや研究ノートをつけろ、というのは、こういう意味合いもあったりする。

だいぶ前にSTAP細胞で揺れたことがあったが、この記事を読み返していただければ、あれがどういう事件だったのかおわかりいただけることと思う。


ではでは。
また。




f:id:htyanaka:20210425233832j:plain たぶん鳥取
城跡。

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2021/04/25 23:29
ひきこもり。
自宅にて。


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Update 2021/04/25
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本の紹介,「少年事件に取り組む: 家裁調査官の現場から(藤原 正範(著),岩波新書)」

少年事件に取り組む: 家裁調査官の現場から
藤原 正範 (著)
難易度:☆


家庭裁判所調査官という職をご存知だろうか。
家庭に関する事件について、必要な調査を行う職種。
家庭裁判所少年法の審判を行うため、これに先立ち調査官は様々な調査を行う。
心理学や教育学、福祉等の専門性を有し、少年が事件に至った背景を生育歴や人間関係、本人の心理などを中心として丁寧に調査し、その見立てを裁判官に述べる。
この本はそんな家庭裁判所調査官経験者が、少年事件とは何かや少年法の理念や少年事件の実務などについてまとめたもの。
これが予想以上におもしろかった。

まず、家庭裁判所の現場の描写を通じて少年法と少年事件に関する仕組み等を説明する。
その上で、少年法の理念などを解説していく。
凄惨な少年事件の報道などから、ややもすると厳罰化の流れになりそうな少年法の仕組みについて、なぜこのような仕組みがあるのか理解することができる。
豊富な事件事例を通じて、難解な少年法や児童福祉の仕組みを理解することができるのもうれしい。
少年鑑別所、少年院、保護観察など、少年事件で登場する様々な機関や仕組みを具体的にイメージできる形で知ることができる。

心理学や発達をかじっていればわかるのだが、少年法で保護されている年齢の少年たちは発達的に間違いを犯しやすい段階にいる。
少年法はそのような発達段階であることを前提として、少年事件を発達のつまづきとして捉える。
その上で、更生の道を与え、2度と法に触れない人間になってもらうことを目指す。
そういう仕組みであることを、事例の描写を通じて理解することができる。
誰もが間違いを起こす可能性がある、というようなことが書かれており、これが少年法のキモだと再確認できた。

事例として描かれた少年事件のストーリーもおもしろかった。
少年事件の理念そって2度と法に触れるようなことをしなくなる当事者がいる一方、何度も非行に走り最終的に犯罪者になる当事者もいる。
そこには少年事件の仕組みの有効性と限界があり、いろいろと考えさせられた。
世論で問題にされがちな被害者を絡めた事例もあり、少年法という枠組みでの被害者感情をどう扱うか、考えることもできた。

さて、この本。
いろいろと学ぶことが多かったのだが、一番は印象に残ったのは非行少年たちの家庭環境。
事例はデフォルメされているとは思うものの、出てくる非行少年たちの背景には共通して劣悪な家庭環境が描かれていた。
非行少年として家庭裁判所に来たとしても、家庭が非行から立ち直るきっかけになる一方、家庭そのものが破綻しており更生の役に立たない事例も描写されていた。
非行少年の背景として劣悪な家庭環境、というのが大きいのであれば、彼らをただ責めるというのは違う気がした。
少なくとも少年法の枠組みの中では、家裁調査官はそういった背景を丁寧に調査し、再犯可能性等も考慮しながら少年たちに対する見立てを行なっている。
そういう意味でも、少年法の理念や仕組みの大切さを改めて理解した。
こういう部分は報道などの浅い理解からはわからないことだと思う。

教員を目指す学生、教員、子育て中の親など、子どもと関わる全ての人たちにおすすめ。
少年法は加害者に甘いと考えている人たちにもぜひ読んでもらいたい。
これを読むと少しは考えが変わるかもしれない。
普通に読み物としておもしろいので、教養を深めたいあらゆる人におすすめできる一冊。




f:id:htyanaka:20210419074541j:plain 横浜かなー。


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2021/04/17 22:29
ああこんな時間だ。
鳥駅スタバにて。



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Update 2021/04/17
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障害児等神経生理学研究2021(鳥取大学)

授業内容


第1回  オリエンテーション(4/20)
     脳と神経の基礎(1)
       最初~ニューロンの基本構造
第2回  脳と神経の基礎(2)(5/11)
       神経細胞の情報処理:最初~活動電位が生まれるまで
第3回  脳と神経の基礎(3)(5/14)
       神経細胞の情報処理:活動電位の伝導~神経回路
第4回  脳科学の方法(1)その1(5/18)
       最初~解剖学的研究
第5回  脳科学の方法(1)その2(5/25)
       脳機能研究
第6回  脳科学の方法(2)その1(6/8)
       最初~MRIの原理:プロトンの電波の吸収
第7回  脳科学の方法(2)その2(6/15)
       MRIの原理:縦磁化と横磁化~MEG
第8回  脳科学の方法(2)その3(6/22)
       fMRI~ラスト
     視覚系と解剖(1)
       最初~眼球の構造
第9回  視覚系と解剖(1)その2(6/29)
       網膜の構造~光受容全部
第10回 視覚系と解剖(1)その3(7/6)
       視覚中経路と情報処理~一次視覚野
第11回 視覚系と解剖(1)その4(7/13)
       一次視覚野のニューロン~高次視覚野
     視覚系と解剖(2)
       二次視覚野~高次視覚野
第12回 視覚系と解剖(2)その2(7/20,予定)
       腹側経路~
     その他知覚系
     運動系と解剖(1)
     


    



関連情報


自分で勉強したい人へ【準備中】
神経生理学に関する役立ち情報


連絡事項


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